脚本:石堂淑朗     監督:実相寺昭雄
ゲスト:花ノ本寿、松川純子  ほか

ストーリー・・・
京都で、骨董品の壺を鑑賞していた男性が次々と奇怪な死を遂げる。 
SRIは町田警部と共に捜査協力を要請される。
京都府警鑑識医によれば、被害者は全員、神経腺が変質していたと言う。
特に視神経は完全に破壊されていた。 
的矢「5人が5人ともたまたま遺伝的に素質があったと言うことは?」 
鑑識医「考えられませんね」
的矢たちが旅館に入ろうとした時、古美術商・市井商会の日野統三と言う男が声をかける。

統三「亡くなられた方、みんな、うちの店のお得意さんなんです。それで、偶然かも知れませんが気にかかって仕方がないもので」 
話の途中、統三は、ひどい咳を繰り返す。 


翌日、SRIは市井商店へ出向き、主人から話を聞こうとするが、ちょうどまた得意客のひとりが亡くなったと、主人の娘・信子が伝える。
SRIは急遽、主人と共にその事件の現場へ向かうことになる。
一方、統三は休みを貰って実家に帰ると告げる。 
主人と統三の刺々しいやりとりを聞いていた牧は、三沢と野村に、統三の後を付けるよう指示する。  
京の街を咳き込みながら歩く統三と、尾行する二人。 
統三がとある角を曲がると、信子が待ち構えていた。 


信子「統三さん、あんたとうちのお父さん、一体何があったん? それと今度の事件、何か関係があんの?」 
統三「そんなことあんたが心配せんでもええことや」 
信子「いいえ、知る権利があります。あんた、うちに話す義務があるんや。そやろ」 
統三「こんな肺病病みに将来のこと任せて失敗やったな。ええっ、信子はん」 
信子「病気のことなんか気にしてへん、うちはあんたが好きなんや」 
統三「ほな、一緒においで、それがええ、それが一番ええことや!」 

統三は、二人の尾行に気付いているようだったが、気にせず、蒸気機関車で実家へ向かう。 

統三の実家は、囲炉裏が切ってあるような古めかしい屋敷で、陶芸家の父がひとりで住んでいた。 
父親「なんでこんなところにお嬢さんを……ここは市井の旦さんしか」 
統三「そんなことかまへん、信子はんはみな知ってるさかいにな」 
父親「そうか。あれ、もう売れたんか?」 
統三「あれはまだや。うちのオヤジは元大臣の川上洋三に売りつけるつもりらしいけど、ちょっとした騒ぎで、今、開店休業中と言うところや」 
父親「騒ぎ? ワシが作ったこと、バレかけたんか?」 
二人の会話を横で聞いていた信子、自分の父親が、統三の父親にニセモノの壺を作らせて売っていることを初めて知り、ショックを受ける。  
統三は、もう贋作作りはやめて、父親の名前で堂々と作品を世間に出すべきだと訴えるが、父親は市井家には先祖代々の恩義があると言って聞かない。 
統三は、縁側においてあった新作の青磁の壺を撫でながら、 
「この壺がお父とは関係なしにどっかの金持ちの家に飾られる訳か」 


その後、土蔵で二人きりで話す統三と信子。 統三「僕も体が丈夫やったら間もなく親父の後を継ぐ筈やった」 
信子「それであんたはうちを・・・」
統三「あんたと一緒になってニセモノをドンドンはびこらせるんや。成金どもを心の底から笑ってやりたかったからや。しかし、それがどうや。ニセモノはいつまで経ってもバレへん。このまま行ったら親父の名は永久に出ずじまいや。こんなことがあってええわけがない……僕は死ぬ前に一切合財のケリをつけたかったのや。オヤジの壺を買うた金持ちはどんどん死に、市井は潰れる。」 

翌日、統三が造成地の地中から何か得体の知れないものを掘り返すのにも付き添う。  
牧たちが被害者の持っていた壺を調べていると、三沢たちが統三が掘り出していた黒い粉を持ってくる。  
何気なく的矢がそれを日の光の下で見ようとした時、目に激しい衝撃を受ける。
幸い大事には至らなかった。 
牧「この物質は太陽光線に刺激されると、リュート線を出すのか。」 
的矢「何かね、そのリュートとか言う、笛みたいな名前の物質は」
牧「太陽光線に当てられると、その物質の中にあるリュート線を全部出し尽くすんです。ただ、人体にどのような影響を及ぼすのか、まるで分かっちゃいないんですがね」 
その後、先程の青磁の壺でまた犠牲者が生まれ、統三の目論み通り、市井が贋作を売っていたことが露見する。 
統三は店の土蔵で、信子が止めるのも聞かず、せっせとリュート物質を壺の中にハケで塗り込んでいた。 
「もうじきSRIに見破られる。ひとつでもようけ売ったるのや」 
そこへ町田警部たちが踏み込むが、統三は大量のリュート物質の入った壺で脅し、警部たちを寄せ付けない。
黒い紙を漏斗状にして、その中に粉を移すと、土蔵の外へ走り出す。  
統三は近くの寺の中へ駆け込む。  
追って来た町田たちを見て、「これでええ、これで思い通りや、この寺は本物かニセモノか、ワシの道連れやで!」 

激しい咳をしながら喋っているうちに、リュート物質が空中へ舞い上がる。 
統三は、視神経を焼き尽くされ、即死する。
そしてリュート物質は寺の本堂をも・・・。 


ここから日本特撮史上に残る名場面となります。  
まず本堂は、本物にしか見えない。
しかし、これがミニチュアセットなんです。 
だから、奥の建物の屋根を右から左へ炎が走り出す時、本当に寺が爆発しているとしか見えません。  
やがて手前の建物に火が移り、重量感たっぷりに屋根瓦が落ちる。
さらに、警部たちが、門の外から寺が燃えているのを見る合成シーンも素晴らしいと思います。 
寺の檀家が、ほんとの火事だと思ったと言う逸話があるくらいです。  

遂には柱が折れ、屋根が崩落する。  


リュート物質が掘り起こされているのを見守っている三沢たち。
統三の父親も無言でその様子を見ている。 
三沢「なんでもここは旧陸軍の秘密研究所があったそうです。リュート物質はここで開発されたそうですね」 
町田「終戦の年、確かこの辺は山崩れで埋もれた筈だ」 
的矢「戦争の度に科学は進歩するか。」  


父親はやがて自宅へ戻ると、「ちくしょう! ちくしょう!」と叫びながら、狂ったように自分の作った壺を叩き割るのだった。 



暗い話の多い「怪奇大作戦」の中でも、これは全篇に漂う陰鬱な雰囲気と、死の病に冒された主人公の絶望感が文句なくすごいと思います。
笑いのひとつもない、極めて重いエピソードです。



今日のところは、こんなこったす!