ブラック・ジャックは、若き日に自分が教えを受けた恩師の一人でもあり、アフリカで人道支援活動を行っている医師である戸隠先生の依頼を受けて、 アフリカの奥地で流行している原因不明の風土病の治療法を見つけるために、自らその土地を訪れました。
戸隠先生の説明によると、この地で流行している病気とは、組織萎縮症の一種であり、 その後の研究によって、動物であれ、人間であれ、症状があらわれると、全身の細胞が原型を保ったまま大きさだけがどんどん小さくなっていき、古い細胞も新しくなっていくというように、まるで成長が逆行していくような形で体が縮んでいく病気であることが明らかになっていきます。
この地で長く治療研究を行ってきた戸隠先生もいつしかこの病に感染していて、身長30cmほどの赤ん坊の体と変わらないような状態にまで縮んで昏睡状態へと陥ってしまうことになります。
そのような瀕死の状態の中で、戸隠先生は、この病気が飢饉の状態にあるような異常状態にある地域においてのみ発生していることから、 こうした病気は、生物が飢饉のような異常事態に対応するために、自然の仕組みの中で必然的に生まれてくるものではないのか?という考えを持つことになります。
その後、ブラック・ジャックは、病気にかかった動物から免疫血清を分離することに成功し、この病気に対する血清療法による治療法を発見することによって、この風土病自体は流行の終息を迎えることになります。
しかし、すでに病状が末期まで進行してしまった戸隠先生を救うことはできませんでした。
戸隠先生は、この病気は神から人間に対する一つの警告のしるしだったのではないか?という言葉を残して息を引き取ってしまうことになります。 「この病気には、もともと正体など無かったのだよ。もし何のせいだと言うのなら・・・これは・・・神の・・・警告だ!」
そして、こうした戸隠先生が投げかけた問いかけに応じるように、 赤ん坊のようになった戸隠先生を胸に抱きながら、アフリカの夜空を見上げるブラック・ジャックは、独り、以下のような言葉を叫ぶことになります。
「神さまとやら!あなたは残酷だぞ 医者は人間の病気を治して命を助ける! その結果、世界中に人間が爆発的に増え、食料危機が来て何億人も飢えて死んでいく そいつがあなたのおぼしめしなら・・・医者はなんのためにあるんだ!」