次の小説です。凛太郎の写真も再開します。

 19☓☓年1月16日午前4時、陸上自衛隊市ヶ谷基地電話中隊の一女性隊員は、突然けたたましく点滅しはじめた入線合図のパイロットランプに気付き、二日連続で朦朧とした意識のまま接続ジャックを挿入した。
「北町の佐伯参謀はいないのか! 直通が通じないじゃないか!」
いきなり怒鳴りつけられて、彼女はびっくりして目が覚めた。ようやく覚醒しはじめた意識で、彼女は通話を反芻した。まるで参謀への直通電話の通じないのが、彼女のせいであるような云い方だ。相手はもう一度同じことを繰り返した。やはり、半ば叫んでいる。
「あの、自宅の方ではないかと…」
「おらんのだ、それが…」
相手はしばらく考えている様子だったが、すぐ意を決したように言った。
「習志野へ繋いでくれ、急げ!」
彼女は、返事もそこここに緊急時用パネルの第1空挺団にジャックを挿し込んだ。通話の主の切羽詰まったような様子に圧倒されながらも、この時彼女は、その通話の声が、福仲首相のものであることに気付いて慄然とした。
 緊急連絡を受けた千葉県習志野の第1空挺団は、最初、電話の主が分からず、しきりに緊急行動を要請する相手に頭をひねった。ひしゃがれたようで、それでいて甲高い電話の声は、2〇分以内に全部隊を霞が関へ降下させ、重要地点を確保せよと繰り返している。しかし、第一空挺団は、練馬区北町の第一師団司令部からの命令がない限り、独自の行動は起こせない。それ以外の場合と云えば…。その時、電話の主が焦りに満ちた声で告げた。
「福仲だ。わかったか、すぐやれ!」
 首相命令が下ったことを、視察先の山形県神町の第6師団本部で知った第一師団長佐伯剛造は、直ちに通信中枢の市ヶ谷基地を通して、指揮下に入る各部隊に非常呼集を号令した。既に行動を開始した第一空挺団、佐伯師団長自身の居る山形神町の第6師団、群馬県相馬原の第12師団、そして、名古屋の第1〇師団からは、陸戦師団と共に護衛艦二隻が呼集され、概ねの兵力は、兵員3万・戦車3〇〇両・装甲車15〇台・ヘリコプター1〇〇機の大規模なものとなった。熱い日々の始まりだった。

凛太郎の写真その1です。
$凛冽の汗