ゴミ置き場をうろつく野良猫に一目惚れしてしまった。ちょうど前回の「猫に金メダル」というブログを投稿した次の日。必死でゴミ袋に食らいつく育ち盛りの猫に目が張り付いてしまった。ガリガリに痩せてはいるが、手足の長い八頭身の美猫。パッチリとした愛らしい瞳。もう降参だ。老い先短いのに無節操もいいところだが、取りあえず自宅の鯖缶を与えると、猫も脇目も振らずにかぶりつく。「残飯とは大違い、こりやたまらん」と野良が思ったかどうかはわからないが、何故かその日からスンナリ我が家の「箱入り娘」に納まった。


 ネットで調べると鯖猫だったのも何かの縁。白いお腹側と黒とグレーが背中側。鯖缶が福招きだった。これでいいのだのバカボン音頭。つくづくお目出度いのである。だが、この猫の野良パワーは筋メダルだった。避妊手術したその日の復活ジャンプがハンパじゃない。人間なら開腹手術してその当日にジャンプするなどありえない。野良猫は早朝手術の後、下半身麻酔で自宅に戻った時はヘロヘロのヨタヨタ。でも夜には軽々と高速飛びを決めた。腹の生々しい縫い目なんかまるでへいっちゃら。これまでたくさん猫を飼ってきたが、タダでこういう「突出した筋肉猫」と出逢ったのも何かのご利益かもしれない。すぐさま、この猫の名前は「筋(キン)」ちゃんと決めた。


 筋ちゃんは多分生後半年ぐらいだろう。暇さえあれば毛づくろいか、高速ジャンプの連発芸を繰り出す はねっ返りのお転婆で何だか孫と一緒に暮らしているような気がしてきたから不思議だ。思い込みの妄想はどんどん膨らむ。老後は筋肉長寿のピンピンコロリが理想である。これからは、老いては孫ならぬ猫に従ってみよう。筋ちゃんを師匠にして、暇をみつけては毛づくろいならぬ捻りストレッチをし、ハイジャンプは無理でも筋トレや階段上りで身体を軽々と持ち上げよう。自由猫と老婆の筋肉長寿、お元気コンビの始まりである。トルコの諺に「猫は飼い主を選んで暮らす」というのがある。つい、弾みでつかんだ幸運な成り行。せいぜい猫に選ばれるようにしなくっちゃ。