・普通の風邪を5類感染症に 厚労相が省令改正 パブコメ意見3万件超か 国会議論も経ず(Yahoo!ニュース 2024年11月30日)

楊井人文 弁護士

福岡厚労相。記者会見でこの決定の説明はなかった(11月29日、厚労省HPより)
 
※政府は、感染症法上の位置付けをしていなかった普通の風邪を5類感染症に変更することを決定した。11月29日、福岡資麿厚生労働大臣が省令改正をした。来春施行される。

これに伴い、同じく5類の季節性インフルエンザや新型コロナ(COVID-19)などと同様、一般的な風邪も、届出、流行状況の監視(サーベイランス)や発表の対象になる。「特定感染症予防指針」にも位置付けられたことで、風邪を予防するワクチン開発も可能となる。

8月中旬まで行われたパブリック・コメントでは異例の3万件超が寄せられた。反対意見が大半だったとみられる。

厚労省はこの決定について報道発表をしていないが、官報に掲載された。【訂正あり】


武見前大臣が明言 風邪ワクチン開発も視野
 
この方針は7月、前任の武見敬三厚労相の時に示された。

新たに5類に追加される「急性呼吸器感染症」は「『かぜ』の原因となるコロナウイルスも含まれる」と明言(拙稿※1および会見録※2)。また、「風邪のワクチン開発」も検討対象になる、と述べていた(会見録※3)。ただ、これまでの公式資料には「風邪」という表現は一切用いられていなかった。【修正・追記あり】

国立感染症研究所は、ヒトに日常的に感染する4種類の「風邪のコロナウイルス」があり「我々はこれらのウイルスに生涯に渡って何度も感染するが、軽い症状しか引き起こさないため、問題になることはない」と解説している。



(上)厚生労働省・感染症部会の資料より。既に5類に位置付け済みのものを除く急性呼吸器感染症が、新たに5類に位置付けられる(図の黄色の部分)


「医療機関の負担が増える」等の反対多数
 
パブリックコメントでは「急性呼吸器感染症は非常に幅広い病原体・症状を含んでおり、その全てが法による監視が必要な疾患であるとは思えない」「風邪により検体の採取が行われるのは反対」「サーベイランスにかかる費用や、医療機関の負担が増えることから反対」などの意見が寄せられていた。

大臣決定と同じ日に公表された資料によれば3万1541件あり、紹介された意見はごく一部だが、全て反対意見だった(意見全体のうち賛否割合は不明)。

この資料には、厚労省のコメントとして「ご指摘の『風邪(かぜ)』が含まれますが、国内で発生している急性呼吸器感染症の割合を把握するためには必要な仕組みと考えています」と、5類に追加されるものに「風邪」が含まれることが明記された。

福岡厚労相は省令改正の決定を行った11月29日の定例記者会見で、特段の発表も言及もしていなかった。現時点で報道発表しておらず(厚労省HP)、官報でのみ確認できる(号外277号)。施行日は来年4月7日と定められた。

今後、風邪の症状があれば、指定医療機関による届出が行われ、定点把握の対象となる。新型インフルエンザ等対策特別措置法による行動制限措置の対象にはならない。

主要メディアは、武見厚労相が明言したにもかかわらず、普通の「風邪」が5類に格上げとなることについて報道していない。厚労省が使っている「急性呼吸器感染症(ARI)」というなじみのない用語で報じており、NHKは同省の説明にならって「未知の感染症」の早期把握のためだと報じていた(未知の感染症を把握する仕組みはすでに存在する)。

現行法上、5類感染症の範囲を大臣決定のみで変更できる(閣議決定も不要)。国会で一度も言及されたことはなく、多くの国会議員や国民が知らない可能性がある。


【訂正】

当初「公式資料には「風邪」という表現は一切用いられていない」と記載していましたが、「これまでの公式資料には「風邪」という表現は一切用いられていなかった」と改めた上で、11月29日公開されたパブコメ概要資料に5類に追加されるものとして「風邪」が含まれることが明記された事実を加筆しました。

タイトルの「パブコメ反対意見3万件超か」は、現時点で厳密な賛否の数が不明のため「パブコメ意見3万件超か」に変更しました。結果公示資料は通常、賛成意見があれば掲載されますが、今回の資料には見当たりません。この点は新たに詳細な情報が入り次第、追記します。不確定情報につき予断を与えかねない表現となったことをお詫びします。

(2024/12/1)



※1 ・旧来の風邪を「5類感染症」に格上げへ 武見厚労相が明言

楊井人文

2024.07.26

※従来、感染症法上は位置付けがなく、監視の対象ではなかった風邪のコロナウイルスによる感染症も「5類」に位置付ける方針であることを武見厚労大臣が明らかにした。それはどういうことを意味するか解説した。

厚生労働省が従来から日常的に流行していた風邪を、季節性インフルエンザや新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などと同様に、感染症法上の「5類感染症」に位置付け、流行状況を監視する方針であることがわかりました。7月26日、武見敬三厚生労働大臣が記者会見で、筆者の質問に答えました。

厚労省は、「急性呼吸器感染症」(ARI)を新たに「5類感染症」に位置付ける省令改正を行う方針を示し、パブリックコメントを実施しています。

ただ、公開資料では、この「ARI」に従来の「風邪コロナウイルス」が含まれているとは明記しておらず、メディアもそのように報道していませんでした。


・せきや頭痛・鼻水などの急性症状想定「急性呼吸器感染症」の患者数を定点把握…今年度中にも(読売新聞Online 2024年7月9日)

※国や自治体が行う感染症発生動向調査について、厚生労働省は、今年度中にも新たな区分「急性呼吸器感染症(ARI)」を設け、全国の定点医療機関に患者数を報告させる方針を決めた。国際基準に合わせ、せきや頭痛、鼻水などの急性症状を伴う患者を想定している。ウイルスや細菌など病原体を問わずに幅広く報告を求めることで、呼吸器感染症全体の広がりを早期に把握することを目指す。

ARIは、のどや肺の炎症などを招く感染症の総称で、インフルエンザや新型コロナウイルス、RSウイルスなど、従来から個別に調査している感染症も含まれる。ARIの患者数と、継続して調査するインフルエンザや新型コロナの患者数との比較や、病原体のゲノム解析を行い、未知の感染症の流行把握も狙う。

感染症法は、感染症を危険度の高い順に1~5類に分類している。ARIはインフルエンザなどと同じ「5類」として扱う。

8日の専門家部会に案を示し、了承された。委員からは「定点観測を行う医療機関や自治体の負担にならないよう、ARIの定義をしっかり定め、周知して始める必要がある」などの意見が出た。


従来の「風邪コロナウイルス」は感染症法で指定されておらず、監視対象となっていませんでした。「風邪」を「無類」から「5類」に格上げするのはなぜなのか、それはどういうことを意味するか、解説します。



※2 武見大臣会見概要 (令和6年7月26日(金)11:16~11:32 省内会見室)

大臣:
今月の米国出張における知見や「創薬力・構想会議」の議論も踏まえ、オープンイノベーションによる創薬エコシステムを強化するため、7月30日に首相官邸にて「創薬エコシステムサミット」Gate Opening Summit for Innovative Drug Discoveryというテーマで会議を開催します。本サミットでは複数の関係閣僚等のほか、我が国の創薬力向上のキープレーヤーとなる国内外の関係者が一堂に会し、創薬エコシステムの強化に資する取組や官民の意見交換の場である「官民協議会」の在り方について意見交換を行います。可能であれば総理にもご出席いただきたいと考えております。またサミット終了後は、製薬企業、スタートアップ、ベンチャーキャピタル、アカデミアの関係者をお招きしてネットワーキングイベントも開催します。我が国が世界に誇るべき創薬力を武器に、産学官が一丸となって創薬エコシステムの強化に取り組んでいきたいと考えています。詳細については追って事務方よりご案内いたします。私からは以上です。

記者:
今年度の最低賃金の改定の目安額について伺います。長時間にわたる審議の末、中央最低賃金審議会で50円引上げるという目安で労使の議論が決着しました。全国の最低賃金の平均は1,054円になりますが、労働者側からは「物価高にはまだ追い付いていない」との意見も聞かれます。この引上げ目安について大臣の受け止めや評価をお願いします。また、今後各都道府県がそれぞれの審議に入りますが、どの様な議論を望むかお考えをお聞かせください。

大臣:
審議会で、公労使の各関係者から大変熱心なご議論が行われたことに敬意を表しておきたいと思います。50円、5.0%という今回の目安については、物価が高水準で推移する中、昨年10月以降の消費者物価の伸び率、平均3.2%でしたが、これに加え、最低賃金に近い賃金水準の労働者の購買力を維持する観点から、頻繁に購入する品目の伸び率、平均5.4%、これも勘案し取りまとめられたものと認識しています。また、こうした最低賃金の引き上げは非正規雇用労働者や中小企業への波及に資するものになると考えています。地方最低賃金審議会においては、地域の実情に応じた真摯な議論が行われることを期待したいと考えています。

記者:
マスクの感染予防効果についてお尋ねします。去年の1月30日コクランレビューに、マスクの感染予防効果は認められなかったという科学論文が発表されています。6月にはアメリカの下院公聴会でアンソニー・ファウチ氏が、マスクの感染防止効果についてソーシャルディスタンスと共に科学的根拠は必ずしもあったとは言えないとの発言をされています。我が国は厚労省がマスクに感染症防止効果があるという立場と認識しますが、その根拠を教えてください。

大臣:
新型コロナウイルス感染症の感染予防には、換気や手洗い・手指消毒、マスクの着用などの基本的な感染対策が有効であり、これまでも国民の皆様に対し周知してきたところです。マスクの着用については、新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードにおいて、西浦先生から「マスク着用の有効性に関する科学的知見」として資料を提出していただくなど、感染症の予防に有効であると考えています。

記者:
根拠として決定付けるような論文はありますか。

大臣:
これは、まず新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードでの資料に基づきますと、系統的にレビューした研究によると、マスク着用をコミュニティ全体で推奨した際、新規感染者数、入院患者数、死亡者数をそれぞれ減少させる効果があることが示唆された結果が大変多く出ています。米国における研究では、マスク着用者が10%増加することにより、そうでない場合と比較して流行を3.53倍制御しやすくなると推定された結果などが紹介されていると承知しています。

記者:
後者の論文はおそらく昨年2月1日に出されたものだと思います。同時期に出された先ほどのコクランレビューの方は検討されないのでしょうか。

大臣:
適宜こうした文書については検討していると思います。その上で、引き続きマスク着用については効果がある、特に今年の夏は再びコロナが感染する、拡大可能性があり、私どもも非常に警戒しています。その中で、やはり症状が出た方はぜひマスクの着用をしていただき感染を防止していただくことを強く国民の皆様方にも推奨させていただいているところです。

記者:
急性呼吸器感染症、ARIを感染症法の5類感染症に追加する方針についてお尋ねします。現在、省令改正のパブコメが行われており、そこで明確に説明されていないようですが、従来の風邪コロナウイルスによる感染症を「5類」に位置付ける変更だと理解してよろしいのでしょうか。そうだとすれば風邪を5類に格上げする目的は何でしょうか。また、これによって他の感染症と同じように今後は風邪の流行状況をいちいち発表したり、医療機関や国民生活に影響が出ることも予想されます。今回の位置付け変更によってどのような影響が出るのか教えてください。

大臣:
今月開催した感染症部会において、季節性インフルエンザウイルス、新型コロナウイルス感染症等、個別に把握している感染症以外の急性呼吸器感染症も、発生状況を把握し平時より呼吸器感染症の包括的なリスク評価を行うため、感染症法の5類感染症に位置付けました。これは平時より呼吸器感染症の包括的なリスク評価を行うためです。国際基準に準じ急性呼吸器感染症を一体的に把握する体制を整備する方針も了承されました。今後、報告を求める具体的な症例について検討することとしていますが、定点医療機関が報告すべき対象が追加されるため、詳細が決まり次第、定点医療機関における報告に係る事務負担にも配慮しつつ定点医療機関に対してご理解・ご協力を促してまいりたいと考えています。

記者:
従来の風邪コロナウイルスは入っているのでしょうか、入っていないのでしょうか。今回パブコメで付されている案です。

大臣:
これは平時より呼吸器感染症の包括的なリスク評価を行うため、平時よりの包括的な感染症のリスク評価という点が、その基本的な考え方です。

記者:
国民に意見募集を求めているわけなので、そこは明確に今回の改正によって従来の風邪が5類に入ることになるのか入らないことになるのか、そこを明確にご説明いただけますか。意見募集をされている意図がわからなくなってしまいます。

大臣:
急性呼吸器感染症とは、急性の上気道炎(鼻炎、副鼻腔炎、中耳炎、咽頭炎、喉頭炎)あるいは下気道炎(気管支炎、細気管支炎、肺炎)を指す病原体による症候群を総称して急性呼吸器感染症と言います。新型コロナウイルス感染症とは異なる「かぜ」の原因となるコロナウイルスもここに含まれます。

記者:
含まれるとお聞きしました。

記者:
7月4日に開催された第16回医薬品等行政評価・監視委員会において、会議の情報公開の在り方に関するやり取りがありました。厚生労働省の担当者が、この会議はYouTubeでライブ配信をしているので情報公開は十分できているという趣旨を話される一方、委員からは、ライブ配信が終わると視聴できなくなってしまうので事後検証ができないと指摘されていました。この会議に限らずのことですが、厚生労働省が配信している会議の多くはライブ配信でしか見られません。7月4日の会議で言えば、平日の10時から12時に行われ、この時間に視聴できる方は非常に限られます。会議終了後であってもいつでも視聴できるようになれば、国民にとって便利かと思いますがいかがでしょうか。

大臣:
厚生労働省所管の審議会等の公開については「審議会等会合の公開に関する指針」に基づき対応することとしています。この指針においては、議事録または議事要旨の公開のルールについて定めており、ご指摘のような会議後の動画の公開までは求められていません。審議会等会合の公開の在り方については、個々の会合の性格等に応じて審議会等の開催の都度判断し、引き続き適切に対処してまいりたいと考えています。

記者:
ライブ配信だけ行い、その後見られなくするというのはどのような意図があるのでしょうか。最初から公開しないのであれば理解できます。

大臣:
今申し上げた通りのお答え以外はございません。

記者:
レプリコンワクチンの問題、特に「シェディング」の問題について伺います。2024年7月5日の会見で、この秋から接種可能となるレプリコンワクチンの「シェディング」、伝播・排出・曝露等とも呼ばれますが、その問題を指摘し、この現象に関して臨床試験あるいは何らかの調査は行われているのか、行われているのであればその結果を明確かつ科学的なデータとして国民に示すべきではないかと質問をし、武見大臣からは、「シェディング」という現象が、科学的知見として現在存在するのだということについてはまったく承知をしていないので答えようがないとのご答弁をいただきました。武見大臣は「まったく承知をしていない」と仰いましたが、平成29年度厚生労働行政推進調査事業の総合報告書から抜粋された「感染症の予防を目的とした組換えウイルスワクチンの開発に関する考え方」という文書の中に「臨床評価に関して留意すべき点」として、「増殖型組換えウイルスワクチンの場合には新生児、妊婦及び免疫抑制状態の患者等への伝播リスクが高いことが想定されるため、ウイルス排出については、慎重に評価すべきである」との記述があります。この場合、「増殖型組換えウイルスワクチン」というのはレプリコンワクチンに相当するものであると考えますが、「慎重に評価すべき」とされている「シェディング」について大臣が全く承知していないというのは問題だと考えます。レプリコンワクチンの「シェディング」について現状、臨床試験もしくは何らかの調査が行われているか行われていないか端的にご教示ください。

大臣:
レプリコンワクチンはRNAワクチンであり、ご指摘の報告書に記載のある増殖型組換えウイルスワクチンにはあたらないものと承知しています。その上で、レプリコンワクチンに関する国内臨床試験において、お尋ねの「シェディング」と呼ばれる事象が生じるとの知見は現時点ではないものと承知しています。そのため「シェディング」に関する追加的な調査等を実施する必要性は現時点では認められません。引き続き最新の科学的知見を踏まえ、レプリコンワクチンの有効性・安全性の確保にしっかり努めてまいりたいと考えています。

記者:
臨床試験自体は行われているということでしょうか。

大臣:
レプリコンワクチンに関する国内臨床試験において、お尋ねの「シェディング」と呼ばれる事象が生じるとの知見は現時点ではありません。そのことを申し上げました。



※3 武見大臣会見概要 (令和6年8月2日(金)10:54~11:09 省内会見室)

大臣:
本日、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の変更について閣議決定されました。今回の変更では、時間外労働の上限規制の遵守徹底、過労死等の再発防止指導、フリーランスなどの対策の強化、業種やハラスメントに着目した調査・分析など過労死等防止対策を充実させてまいります。今後とも関係行政機関とも連携しながら、過労死ゼロの実現に向けて全力で取り組んでまいります。私からは以上です。

記者:
30日の社会保障審議会年金部会で遺族厚生年金について、厚労省は現役世代でこどもがいない人の受給期間を男女とも5年間とする案を審議会に示しました。現在の男女の格差是正に繋げる狙いがあると思いますが、大臣の受け止めと今後の議論の進め方について教えてください。

大臣:
7月30日の年金部会では、男女問わず20代から50代の子のない配偶者の遺族厚生年金について「配偶者の死亡という激変に際した生活再建の有期給付」とする見直し案を示しました。これは女性の就業進展や共働き世帯の増加等を踏まえ、制度上の男女差解消を意図するものです。また、20年以上の長期間の経過措置を設けながら段階的に進めると同時に、既に遺族年金を受給されている方や高齢で配偶者を亡くされた方、お子さんがいらっしゃる世帯については、現行の仕組みを維持することを検討しています。基本的な方向性について多くの委員から異論はなかったものと承知していますが、引き続き国民に対して見直しの趣旨・内容を丁寧に説明するとともに、年末に成案が得られるよう与党とも相談しながら詳細な検討を進めてまいりたいと考えています。

記者:
政治資金パーティーについてお伺いします。大臣は29日に政治資金パーティーを開かれましたが、このパーティーの参加人数と、政治資金規正法上の特定パーティーに該当するかどうかを教えてください。

大臣:
これはまさに背に腹は代えられないところで、私の事務所の金庫は7月の中旬で全く空になることになっていましたので、実際にこれは必要不可欠ということで政治資金パーティーというものを現行の法律に基づいて開催しました。やってみたところ、大体コロナの前の段階に戻ってきたかという感じで、少し少なかったかもしれません。まだ勘定はしていないのでわかりません。

記者:
お見受けしたところ数百人規模かと思いますが、大規模なパーティーの自粛を求めている大臣規範との整合性についてはどうお考えですか。

大臣:
大臣規範でそうなっていますので、私としても特に盛大にやろうというつもりでやったわけでは全くありません。

記者:
自民党の派閥による政治資金パーティーの裏金問題があったばかりですが、その中でパーティーを開かれるということについてのお考えをお願いします。

大臣:
政治と金の問題で、裏金作りに使われたという派閥のパーティーの在り方に関しては、過去において極めて遺憾なことであってはならないことだと私は思っています。ただ私の今回の政治資金パーティーについては、しっかりそうした現行法に基づいて行ったわけで、なければ7月の中旬で事実上私の事務所は破産宣言をしなければならないくらいの状況になりましたので、実際に閣僚になってから1回もそうした資金集めはしませんでしたので、そういった状況であったことも踏まえ、実際に通常と同様のかたちでやらせていただいたと。集まった方は大体コロナの前の段階より少し減ったくらいでした。

記者:
現在パブリックコメントがなされている感染症法の省令改正案についてお尋ねします。今回の変更は急性呼吸器感染症(ARI)のうち、これまで5類に指定されていなかった風邪全般を5類に指定し、特定感染症予防指針の対象にも含める趣旨だと理解しています。軽症の風邪を今回サーベイランスの対象にすることのメリット、あるいは費用、費用対効果をどう見積もっておられるのか教えてください。また特定感染症予防指針の対象に今回風邪を入れるということですが、今後、風邪を予防するためのワクチン開発も視野に入れておられるのか教えてください。

大臣:
急性呼吸器感染症を感染症法の5類感染症に位置付けることで、新型コロナウイルス感染症等、個別に把握している感染症以外の急性呼吸器感染症についても、平時から探知できる体制整備が可能となります。この結果、個別に把握していない急性呼吸器感染症についても、迅速に適切な感染症対策の検討を行うことに繋がると考えています。定点医療機関における報告に係る事務負担やサーベイランスに係る費用にも配慮しながら、報告を求める具体的な症例について検討を進めたいと考えています。また、急性呼吸器感染症についても個別の対応について定める特定感染症予防指針を今後策定する予定ですが、同指針に記載する事項やご指摘の「風邪のワクチン開発」に関しては、対象となる感染症の特性も踏まえて引き続き検討していきたいと考えています。

記者:
これまで個別に把握していなかった急性呼吸器感染症を見つけるためにサーベイランスを行うということかと思いますが、現実には、それは個別に今まで5類に指定されていなかったものは、いわゆる風邪になるかと思います。いわゆる風邪、200種類以上の原因ウイルス、病原体があると言われていますが、そうしたものを今回全部把握できるような体制にするということかと思います。相当負担が大きくなるのではいか、費用もかかるのではないかと思いますが、そのあたりはどのように見積もっておられるのでしょうか。

大臣:
急性呼吸器感染症というものは、急性の上気道炎(鼻炎、副鼻腔炎、中耳炎、咽頭炎、喉頭炎)、下気道炎(気管支炎、細気管支炎、肺炎)を指す病原体による症候群の総称を言います。新型コロナウイルス感染症とは異なる「かぜ」の原因となるコロナウイルスもここに含まれます。おおよそ5類の対象となる急性呼吸器感染症の中にいわゆる風邪コロナも含まれうるが、引き続き定点医療機関における報告に係る事務負担やサーベイランスに係る費用にもしっかり配慮しながら、報告を求める具体的な症例について検討を進めるという立場です。

記者:
費用がどれくらいかかるのかということはまだ見積もっていないということですか。

大臣:
それはまだ現在検討中ですので、そこまでやっているわけではありません。
記者:
先ほど大臣のお答えにありました特定感染症予防指針は個別に決めていないということですが、場合によってはこれまで対象になってなかった風邪コロナに関するワクチンを作るということも視野に入っているとお聞きしてよろしいでしょうか。

大臣:
今般の急性呼吸器感染症を5類に位置付け、特定感染症予防指針の対象とする方針というものは、ワクチンが有効な感染症である場合にはワクチン開発も検討されますが、いずれにせよ急性呼吸器感染症に関する特定感染症予防指針に記載する事項、ワクチン開発の方針についてはこれから引き続き検討していくということです。

記者:
臓器移植についてお伺いします。先月26日の臓器移植委員会で、日本臓器移植ネットワークのコーディネーターの不足による対応や到着の遅れが医療現場や家族にとって負担になっていると委員から指摘がありました。これについて大臣の受け止めと、今後JOTのコーディネーターの不足、対応の遅延の実態について調査する予定はあるかどうかお考えを教えてください。

大臣:
コーディネーターの到着の遅れにより家族を待機させたり、医療機関内での調整が遅れるなどといったご負担をおかけすることは極力避けるべきです。こうした事案も含め、臓器あっせんに係る現状と課題を把握するため、7月3日に日本臓器移植ネットワークに対し、主治医等から連絡を受けた全ての事例の内容や対応状況を報告するよう指示しました。その結果も踏まえ、臓器あっせんの在り方について今後確実に検討を進めてまいります。今のままで良いとは思っていません。

記者:
長崎の被爆体験者についてお伺いします。9日の「長崎原爆の日」に、大臣は総理とともに被爆体験者の方々と面会する予定と聞いております。大臣は今年2月の国会で、被爆体験者との面会を「検討する」と答弁されました。これを機に面会の実現に至ったと認識しておりますが、被爆体験者側からはこれまでも面会の要望があった中で、大臣は今年に関しては面会について「検討する」と答弁され、実際に会うことを決めたのはどういった理由からでしょうか。また被爆体験者は被爆者健康手帳の交付などの救済を求めています。これに関し、今年の面会では国として何か方針を示されるのかお聞かせください。

大臣:
8月9日の長崎原爆平和祈念式典後に例年、長崎市の主催で被爆者の方々からご要望をいただく会が開催されており、私もこれに参加させていただきます。被爆体験者の方々の同席については、今年2月の国会質疑、ご指摘のものも踏まえ長崎市に調整を依頼しました。被爆者健康手帳の交付については、被爆地域として指定されていない地域においては身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあったとは言えず、原子爆弾投下後間もなく雨が降ったとする客観的な記録も今のところありません。こうした判決が実際には確定しています。このため長崎の被爆体験者の方々に被爆者健康手帳を交付することについては、過去の裁判例との整合性に課題があるため、政府としては被爆体験者の方々に対し、昨年4月から医療費助成の対象を拡充するなど被爆体験者の支援に努めているところであり、引き続き長崎県、長崎市とも相談をしながら必要な対応を検討してまいります。昨年4月から一部がんもこれに追加したところです。それ以前はいわゆる被爆体験の中で実際に精神的なショックを受けられた方、そうしたことに係る精神疾患等は入っていましたが、これに改めて昨年4月以降はがんを加えたという経緯があります。いずれにせよ、こうした皆様方のご意見に対し丁寧に真摯にお話しを伺うことが必要、それが私の国会答弁の際の趣旨ですので、それが基本だということをご理解いただきたいと思います。