・ダークエネルギーの源が「ブラックホール」である可能性を示す最初の糸口が見つかる(Gigazine 2023年02月16日)
https://gigazine.net/news/20230216-dark-energy-link-black-hole/
※宇宙空間に存在するとされる「ダークエネルギー」については、星や銀河の観測から存在が推測されているものの、それが何であり、どこから来るのかは分かっていません。新たな研究により、宇宙の大部分を構成する謎のエネルギーは「ブラックホール」が説明してくれる可能性があることが分かりました。
人間の身近な世界を構成している物質(マター)は宇宙に存在するすべてのもののわずか5%にすぎません。残りの約27%はダークマターで、光を放出したり反射したり吸収したりしない、通常の物質の影のような存在で、宇宙の大部分を占める約68%はダークエネルギーであると考えられています。
ミシガン大学の物理学教授であるグレゴリー・タルレ氏らが中心となって進めた研究では、ブラックホールの成長が宇宙の膨張と関連しており、ブラックホールにダークエネルギーの一種である「真空のエネルギー」が含まれているかもしれないという考えが示されました。
海外メディアのThe Conversationによると、この考えは特に新しいものではなく、1960年代から積極的に議論されていたとのこと。しかし、今回の研究においては、宇宙が膨張するにつれて真空のエネルギーが時間とともに増加すると仮定され、ダークエネルギーがこれにどれだけ起因しているのかが計算されたため、ブラックホールとダークエネルギーを関連付ける初めての調査結果が報告されたとして注目されています。
タルレ氏らは銀河の中心にある超巨大ブラックホールに着目し、観測結果を過去と現在で比較しました。ブラックホールの質量が過去90億年にわたって変化し続けていることは先行研究で明らかになっていましたが、タルレ氏らが変化の過程を調べたことにより、現在のブラックホールは90億年前に比べて7~20倍へと質量を増していたことが判明します。
しかし、比較対象となったブラックホールは周囲の物質を吸収し尽くした後であったため、通常のプロセスでは質量の増加を説明できません。そこでタルレ氏らは、これらのブラックホールに真空のエネルギーが含まれており、宇宙の膨張と「結合」しているため、宇宙が膨張するに従って質量も増加したのではないかとの説を提唱しました。
タルレ氏は「もし結合が確認されれば、ブラックホールは決して我々の宇宙から完全に切り離されることはなく、遠い未来まで宇宙の進化に大きな影響を及ぼし続けることを意味します」と述べました。
・ダークエネルギーが「逆再生ビッグバン」でブラックホールから生成されているとの研究結果が報告される(Gigazine 2024年11月24日)
https://gigazine.net/news/20241124-dark-energy-from-black-holes/
※宇宙の70%を占めるエネルギーであるダークエネルギーの正体や起源については、「暗黒流体の一部」との説や、「この宇宙に吸収されている並行宇宙」との説など、さまざまな仮説が提唱されています。新しく、宇宙を加速膨張させている謎の力であるダークエネルギーは、何でも吸い込む天体のブラックホールから発生しているのではないかという研究結果が発表されました。
宇宙の進化モデルとして有力なインフレーション理論では、今から約140億年前に起きたビッグバンの初期に謎のエネルギーが宇宙を指数関数的に膨張させ、その過程で地球や宇宙の星々を形作っている既知のあらゆる物質が生成されたと言われています。
この謎のエネルギーについて、ミシガン大学の名誉物理学教授であるグレゴリー・タルレ氏は「宇宙のごく初期、重力が非常に強かった時期に、ある種のダークエネルギーが宇宙を急激に膨張させ、未知のプロセスによりこのエネルギーが現在の宇宙の物質に変換されました。現在の宇宙で唯一、インフレーションの時代と同じくらい重力が強い場所はどこかと自問すれば、その答えはブラックホールの中と言えます」と話します。
「ブラックホールの中心では、ビッグバンでダークエネルギーから物質が生まれたのと逆のプロセスでダークエネルギーが生成されているのではないか」と考えたタルレ氏らの研究チームは、アメリカのキットピーク国立天文台にあるメイヨール望遠鏡に搭載されたダークエネルギー分光装置(DESI)の観測データを分析しました。
ロボットアームで制御される5000本の光ファイバーで一度に5000個の天体を観測できるDESIを使うと、数千万の遠方銀河を観測して過去の宇宙の膨張速度を正確に測定することができます。
DESIの観測記録から、ダークエネルギーの量が時間とともにどう変化したかを割り出した研究チームは、そのデータを宇宙の歴史を通じて誕生してきたブラックホールの生成量と比較しました。
その結果、ブラックホールが生成されるにつれて、宇宙のダークエネルギーの量も増加していることが分かりました。
これについて、ハワイ大学の物理学准教授で論文の共著者であるダンカン・ファラー氏は「ダークエネルギーの増加とダークエネルギーの生成という2つの現象が互いに一致していました。つまり、巨大な星が死んで新しいブラックホールが作られるにつれて、宇宙のダークエネルギーの量も正の方向に増加していたのです。このことから、ブラックホールがダークエネルギーの源である可能性が高まりました」と説明しています。
宇宙が膨張するにつれて質量が増えるブラックホール、つまり「宇宙論的に結合したブラックホール(Cosmologically coupled black holes)」の可能性を示した研究は、これが2つ目です。
タルレ氏らは2023年に、銀河の中心にある超大質量ブラックホールの質量が宇宙の膨張とリンクしていることを突き止めたと発表しています。その銀河では周囲の物質が枯渇していたため、ブラックホールが通常のプロセスで成長することはありませんが、ブラックホールは宇宙の膨張とともにサイズが大きくなり、質量も増えていました。
これらの研究が注目されている理由のひとつは、ブラックホールの特異点の問題が解消できるからです。ブラックホールの中心には、密度や重力が無限大となる特異点が存在しているとされていますが、無限という値は理論を破綻させてしまうため、アインシュタインの一般相対性理論が通用しなくなってしまいます。しかし、ブラックホールが宇宙とともに膨張しているのであれば、特異点は不要になります。
また、以前の研究と今回の研究の重要な違いとして、分析対象となったブラックホールの大部分がこれまで調査されてきたものより新しいという点が挙げられます。これらの若いブラックホールは、ブラックホールの形成につながる星の誕生が始まったばかりの頃ではなく、星の形成がピークにさしかかっている時期に生まれたものであり、既に研究が進んでいる銀河の中心の超大質量ブラックホールとは違った新しいデータを提供してくれます。
タルレ氏は「ブラックホールがダークエネルギーなのかどうかや、ブラックホールが宇宙と結びついているかどうかは、もはや単なる理論的な問題ではなく実験的な疑問となりました」と述べて、今後のさらなる研究による理論の進展と検証に期待をのぞかせました。
https://gigazine.net/news/20230216-dark-energy-link-black-hole/
※宇宙空間に存在するとされる「ダークエネルギー」については、星や銀河の観測から存在が推測されているものの、それが何であり、どこから来るのかは分かっていません。新たな研究により、宇宙の大部分を構成する謎のエネルギーは「ブラックホール」が説明してくれる可能性があることが分かりました。
人間の身近な世界を構成している物質(マター)は宇宙に存在するすべてのもののわずか5%にすぎません。残りの約27%はダークマターで、光を放出したり反射したり吸収したりしない、通常の物質の影のような存在で、宇宙の大部分を占める約68%はダークエネルギーであると考えられています。
ミシガン大学の物理学教授であるグレゴリー・タルレ氏らが中心となって進めた研究では、ブラックホールの成長が宇宙の膨張と関連しており、ブラックホールにダークエネルギーの一種である「真空のエネルギー」が含まれているかもしれないという考えが示されました。
海外メディアのThe Conversationによると、この考えは特に新しいものではなく、1960年代から積極的に議論されていたとのこと。しかし、今回の研究においては、宇宙が膨張するにつれて真空のエネルギーが時間とともに増加すると仮定され、ダークエネルギーがこれにどれだけ起因しているのかが計算されたため、ブラックホールとダークエネルギーを関連付ける初めての調査結果が報告されたとして注目されています。
タルレ氏らは銀河の中心にある超巨大ブラックホールに着目し、観測結果を過去と現在で比較しました。ブラックホールの質量が過去90億年にわたって変化し続けていることは先行研究で明らかになっていましたが、タルレ氏らが変化の過程を調べたことにより、現在のブラックホールは90億年前に比べて7~20倍へと質量を増していたことが判明します。
しかし、比較対象となったブラックホールは周囲の物質を吸収し尽くした後であったため、通常のプロセスでは質量の増加を説明できません。そこでタルレ氏らは、これらのブラックホールに真空のエネルギーが含まれており、宇宙の膨張と「結合」しているため、宇宙が膨張するに従って質量も増加したのではないかとの説を提唱しました。
タルレ氏は「もし結合が確認されれば、ブラックホールは決して我々の宇宙から完全に切り離されることはなく、遠い未来まで宇宙の進化に大きな影響を及ぼし続けることを意味します」と述べました。
・ダークエネルギーが「逆再生ビッグバン」でブラックホールから生成されているとの研究結果が報告される(Gigazine 2024年11月24日)
https://gigazine.net/news/20241124-dark-energy-from-black-holes/
※宇宙の70%を占めるエネルギーであるダークエネルギーの正体や起源については、「暗黒流体の一部」との説や、「この宇宙に吸収されている並行宇宙」との説など、さまざまな仮説が提唱されています。新しく、宇宙を加速膨張させている謎の力であるダークエネルギーは、何でも吸い込む天体のブラックホールから発生しているのではないかという研究結果が発表されました。
宇宙の進化モデルとして有力なインフレーション理論では、今から約140億年前に起きたビッグバンの初期に謎のエネルギーが宇宙を指数関数的に膨張させ、その過程で地球や宇宙の星々を形作っている既知のあらゆる物質が生成されたと言われています。
この謎のエネルギーについて、ミシガン大学の名誉物理学教授であるグレゴリー・タルレ氏は「宇宙のごく初期、重力が非常に強かった時期に、ある種のダークエネルギーが宇宙を急激に膨張させ、未知のプロセスによりこのエネルギーが現在の宇宙の物質に変換されました。現在の宇宙で唯一、インフレーションの時代と同じくらい重力が強い場所はどこかと自問すれば、その答えはブラックホールの中と言えます」と話します。
「ブラックホールの中心では、ビッグバンでダークエネルギーから物質が生まれたのと逆のプロセスでダークエネルギーが生成されているのではないか」と考えたタルレ氏らの研究チームは、アメリカのキットピーク国立天文台にあるメイヨール望遠鏡に搭載されたダークエネルギー分光装置(DESI)の観測データを分析しました。
ロボットアームで制御される5000本の光ファイバーで一度に5000個の天体を観測できるDESIを使うと、数千万の遠方銀河を観測して過去の宇宙の膨張速度を正確に測定することができます。
DESIの観測記録から、ダークエネルギーの量が時間とともにどう変化したかを割り出した研究チームは、そのデータを宇宙の歴史を通じて誕生してきたブラックホールの生成量と比較しました。
その結果、ブラックホールが生成されるにつれて、宇宙のダークエネルギーの量も増加していることが分かりました。
これについて、ハワイ大学の物理学准教授で論文の共著者であるダンカン・ファラー氏は「ダークエネルギーの増加とダークエネルギーの生成という2つの現象が互いに一致していました。つまり、巨大な星が死んで新しいブラックホールが作られるにつれて、宇宙のダークエネルギーの量も正の方向に増加していたのです。このことから、ブラックホールがダークエネルギーの源である可能性が高まりました」と説明しています。
宇宙が膨張するにつれて質量が増えるブラックホール、つまり「宇宙論的に結合したブラックホール(Cosmologically coupled black holes)」の可能性を示した研究は、これが2つ目です。
タルレ氏らは2023年に、銀河の中心にある超大質量ブラックホールの質量が宇宙の膨張とリンクしていることを突き止めたと発表しています。その銀河では周囲の物質が枯渇していたため、ブラックホールが通常のプロセスで成長することはありませんが、ブラックホールは宇宙の膨張とともにサイズが大きくなり、質量も増えていました。
これらの研究が注目されている理由のひとつは、ブラックホールの特異点の問題が解消できるからです。ブラックホールの中心には、密度や重力が無限大となる特異点が存在しているとされていますが、無限という値は理論を破綻させてしまうため、アインシュタインの一般相対性理論が通用しなくなってしまいます。しかし、ブラックホールが宇宙とともに膨張しているのであれば、特異点は不要になります。
また、以前の研究と今回の研究の重要な違いとして、分析対象となったブラックホールの大部分がこれまで調査されてきたものより新しいという点が挙げられます。これらの若いブラックホールは、ブラックホールの形成につながる星の誕生が始まったばかりの頃ではなく、星の形成がピークにさしかかっている時期に生まれたものであり、既に研究が進んでいる銀河の中心の超大質量ブラックホールとは違った新しいデータを提供してくれます。
タルレ氏は「ブラックホールがダークエネルギーなのかどうかや、ブラックホールが宇宙と結びついているかどうかは、もはや単なる理論的な問題ではなく実験的な疑問となりました」と述べて、今後のさらなる研究による理論の進展と検証に期待をのぞかせました。