剛田は、峻一というその少年の手厚い看護を受けて、丸木小屋に一夜を明かした。男同士の隔てのない語調と、峻一の、その年令ぐらいの少年らしい、剛田のような勇敢な兵士への憧憬が、彼らの間を一夜のうちに急速に接近させた。小屋の中へ大樽を持ち込んで、深夜の湯浴みをする少年の裸身も剛田は見た。一点の濁りも、紙魚もない、半透明の大理石のような少年の肌がほんのりと色づき、未だ包茎のままの和毛に縁取られたペニスと、堅く引き締まっていながら、触れれば揺蕩うような柔らかい双丘。それらのものが、一纏めになって剛田の身内を情欲の嵐で混乱させた。
午後11時、少年は剛田の腕の包帯を取り替えてから、衣服を脱いで、老人と少年の二つしかないベッドの一方を占領している剛田の横へ滑り込んできた。全く無造作に剛田は、負傷していない右腕で少年を抱きかかえた。一瞬、少年は、小さく短い叫びを上げて身を堅くしたが、そのあとには、むしろ逆に、剛田の汗臭い胸にしがみついてきた。
尋ねてみると、少年は、陶工である老人と共に、ここで寝起きして、湯本の中学校へ数キロの道のりを通学しているのだと云う。なるほど、云われたように、部屋のあちこちに素焼きの花瓶や鉢ものがあるのを不思議に思っていたが、その老人も、昼間の作業に疲れて既に軽い寝息を立てている。少年がさらに語ったところによれば、彼の父は木賀峻道という海上自衛隊の幕僚で、第二次朝鮮戦争の際、平壌南方3〇キロ付近の上空で、バートルVー1〇7大型ヘリに乗って視察偵察中、対空砲火を浴びて戦死し、当時、厚生省の外局の女性局長という要職にあった母も、夫の後を追い自決したという。極右・極国粋主義的家系に育った、憐れな少年の過去であった。
少年は父を慕っていた。強く逞しい父の胸に抱かれた記憶は、多忙だった父だったからあまりなかったが、その温かみと力強さは、いつまでも少年の裡に蟠っていた。宏壮な邸宅の奥まった一室で、少年はいつも孤独だったと云う。その寂しく孤独な少年の追憶は、一層力強い抱擁となって剛田の太い胴体を絞めつけた。驚愕の中にも、少年が秀麗で、上品で、光り輝くように見えたのは、そのためだったのだと剛田は思った。為す術を知らずただしがみついてくる少年に、より深く大きな、具体的な快楽を教唆してやることは出来た。しかし剛田は、それをしなかった。少年を、酷く汚してしまう気がしたからだ。しかし、この怒張した軍袴の下の一物を少年はどう考えているだろう。
何の脈絡もなくかつての父との交情が頭の中を去来した。剛田の父は、少年だった剛田に、かつて一度だけこのような真似をしたことがあった。その時剛田は、今この少年がしたように、父の胸に縋り付いたのだ。弟が生まれてから、父は彼の方を可愛がるようになった。そんな父に悲しい反撥を覚えて、高校を出て大学へ進むとすぐ、剛田は右翼運動に身を投じたのだ。
剛田は今、情欲を自ら抑制しようとする苦痛と、それを解放する時期を待つ、期待の入り混じった複雑な気持ちで、華奢な少年の、ブリーフ一枚の裸身を抱いていた。
凛太郎の写真、その七です。ちょっと怒ってます。

午後11時、少年は剛田の腕の包帯を取り替えてから、衣服を脱いで、老人と少年の二つしかないベッドの一方を占領している剛田の横へ滑り込んできた。全く無造作に剛田は、負傷していない右腕で少年を抱きかかえた。一瞬、少年は、小さく短い叫びを上げて身を堅くしたが、そのあとには、むしろ逆に、剛田の汗臭い胸にしがみついてきた。
尋ねてみると、少年は、陶工である老人と共に、ここで寝起きして、湯本の中学校へ数キロの道のりを通学しているのだと云う。なるほど、云われたように、部屋のあちこちに素焼きの花瓶や鉢ものがあるのを不思議に思っていたが、その老人も、昼間の作業に疲れて既に軽い寝息を立てている。少年がさらに語ったところによれば、彼の父は木賀峻道という海上自衛隊の幕僚で、第二次朝鮮戦争の際、平壌南方3〇キロ付近の上空で、バートルVー1〇7大型ヘリに乗って視察偵察中、対空砲火を浴びて戦死し、当時、厚生省の外局の女性局長という要職にあった母も、夫の後を追い自決したという。極右・極国粋主義的家系に育った、憐れな少年の過去であった。
少年は父を慕っていた。強く逞しい父の胸に抱かれた記憶は、多忙だった父だったからあまりなかったが、その温かみと力強さは、いつまでも少年の裡に蟠っていた。宏壮な邸宅の奥まった一室で、少年はいつも孤独だったと云う。その寂しく孤独な少年の追憶は、一層力強い抱擁となって剛田の太い胴体を絞めつけた。驚愕の中にも、少年が秀麗で、上品で、光り輝くように見えたのは、そのためだったのだと剛田は思った。為す術を知らずただしがみついてくる少年に、より深く大きな、具体的な快楽を教唆してやることは出来た。しかし剛田は、それをしなかった。少年を、酷く汚してしまう気がしたからだ。しかし、この怒張した軍袴の下の一物を少年はどう考えているだろう。
何の脈絡もなくかつての父との交情が頭の中を去来した。剛田の父は、少年だった剛田に、かつて一度だけこのような真似をしたことがあった。その時剛田は、今この少年がしたように、父の胸に縋り付いたのだ。弟が生まれてから、父は彼の方を可愛がるようになった。そんな父に悲しい反撥を覚えて、高校を出て大学へ進むとすぐ、剛田は右翼運動に身を投じたのだ。
剛田は今、情欲を自ら抑制しようとする苦痛と、それを解放する時期を待つ、期待の入り混じった複雑な気持ちで、華奢な少年の、ブリーフ一枚の裸身を抱いていた。
凛太郎の写真、その七です。ちょっと怒ってます。
