・【政府】緊急事態条項の危険性が広まりはじめた途端、議論は“国会機能維持条項”の名にすり替えられていたと判明 中身そのまま、国民を黙らせる仕組みは健在(JAPAN NEWS NAVI 2025年6月24日)
衆議院 憲法審査会資料より

衆議院・憲法審査会「緊急事態条項(国会機能維持)の主な論点」
【政府】「緊急事態条項」を“国会機能維持”に改名していたことが図で判明 中身はそのまま、任期延長・解散制限もセット
国会提出資料に明記された『国会機能維持』という名称
2024年から2025年にかけて、国会では「国会機能維持条項」という耳慣れない名称が議論の場に上がるようになった。しかし、その実態は「緊急事態条項」と何ら変わらない内容であることが、衆議院の公式資料から判明している。
令和7年3月13日に作成された衆議院憲法審査会の資料では、はっきりと「緊急事態条項(国会機能維持)」というタイトルが付けられており、名称が併記されていることが確認できる。しかも、図中の左側には「国会機能維持」として「いかなる場合でも国会の立法機能・行政監視機能を維持すべき」と記述がある一方で、その下には「広義の緊急事態条項」と小さく添えられている。
つまりこれは、政府側が「緊急事態条項」という言葉に対する世論の警戒感を受けて、名称をすり替えて議論を進めようとしている姿勢を裏付けている。国会機能を維持するという名目のもとで、実際には国会の統制を一時的に解除し、政府に特権的な権限を集中させる内容であることに変わりはない。
すり替えられたのは名前だけ、中身は従来の緊急事態条項と同一
図には、「議員任期の特例」「オンライン国会」「臨時会の召集期限制限」「内閣の解散権制限」といった具体項目が並ぶ。これらは、かつて緊急事態条項の中で盛り込まれていた構想と完全に一致している。
たとえば、選挙困難時に任期を延長し、議員を入れ替えることなく政権を維持できるという仕組みは、非常時とはいえ民主主義の基本に反するおそれがある。さらに、「オンライン国会」の制度化も、利便性の一方で議事の非公開性や監視の困難さにつながりかねない。
また、「解散権の制限」という聞こえのいい表現も、よく読めば「内閣が恣意的に解散できない」ではなく、「そもそも解散自体を封じることで永続的に今の議員が座に留まる仕組み」にも見える。ここに「非常時」との言い訳を与えれば、選挙なき統治体制の常態化すら視野に入ってくる。
名前が変わっただけで、根本的な構造は「政府に強大な権限を集中させ、国民の選択機能を一時停止する」という、従来の緊急事態条項そのものだ。表現を和らげて国民を安心させ、実は中身を変えずに通すというやり方は、極めて不誠実で危険である。
図で示された“着々と進む準備”とその危うさ
注目すべきは、図の下段にある日付や注釈である。そこには、2021年・2022年・2024年といった過去の審議日や関連法案が淡々と記されている。これが意味するのは、「この話はすでに何年もかけて進行していた」という事実である。
メディアの報道が少なく、一般の国民にはほとんど知られていないにもかかわらず、政府内では既に制度設計が進み、資料の形式すら完成に近づいている。つまり、「国民の知らないうちに、統治機構の構造そのものを変える議論が進んでいた」と言っても過言ではない。
しかもこの議論は、「選挙ができない時の対応」や「災害時の国会機能維持」といった、一見納得しやすい問題提起を起点にしている。しかしそれは、名目に過ぎない。最終的に用意されるのは、「議員の任期延長」や「立法機関の一部凍結」という、国民の代表が機能を停止する状態なのだ。
図は、言い逃れのきかない客観的証拠である。これを見れば、「緊急事態条項」が「国会機能維持条項」に名前を変えただけのものであることが、誰の目にも明らかになる。
私たちは、ようやく「緊急事態条項」が持つ危険性に気づき、警戒の声を上げはじめたばかりだ。だが、その矢先に名称がすり替えられ、議論が「国会機能維持」という響きのいい言葉に包まれて再スタートしていたのだとしたら、これは看過できない。
名前を変えただけで本質を変えないやり方は、最も不誠実で、最も国民を軽視した政治手法だ。声を上げる自由すら奪われかねない仕組みを、私たちは絶対に黙って通してはならない。
JAPAN NEWS NAVI編集部
衆議院 憲法審査会資料より

衆議院・憲法審査会「緊急事態条項(国会機能維持)の主な論点」
【政府】「緊急事態条項」を“国会機能維持”に改名していたことが図で判明 中身はそのまま、任期延長・解散制限もセット
国会提出資料に明記された『国会機能維持』という名称
2024年から2025年にかけて、国会では「国会機能維持条項」という耳慣れない名称が議論の場に上がるようになった。しかし、その実態は「緊急事態条項」と何ら変わらない内容であることが、衆議院の公式資料から判明している。
令和7年3月13日に作成された衆議院憲法審査会の資料では、はっきりと「緊急事態条項(国会機能維持)」というタイトルが付けられており、名称が併記されていることが確認できる。しかも、図中の左側には「国会機能維持」として「いかなる場合でも国会の立法機能・行政監視機能を維持すべき」と記述がある一方で、その下には「広義の緊急事態条項」と小さく添えられている。
つまりこれは、政府側が「緊急事態条項」という言葉に対する世論の警戒感を受けて、名称をすり替えて議論を進めようとしている姿勢を裏付けている。国会機能を維持するという名目のもとで、実際には国会の統制を一時的に解除し、政府に特権的な権限を集中させる内容であることに変わりはない。
すり替えられたのは名前だけ、中身は従来の緊急事態条項と同一
図には、「議員任期の特例」「オンライン国会」「臨時会の召集期限制限」「内閣の解散権制限」といった具体項目が並ぶ。これらは、かつて緊急事態条項の中で盛り込まれていた構想と完全に一致している。
たとえば、選挙困難時に任期を延長し、議員を入れ替えることなく政権を維持できるという仕組みは、非常時とはいえ民主主義の基本に反するおそれがある。さらに、「オンライン国会」の制度化も、利便性の一方で議事の非公開性や監視の困難さにつながりかねない。
また、「解散権の制限」という聞こえのいい表現も、よく読めば「内閣が恣意的に解散できない」ではなく、「そもそも解散自体を封じることで永続的に今の議員が座に留まる仕組み」にも見える。ここに「非常時」との言い訳を与えれば、選挙なき統治体制の常態化すら視野に入ってくる。
名前が変わっただけで、根本的な構造は「政府に強大な権限を集中させ、国民の選択機能を一時停止する」という、従来の緊急事態条項そのものだ。表現を和らげて国民を安心させ、実は中身を変えずに通すというやり方は、極めて不誠実で危険である。
図で示された“着々と進む準備”とその危うさ
注目すべきは、図の下段にある日付や注釈である。そこには、2021年・2022年・2024年といった過去の審議日や関連法案が淡々と記されている。これが意味するのは、「この話はすでに何年もかけて進行していた」という事実である。
メディアの報道が少なく、一般の国民にはほとんど知られていないにもかかわらず、政府内では既に制度設計が進み、資料の形式すら完成に近づいている。つまり、「国民の知らないうちに、統治機構の構造そのものを変える議論が進んでいた」と言っても過言ではない。
しかもこの議論は、「選挙ができない時の対応」や「災害時の国会機能維持」といった、一見納得しやすい問題提起を起点にしている。しかしそれは、名目に過ぎない。最終的に用意されるのは、「議員の任期延長」や「立法機関の一部凍結」という、国民の代表が機能を停止する状態なのだ。
図は、言い逃れのきかない客観的証拠である。これを見れば、「緊急事態条項」が「国会機能維持条項」に名前を変えただけのものであることが、誰の目にも明らかになる。
私たちは、ようやく「緊急事態条項」が持つ危険性に気づき、警戒の声を上げはじめたばかりだ。だが、その矢先に名称がすり替えられ、議論が「国会機能維持」という響きのいい言葉に包まれて再スタートしていたのだとしたら、これは看過できない。
名前を変えただけで本質を変えないやり方は、最も不誠実で、最も国民を軽視した政治手法だ。声を上げる自由すら奪われかねない仕組みを、私たちは絶対に黙って通してはならない。
JAPAN NEWS NAVI編集部