シンガポールに到着した私を
空港まで迎えに来てくれた
大柄なインド系シンガポール人マニ。
…
ホテルの地下にある駐車場に
車を停めてきたマニは
巨大な吹き抜けのある
ロビーの片隅に佇んで待っていた私をみつけて歩いてきた時には
さっきまでとはまったく違う、
ビシッとしたスーツのジャケットにネクタイ、
という装いで現れた。
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当然さっきまで頭にカチューシャのように乗せていた
哀川翔風のサングラスも
もうしていなかった。
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そしてマニは
スーツの胸に金色に光る
ネームプレートをつけていて、
そこにはアルファベットで
MANIMARAM
と書いてあった。
どうやら「マニ」とは
「マニマラム」を短縮したもの
だったようだ。
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私がその素敵な変身ぶりにおどろいて
『え、さっきと随分変わったね!』
と言うと
マニは
『俺のこと、ドライバーだと思ってた?』
と言いながら
黒い肌とは対照的な
真っ白な歯を見せて笑った。
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その後マニは
私の所属部門となる
「フロントオフィス」の事務所に連れて行ってくれた。
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そこでようやくわかったのだが、
マニはそのフロントオフィス部門の副部長、
Assistant Front Office Manager
という、
ナンバー2的なポジションの人だった。
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Assistant Front Office Manager、
通称AFOM(エーエフオーエム)。
ここでようやく
さっきマニが車の中で
一生懸命「自分が何者か」を説明してくれていた時に
頻繁に出てきたワード、AFOMの意味がわかった。
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なるほど。
たしかに私はその時までずっと
マニはホテルのドライバーさんだと
思っていた。
…
ところが実際には
マニはホテル内ヒエラルキーの中では
やや上位に入る
出世頭だったのだ。