脚本:上原正三            監督:飯島敏宏
ゲスト:吉田義夫、高野浩幸、和久井節緒


ストーリー・・・
信州の鬼野村という山村で、村人が落ち武者の集団に襲われるという事件が発生した。


襲われた青年は恐怖のあまり崖から落ちて重傷を負い、その事件は町田警部からSRIに知らされる。
そしてSRIから三沢が現地に行くことになり、汽車に乗り鬼野村へと向かった。


三沢は健一(高野浩幸)という少年に村まで案内してもらい、すっかり仲良くなる。

被害者に話を聞くと、呪い墓を道路にしようとしたから呪われたのだと震えていた。

最近、高速道路建設の話が持ち上がり、また外国資本の大手自動車メーカーが村に工場を建設しようと、土地買収を進めているらしかった。

駐在(和久井節緒)の話によれば、400年前、織田軍に負けた落ち武者がこの村に逃げてきた。
旱魃で困窮していた村人たちは彼らを殺して、その鎧や馬などを奪ったと言う。
それ以来、村には干魃や洪水など、毎年のように自然災害が起き、村人は「落ち武者の祟り」だと言い伝えてきた。

村人全員がその計画に賛成しているわけではなく、とりわけ年寄には反対派が多かった。

老人(吉田義夫)「土地は売らねえ。百姓が土地を離れて、どうして生きていくんだ?」 


推進派のリーダー的青年は、なんとかして土地を売ろうとしていた。 
ちなみに健一少年は、その青年の弟だった。

学校を見下ろす丘の上で健一と話す三沢。 


三沢「健一君はどっちがいいかなぁ? 高速道路や自動車工場が出来る方がいいかな?」 
健一「出来ない方がいい。だって、この村だって道路になっちまうんだろ。それにこの学校だって、すぐに崩してしまうんだろ?」 

その夜、公民館に賛成派の若者たちが集まっていた。
会議が終わった頃には、ひどい霧が渦巻いていた。
そして、帰宅中の若者が、そして駐在までもが落ち武者に遭遇した。
三沢は、この事件を無線で牧に連絡する。

三沢「先輩、亡霊を見ると言う現象が、みんな同じように起きると言うことがありうるでしょうか」 
牧「つまり、見え過ぎる?」 
三沢「そうです、あまりにも鮮やかなんです」 
牧「すぐそっちに行くよ」 
牧は町田警部に連絡し、野村と共に現場へ向かう。


町田「祟りとすれば、村人みんなに祟ってもいいはずだ」 
三沢「そうなんですよ。亡霊を見たってのは、土地買収の賛成派ばかりなんです」 
駐在「なるほど」 
町田「亡霊が必ず霧の中から現れるってのも気になるな」 
駐在「なるほど」 
牧「霧、霧……こういうのはどうだろう? 霧の中にある種のガスを流す。そのガスを吸い込んだものは一時的な錯乱状態になる」 
三沢「そこへ亡霊が登場する、か」 
駐在「なるほど、なるほどぉ」 
三沢「しかし、反対派はお年寄りばかりですよ。そんな科学的なトリックが出来ますか」
駐在「なぁるほどねえ」 
町田「君、感心ばかりしてないで、警察官として何か掴んだものはないのかね」 
駐在「は、面目ありません」 

三沢、健一少年と並んで腰掛けて、既に工事が始まっている村を見下ろす。
三沢「高速道路なんて、開通しない方がいいのかもしれないな」 
健一「山をあんなに崩したら、今に山が怒るよ」 

三沢は、健一少年が亡霊の正体を知っているはずだと問いつめるが、あくまで知らないよ、と言うのだった。 

その夜、再び霧が出て、三沢は健一少年と一緒にいるところを、落ち武者に襲われる。
だが、少年が助けを呼んできて、落ち武者たちとSRI、町田警部の乱闘になる。 


やはり、落ち武者は反対派の老人達が扮装していたものだった。 

町田警部は戦時中、広島の大久野島にいた村人の一人が、事件の首謀者だと断定する。
また近くから、ガス発生装置も見つかる。


健一の祖父も落ち武者の一人だった。 
健一「ごめんよ」 
祖父「お前は良いことをしたんだ。お前が知らせなかったら、わしたちは人殺しをするところだった」 
落ち武者たちは揃って連行され、事件は落着する。 

三沢は名残惜しそうに健一少年に別れを告げ、東京へ戻る。



三沢たちが、何故、大久野島にいた男が犯人だと分かったのか、改めて町田警部に尋ねる。
年長の町田と的矢所長は顔を見合わせて笑い、 
的矢「第二次世界大戦当時、いくつだった?」 
牧「えっと、5つでした」 
三沢「僕は1つ」 
野村「はははっ、僕は生まれてないや」 

的矢「広島の大久野島には、当時の陸軍造兵厰の忠海兵器製造所があったんだよ」 
町田「毒ガス部隊だ」 

二人の言葉に、やっと腑に落ちた顔になる三沢。 
的矢「亡霊に化けてまでも、土地にしがみつこうとした老人たち、哀れだねえ」 

そこへ、さおりが新聞を持って駆け込んでくる。
「たいへんよ、鬼野村が鉄砲水に襲われたそうよ!」


そのニュースに愕然とする面々。  
牧「しかしこうなったおかげで、難航してきた土地買収はかえってスムースにいくだろう」


三沢「そして堂々たる鬼野市が誕生する」


ラスト、高速道路が作られ、車が走っている。
工場が立ち並び、激しい騒音を上げ、煙突からは煙が吐き出されている。 
赤い空、そして高速道路の上を何台もの車が走り、排気ガスやスモッグで空気は濁って見える。





そんな街をお地蔵様が見下ろしている。
しかし、もう花やリンゴを供える人はいない。 
地蔵の横に座り込む男性。それは、かつての村を知る人物なのか・・・。



「近代化を急ぐあまりの、古き日本の破壊」という問題。
今回の破壊者が巨大アメリカ資本であり、対抗する反対派の老人達の武器が、旧日本軍の毒ガス兵器だったりするのが、非常に象徴的です。しかもラストが重たい、

鉄砲水の濁流が村を襲うシーンはモノクロで描かれていて、そこに石の地蔵様、工場、小学校の校庭での演奏シーンが織り込まれる。
ここで流れるおもちゃのシンフォニー」の演奏が、とても物悲しいです。
また、それにも増して、長野県・高遠のきれいな風景も物語をより悲しくさせていますね。


私は、高度経済成長のツケが回ってきたと感じています。
昨今の地球全体を巻き込むような異常気象の問題も、その一例なのかもしれません。
また、我々も自然の一部なのですから、昨今のびっくりするような残虐な事件なども、高度経済成長の弊害なのかもしれませんね。



今日のところは、こんなこったす!