賢夫人は阿呆である

ロザリー・シャトレ、旧姓ラ・モリエール。『ベルサイユのばら』でオスカル様と連呼して結婚してもその有様で夫ベルナール・シャトを嫉妬の渦に叩き込み、続編『栄光のナポレオン－エロイカ』で理想を貫くあまり、度々政治的に弾圧される夫ベルナールを支える賢夫人として描写される一方で、お人よしで自分達家族の生活もままならぬのに見境なく他人に同情してシャトレ家の生活費を与えて自身だけでなく家族の首をしめており、家庭を守る主婦として失格でした。

王党派のスパイとも知らずにカトリーヌを同居させ、彼女に情報入手の場を与えて夫の仕事を妨害する結果を招いてしまったのです。1度だけ情報を記したメモを手渡す現場を目撃して不審を抱くも意味するものを理解できず、カトリーヌがタレーランと結婚してもその事実を知らずにいました。しかし、ナポレオンに協力しないようタレーランを説得して欲しいと頼みに行った際、リヨンの商家の娘でフーシェ率いる討伐軍によって家族を惨殺されたカトリーヌのジャコバン派に対する激しい憎悪をぶつけられ、その時になって初めて自身の犯した過ちを悟ったのです。賢夫人と呼ぶには阿呆すぎる女性として描かれました。

アランと共にナポレオン暗殺を決意したベルナールと別れて亡命し、復讐心に駆られる息子フランソワに共和制の思想を説くロザリー。『ベルばら』でアントワネットの世話係を務めるロザリーはアントワネット処刑の日にリボンを譲られますが、アニメでは化粧紙で作った薔薇の花を渡されます。著者により創造された架空のキャラだとばかり思っていましたが、靴職人の娘で娘を持つもシングルマザーとして生きた文盲の女性マリー・ロザリーというモデルがいたのです。