秀麗たちが貴陽に戻る前日、主上の執務室と府庫にはその帰りを心待ちにする者が集っていた。


【主上の執務室】


絳攸: 主上、今朝渡した書簡はすべて目を通していただけましたか?



劉輝: あぁ、ここに揃っている。・・・・・・。



絳攸: 明日は、ようやく秀麗たちが戻ってきますね。



劉輝: うん、そうだな。・・・・・・。



絳攸: (やけにおとなしいな)蜜柑でも食べますか?



劉輝: あぁ、いただこう。・・・・・・。



絳攸: (主上は、いったい何を思い悩んでいるんだ?こういうとき、何て声をかけたらいいんだ、俺!)



【府庫】


邵可: おや、黎深。ここにいたのかい?まさか吏部の仕事を途中で投げ出して来たんじゃないだろうね。


黎深: 兄上!そんなことは、わたしの人生において微々たる心配すら必要ないことです!


邵可: そうかい?でも・・・。


黎深: 玖琅はまだ兄上の邸にいるのですか?


邵可: いや、紅州へ帰らせたよ。貴陽にいたら、また絳攸殿をつかまえて余計なことを言いかねない。あの縁談は、絶対に諦めないだろうしね。


黎深: 玖琅は兄上への愛が足りなさ過ぎます。それなのに、何かにつけて貴陽を訪れては兄上の邸に居座るではないですか!断じて許せない行為です!


邵可: それは・・・きみが玖琅を紅邸に入れさせないからだろう。まったく・・・。


黎深: わかりました。今後一切、玖琅の貴陽入りを全力で阻止してみせます!


邵可: 黎深!どうしたんだい?今日のきみは・・・やたら無茶ばかり言う。(いつにもまして)


黎深: だって、兄上!いくら常識と節度あるわたしでも平常心ではいられません。明日は、秀麗が藍州から戻るんですよ!


邵可: 常識と節度・・・ねぇ。ただの旅行と言ったじゃないか。きっと藍州名物を土産に持ち帰ってくれるよ。


黎深: 兄上は心配ではないのですか!藍家の考えることです、きっと狙いは愛しい姪っ子秀麗に違いないですよ!


邵可: 心配いらないよ、黎深。秀麗たちなら、明日ちゃんと貴陽に戻る。藍家の三つ子も、何か良い考えがあって秀麗たちを招待したんだろう。わたしには、そう思える。だから、行かせたんだよ。


黎深: そうでしょうか・・・。


邵可: そうだよ。それに、いいかげん心配なら叔父の名乗りをあげたらどうだい?お互いの邸を行き来できるし、叔父として藍州へ付き添えたかもしれないよ。


黎深: はい・・・。ちゃんと考えてはいます・・・18年経ってしまいましたが・・・。


【主上の執務室】


絳攸: (こんなとき、楸瑛なら何と声をかける?よく考えるんだ、俺!)主・・・主上、今日は早めに仕事を切り上げて・・・花・・・花街でも行ってみませんか?くっ。


劉輝: 無理をするな、絳攸。全身鳥肌が立っているぞ。女嫌いのそなたが、花街へ誘うとはどうした?


絳攸: わ・わ・わたしは、ただ・・・主上が浮かない顔をされていたので・・・せっかく秀麗たちが戻るというのに・・・(何を言おうとしているんだ、俺!まるで支離滅裂だぞ、俺!)


劉輝: 絳攸、庭へ出よう。少し寒いが、まだ外は明るい。酒でもどうだ?


絳攸: はい・・・いただきます。


【庭の卓】


劉輝: あれ?先客がいるな。


邵可: これは、主上。


絳攸: 邵可様!・・・黎深様!!


黎深: ふん、わたしと兄上の穏やかな夕暮れのひと時を邪魔しに来たのか。


邵可: 黎深、そんな言い方はないだろう。せっかく四席あるんだから、さぁ、どうぞこちらへ。


主上、可、黎深、絳攸が同じ卓につく。これもある意味、彩雲国珍百景である。


絳攸: 邵可様、藍家の宴のことをご存知ですか?


邵可: はい、ずいぶん前に招待を受けましてね。大自然に囲まれた絶景を臨む宴の席は見事でしたよ。


劉輝: ほぉ~、それはいいな。ぜひ、次回は余もお呼ばれしたいものだ。


黎深: それはどうでしょう。ふんっ。双龍の宴には、仙の存在が関わるといわれます。行きたいから呼ばれるものではないようです。仙に認められし者だけが、招待されるともいわれています。


劉輝: 仙か・・・。しかし、秀麗と静蘭がなぜ呼ばれたのだ?


邵可: 人には生まれながらに使命があるものです。この朝廷にも、仙が体に入った者がいると昔から言い伝えがあります。さらに、真の王が頂に立つとき、国を守ろうとする志は仙の存在により広く人々の心に運ばれるといわれます。きっと、秀麗にも王の官吏として使命が与えられているのでしょう。


劉輝: 王の官吏か・・・。


絳攸: そして、大空へ自由に駆ける官吏へとなるのですね。


邵可: はい。すべては、あの子の望むまま。


黎深: 絳攸、邸へ帰るぞ。おまえも一緒に来るがいい。


絳攸: えっ?あっ、はい・・・。


黎深: 兄上、わたしは明朝までに心をこめて点心を作ります。そして、旅疲れをした秀麗においしい茶と手作り点心を・・・・あぁ~。


邵可: それは、いいね~。黎深、頑張りなさい!


黎深: はい!では、失礼いたします!


絳攸: 失礼いたします・・・。(まさか俺も作らされるのかーーー!)


邵可: 主上、これから秀麗はますます忙しくなるでしょうね。父親のわたしでさえ、数日顔を合わせないこともしばしば。でも、忘れないでください。あの子は、主上のために官吏を続けているのです。それが、この国を豊かにし、民を幸せにすることにつながる唯一の道だと信じているからです。


劉輝: わかっている。ありがとう、邵可。


翌朝、可邸 ---


秀麗: 父様~ただいま~!


静蘭: 旦那様、ただいま、戻りました!


邵可: おかえり、二人とも。さぁ、お茶を入れたところだよ。


秀麗・静蘭: うっ、・・・・・・。いただきます・・・。


彩雲国の新しい朝が始まろうとしていた。


<おわり>


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双龍の宴も、前回のその7で終了予定でしたが

どうしても黎深様がらみの話を書きたく・・・その8まで

続けてしまいました。


この妄想外伝、声優陣の皆様でドラマCD化して

いただきたい。。。なんて。


自己満足目以外何でもない妄想外伝に足を止めて

読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!!


次回作【いつかまた蜜柑の木の下で】


乞うご期待くださいませ。


HASU☆HANA