ずっと

ずぅーーーーーーっと

心に描いてきた夢を叶える日が来た。

見積もりに来てくれた引越しのアリさんに、

「緑の養生テープを貼っているのは、残しです。」

と伝え、テキパキと意思を伝えた。

「退去は何月何日ですか?」

そう聞かれて、

「さぁ。。いつなのか解りません。今回、動くのは私だけなので、いらないものは運びません。

こんなケース、よくあります?」

「正直、よくあります。」

「夜逃げ、、みたいに?」

「ハイ」

「やっぱあるんですね。」


 

モラ男に支配されたエアコン。

氷大好きなモラ男にこき使われた冷蔵庫。

モラ男の体臭がしみ込んだ洗濯機。

姑が買ってくれた米びつ収納キッチンカウンター。

イラナイ、イラナイ、イラナイ!

冷蔵庫もエアコンも兄が残してくれたのを使う。

 

それでも見積もり金額は10万近い。

2階から2階への移動。

絶対、諦められない婚礼タンスと食器棚、ドレッサーを運ばずして私の移動は完結しない。

新しいダンボールとガムテープをもらい、

値段交渉をちょっとだけし、

金額と日程が決まった。

 

当日まで2回ほど通い、

タンスの中の掃除をした。

私の趣味じゃない食器やもう着ない服の数々、

細かい家電製品を市のゴミ袋に詰め込みクリーンセンターに通った。


軽トラ万歳🙌

 

結露が激しい公団でモラ男に従い、

洗面所裏に置くしかなかなかったタンスのカビが心配でならない。

押入れの奥にアルバムボックスがある。

この公団に引越してから、一度も開けたことのないブラックボックス。

これはどうする??

手が止まり、止まった手は緑のテープを貼っていた。

 

当日、残念なお知らせが届いた。

交通事情で予定のトラックが、当初予定した時刻に間に合わないと言うのだ。

え?

そこは流石のプロで直ぐに代替え案を出してくれる。

動けるスタッフと小さなトラックで定刻に現着し、荷物の準備(養生)に向かい、

運べるだけ小さなトラックで先に運ぶ。

そして、定刻から遅れた当初のトラックに大物を入れ運ぶ。

「そうすると人手は倍になりますよね。差額、発生しますか?」

どこまでも金勘定をしてしまう私。

「いえ、こちらの都合での変更ですから、料金は見積もり通り変わりません。」

 

金額変わらないなら文句言いようがない。

交通事情、事故渋滞なんて不可抗力だし。

 

(こんな時、モラ男はネチネチ文句言うんだよな。モラ男=クレーマー。)

 

「方法についてはお任せします。今日、荷物の運び入れが終われば問題ありません。」

 

大人な対応で返事をする私。

 

細マッチョなお兄さんが3人やってきた。

 

「緑のテープは残しです!」

 

張り切って伝える私。

タンスが分解されていく。

 

「掃除機かけます!」

 

埃だらけの裏側に回り込んで、掃除機のノズルを伸ばした。

手を止めたくないお兄さんは、私は用意した古タオルで周りをザッと拭いてくれた。

カビは?カビーーっ!タンスの裏側を掃除したい私。

ウロつく私を気にせずお兄さんはどんどんキルティングカバーをかけていく。

衣類、食器、本…

ダンボールが運ばれていく。

ひときわ丁寧にドレッサーが包まれる。

 

冷蔵庫も包もうとしているお兄さんを静止し、私は掃除機を使うのをやめた。

 

遅れてきた大型トラックのお兄さんが加わり、総勢5人のアリさんスタッフ勢。

あっという間に出発体制になってしまった。

埃の塊がそこかしこに残る。

掃除機を動かし吸い続けていた私は、それを撤収させなければならなかった。

 

まあ、いいか。

どうせ退去手続きなんて、すぐしやしないんだから。

 

「入居先にはどなたかいますか?」

リーダーらしいアリさんに聞かれた。

「実家ですから母がいます。」

 

「あぁ、ぁ。そうなんですね。」

「だから洗濯機運ばないんだ。」

「残しが多いの、それだからですね」

アリさんたちのヒソヒソ声が聞こえたけど、私、嫌な気持にならなかった。

むしろ、その会話に割り込んで、現状を説明したいくらいだった。

 

実家にはアリさんトラックが先着していた。

母が対応してくれた。

玄関から二階への階段を確認してアリさんリーダーが統制をとる。

養生シート、緩衝材の発泡スチロールが廊下と壁に貼りめぐらされた。

公団から出すのにはベランダを使わなかった。









それはこっち。

それはアッチ!

うろつく私はタンスがベランダから運ばれたことに気づかなかった。

キルティングカバーが運び出されて、タンスの運び込みが終わったことを知った。

養生シートや発泡スチロールの撤収を始めたリーダーに、

「ベランダ使わずにすみました?」

と聞くと、

「使いましたよ。」

さらっと答える。

いつのまにーーーっ。

動画撮りたかったのにーーっ!

冷蔵庫のアクエリアスを差し出し、リーダーに頭を下げた。

余分に買っておいてよかった。

「トラックの手配が予定通りでなくてすみません。」

謝られた。

「イエイエ、予定通りで終わりましたから、大丈夫です。」

 

途中で買ったアクエリアス5本をリーダーにお渡しし、作業終了となった。


これで落ち着いて暮らせる。

な、訳ない!

課題問題はまだまだある。

もっと簡単に単純に生きていけたらいいのに。。。

そう考えても、これが私。

私にはこうやって生きていくしかないのだ。