ウルトラセブン 第45話
脚本:川崎高・上原正三 監督:実相寺昭雄
ゲスト:渡辺文雄、ミッキー安川、高野浩幸
ストーリー・・・
星空が輝く夜の下町。アマチュア天文家のフクシン三郎青年は、隣に住むゲンさんの嫌がらせ騒音がおさまった頃、 自宅の物干し台から望遠鏡で天体観測を楽しんでいた。
その寝不足が原因で、昼間の街工場の仕事に集中できず社長に怒られる始末。
自転車で仕事から帰る途中、川原に寝転がって空を見上げるフクシンは、お弁当箱を拾ってくれた少年と出会う。
その少年に自分の愚痴をこぼし、自分の持つ夢を語った。
その日の夜、いつものように望遠鏡で星を眺めていると、そこに写ったのは円盤群だった。
フクシンは慌ててゲンさんの家へ急行、ゲンさんの電話を借りようとするが、全く相手をされなかったためやむを得ず、 公衆電話でウルトラ警備隊に通報した。
早速、ダンとソガはウルトラホーク1号で調査するが、全然異常はなかった。
ただ、ダンは星が多いことに不思議に思っていた。
翌日、団地の空き地で寝転がっていたフクシンは、野球をしていた不思議な少年と再び出会う。
「円盤見つけたことを知らせたけど、錯覚だった」とぼやくフクシンに少年は、「東の空に、今日こそ円盤が見られるよ」と言って野球する友達の方へ戻った。
その後、シゲさんが経営する蕎麦屋の増田屋へ寄り道した後、その日の夜も昨日の件でご立腹のゲンさんの妨害騒音を無視して、フクシンは望遠鏡を覗くと・・・
再び円盤群を目撃。怒って乗り込んで来たゲンさんにも望遠鏡を覗かせ、再度ウルトラ警備隊に通報した。
しかし、証拠に撮ったフィルムがあるにも関わらず、何の異常も観測されなかったため、ただの見間違いと判断されてしまった。
次の日、川原の道でダンプカーとすれ違い、自転車から転んでしまったフクシンは、またもや例の不思議な少年と出会った。 川原で座り込むフクシンは少年に、「星の世界へ行ってみたい」と話す。 その夢を聞いた少年は「きれいな星の世界に連れっててあげる」と自分の家へ案内した。
少年の家にはたくさんの望遠鏡が並んでいた。
野球中継のラジオが流れる中、フクシンが夢中になって望遠鏡を覗くとまたしても円盤群が!
さらに少年は「大きく見せてあげる」と押入れを開け、中に入っていたテレビの画面にも円盤郡が写っていた。
不思議な少年の正体は、ペガッサ星雲第68番ペロリンガ星から来た地球侵略を企むペロリンガ星人だった。
「君が見たものは正しかったのさ。ウルトラ警備隊や天文台が信用しなかったのは無理もない。 私たちは円盤を星にカモフラージュしたんだからね。君の素晴らしい直感で円盤と見えたものも専門家には星としか見えない。 これで専門家を油断させるのが、私たちの狙いさ。つまり、ウルトラ警備隊やウルトラセブンをね。 私たちはなるだけ穏やかに事を運びたいのさ。『狼が来たー!』幾度も言っているうちに誰も振り向きもしなくなる。 本当の狼は、その隙にやって来る!こんな地球の童話を私たちも知っているよ」
そう言って ペロリンガ星人は唖然とするフクシンに黒い電話を差し出す。 「普通の地球の電話機さ。試してごらん。私は今、宇宙人のペロリンガ星人と話をしていると言って。」 フクシンはウルトラ警備隊に電話を掛けるが、全く相手をされず呆然とした。
「ほうら、もう本当のことを信じちゃくれないし、本部の誰にも取り次いでもくれないだろう? 人間なんてそんな動物さ。専門家は常にアマチュアより正しいと思っているのさ。 そこを突けば、油断している隙に苦もなく地球へ大円盤群を着陸させられる。 さっ、約束を果たしてあげよう。私は地球に飽き飽きした君を星の世界へ連れていってあげるよ。 もう随分大勢の地球人を私は星へ連れていってあげたんだ。ほら、ある日突然蒸発していなくなった人たちが、君の身の回にもいるだろう?」
ペロリンガ星人の優しく誘惑な言葉に、思わず耳を傾けてしまうフクシンであった。
一方。地球防衛軍北東支部では、アンヌ隊員の分析により、星の写真がカモフラージュした円盤群であることをわかった。
さらにダンの報告で、先ほどの電話の録音テープにペロリンガ星人の声が混ざっていることもわかった。
キリヤマ隊長は、ダンとソガに宇宙パトロール出動を命じた。
宇宙へ飛び立ったウルトラホーク1号に襲いかかるペロリンガ星の円盤群。
飛来するペロリンガ星人。
そこへ我らのウルトラセブンも駆けつけ、ペロリンガ星人と激しい空中戦を展開する。
ウルトラセブンとウルトラ警備隊の総攻撃により、ペロリンガ星人は爆発、円盤群も全滅した。
事件解決後、フクシンはウルトラ警備隊からウルトラ勲章を授かった。
ゲンさん、シゲさんを始め近所の人々に賞賛されるのだが、残念そうな表情のフクシン君は自宅の物干し台から夜空を見上げた。
そして、いつもと変わらない普通の生活に戻るのであった。
厳しい現実の世界から逃げ出せない、だから現実を受け入れるしかない。
専門家や社会的立場のある者さえ騙せれば、侵略は容易ということですが、そんな世の中になってしまっている。
純粋さが大事であり、それを忘れずにフクシン君は、今夜も空を見上げる。
ゲストも豪華な一編。
彼は、この作品から4年後にブレイクします。『超人バロム・1』の白鳥健太郎役でした。
またその後は、NHKの少年ドラマシリーズ『なぞの転校生』にも主演しました。