独身時代20代前半、バブル全盛期。

横浜そごうのDCブランドのショップ店員だった私は、

貴金属に目覚めてしまった。

仕事帰り。近くのファッションビルに入っていた、

「スタージュエリー」

に毎日通ってしまった。

買える金額は限られる。

シルバーと10Kとジルコニアの可愛らしいリングを皮切りに、幾つも幾つも買ってしまった。

可愛らしいものから、よりゴージャスなリングを求めて、

ジュエリーショップを梯子し買い込んだ。



モラ男の事業の仕事中にはリングはつけられない。

妊娠出産を経験した指は節が太くなり、指輪のサイズが変わった。

もちろん全身のサイズも変わり、着る服も変わった。


貴金属は

タンスの肥やし

になっていった。





支払いが溜まる。

督促状が溜まる。

金の価格が高騰

なんてニュースで見ても、今じゃ買わないし関係ないわ。

と心で悪態ついていた。


買わなくても

買うんじゃなくても

売れる?


嫁入り道具の嫁入りタンスの引き出しの奥にしまっていた、

バブル期の懐かしいリング達を出して見た。

はめてみる。

第二関節を通らない。

この可愛いリングをはめてどこへ行く???



売るか。。。


郵便受けには督促状がない日はない。

ガソリンだって、警告ランプを消すために手持ちのお金分しか入れられず、虚しい思いをしている。



売るか…


落ち着いたショッピングモールの奥まった一角の買取店。

ギリギリの生活費のためじゃないよ。

このデザインは今の私に合わないから、新しいのを買うために、そのために売るんだから。

スタッフさんに何か聞かれたらそう答えようと、

カッコつけの言い訳を頭に思い浮かべてお店に入った。

嫌味のない愛想の良いスタッフさんだった。

女性と男性一人づづだったと思う。

聞かれてもいないのに、考えていた言い訳をベラベラ喋った気がする。


「このデザインじゃ、若すぎですよね〜www」


聞かれてもないのに、そんな事を口走った記憶がある。


合計で5万円超えた。

もちろん買った時の値段からしたら下回る。


思い出を換金した。

青春を、過去を、今、身に付けない、

これからも付けないものがお金になった。


嬉しい?

悲しい?

寂しい?


いろんな感情が渦巻いた。



これで毎日届く督促状が減る。


寂しいなんて言ってられるか!


いつかこの何倍もの、

その時に似合うゴージャスなやつを買ってやる!


自分への復讐だ!


可愛かったな〜

パールのリング。

ジルコニアだけど可愛いデザインだったリング。

小さな粒の

ルビーの指輪。

私の誕生石はルビーだよ!



こんな風に買取に出した話しを、

別の夫婦喧嘩のやり取りの中で、

随分経ってからモラ男にした。

私はかなりきつい形相をしていたと思う。

モラ男は、

「使わないもの売ったのに、何を怒っているんだ?」

と報復してきた。


維持費がかかるわけじゃない。

片手の手のひらに収まるくらいの物量を、

思い出を換金した、

そうするしかない状況だったことを理解しろ!


今なら反撃できる。

あの時は言えなかった。

いつか復讐してやる!




残したものはこれとシルバーのピアス。

ピアスは服も作業もそれほど選ばないからね。。。

って言うか重さが出ないだろうから残したのが本音。。。