この事件をきっかけに、次々と対策委員会に連絡が入った。不純異性交際に関するものがほとんどであった。二年生の少女が徒党を組んだ三年生の男子生徒に強姦されたという報や、一年生の少年が、三年生の女生徒に、よってたかって嬲りものにされ、弄ばれたというようなものが数多くあった。やがて、生徒らは、授業中にさえ、教師の面前で堂々と痴態を示すようになった。その度に騒動が起こった。抱き合う二人に冷水を浴びせた教師が、生徒らによって逆に袋叩きにあったりした。

 そして、状況は更に変貌しつつあった。不思議なことに、女生徒が襲われたという報せが急に減少し始めたのである。対策委員会は、ホッと胸を撫で下ろした。しかし、それも束の間、更に異常な事態が待ち受けていた。男子生徒の同性愛行為が激増し始めたのだ。日を経るに従って、通報件数は増えていった。

 12月8日、午前3時頃。市中心部の京町にあるゲイバーに勤める沢田具視(20才)は、帰宅途中の児童公園で、中学生らしい短髪の少年に出会った。時間が時間だけに不審に思いながらも、自らの性癖の悲しさで、少年に声をかけた。少年は拒まなかった。オーバーの陰でお互いのものを愛撫するうち、興奮の極みに達し、沢田は小さな呻き声を上げて放出した。と、その時、突然、沢田の周囲を10人あまりの少年たちが取り囲んだ。驚いて立ち上がった沢田の下半身は、無様に縮みあがり、小刻みに震えていた。少年たちは、手に手にナイフや鉄パイプを握っていたのだ。あらゆる金品を奪われて、命からがら陶風警察署へ駆け込んだ沢田は、満身創痍で肺炎を起こしかけていた。

 12月13日、午後10時、近くの銭湯からの帰り、公立高校二年生の滝沢俊一、18才は、自宅付近の小公園へ差しかかった。公園の入口で、自転車に乗った中学生らしい少年が、手に懐中電灯を持って、しきりに地面を照らしている。近寄って尋ねると、金を落としたと言う。凄絶とも言うべき短髪の美少年だった。滝沢は少年が好きだった。部屋には、少年スター豊田譲の半紙大のパネルがかけてある。一緒に捜す振りを装って、滝沢は背後から少年を抱き締めた。その瞬間、後頭部に強烈な衝撃を受けて気を喪った。気がついた時、滝沢は、公園の大楠の枝に逆さ吊りにされていた。泣き叫んでいるところを、警邏中の警察官に発見された。

 12月25日、午前10時、K市開発局計画室長、中田権三56才の自宅で、中田はじめ妻と二人の子供が一家心中しているのを、出入りのクリーニング屋が発見して通報した。中田は少年愛者であった。12月はじめ、ゲイバーで知り合った青年から、中学生らしい少年を紹介され、郊外のモーテルで交わりを持った。少年は従順であった。絶頂の瞬間、突然、白く強烈な閃光を受けた。それが崩壊への擬態だった。役所と自宅の妻に宛てて、その写真は送付された。新聞社にまで送りつけられたのを、上司である開発局長が何とか揉み消したが、中田一家の心中は避けられなかった。そして、全てが新聞紙上に暴露された。