空想特撮シリーズ『ウルトラQ』は、本放送の時には、最終回がありませんでした。
代わりに、後番組の『ウルトラマン』の前夜祭が杉並公会堂から中継、放送されました。

もともと、『ウルトラQ』は全体のストーリーがないアンソロジー作品でした。
そして、最終回は第28話として、再放送の際に放送されました。
それが、今回ご紹介する「あけてくれ!」です。



ストーリー・・・
万城目と由利子に置いてけぼりを食わされたた一平。
「ばかー!あほー!人殺しー!」

絶叫した一平が見上げた空を飛ぶ小田急のロマンスカー。



ロマンティックな由利子と万城目。
そんなラブラブの二人が発見した道路に倒れている男。
ひき逃げされたのかと思ったら単なる酔っぱらいだった。
とにかく一の谷博士の所へ連れて行くことにした。


踏切待ちの万城目の車の中で、その男は急に叫び始めた。
「・・・電車!電車ーっ!あけてくれ!降ろしてくれーっ! オレは降りるんだー!」
男は車を降りて踏切の中へ。
そして、電車の中へ・・・。

そこでも男は叫んでいた。
現れた車掌。
「キップを拝見。無札乗車ですね。」と案内される。
乗っていたのは謎の夫婦と一人の男。

その列車は別の世界に行くためのジャンプ台という。
現実の世界から逃げ出したいと思う世界へ。
説明していたのはSF作家の友野健二(天本英世)。


時間と空間を超え、過去を突き抜けつつあるという。


一の谷博士の所には、もう一人「あけてー!」と叫ぶ婦人がいた。


友野健二を追いかけることにした万城目と由利子。
友野の家を訪問するが、本人は不在だった。
彼は1年半も帰ってきてはいなかったが、原稿はきちんと送られてきているそうだ。


その男・沢村を妻と娘が迎えに来た。
タクシーの車中で沢村は妻に責められる。
その様子を見た娘は父と母を責める。
沢村は車を止めて会社に行った。

実は車両消失事件が過去に起こっていた。

会社でも上司に罵倒される沢村。
その場で「お世話になりました」と去る沢村。

車で走る万城目と由利子。
ファンベルトが切れて万事休す。
後部座席に友野健二の写真と原稿が・・・。


「見ちゃいましょうよ!」
「どうぞどうぞ、構いませんよ。」
友野健二の声がした。

そこに入っていた原稿。 
それは友野健二が非現実の逃避を夢見ていた。
果てしなく下降していったエレベーター。 
そこは全く別の素晴らしい世界。
そこから友野健二は原稿を書き郵送も電話も可能だった。

「連れてってくれ。俺も連れてってくれ。 どこへでも連れてってくれーっ!」
沢村が見上げる空に空飛ぶロマンスカー。



エンディング・ナレーション
「皆さん、もしあなたが理解ある異性や温かいご家庭がおありでしたら、夜の電車はくれぐれも気をつけてお乗り下さい。」(ナレーション:石坂浩二)




人間蒸発を扱った作品です。
放送当時は、難しいからということで、お蔵入りしてましたが、再放送の最後に放送されました。


やりたいことではなく、やらなくてはいけないことに忙殺される。
いや、やりたいことが何かすらわからない。
あるいは、なんとなく生きているけど生きている実感がない。
楽しいと思えるようなことはあるけど、どこかむなしい。

そして、今の目に見えている現実ではなく、こうなったらいいなと思える別世界があった。
しかし、沢村はそんなバカげた世界は嫌だと、一度は元の世界へ戻ってみたものの再び理想郷を求めてさまよったのである。


この「あけてくれ!」の脚本は、『3年B組金八先生』シリーズを書いた小山内美江子さんです。


「俺も連れてってくれーっ!」沢村の悲痛な叫び声と共に『ウルトラQ』は幕を下ろします。




今日のところは、こんなこったす!