今回から、若い頃書いた小説を連載していきます。凛ちゃんは相変わらず元気ですので、ご安心ください。また、旅行なんかの写真を掲載しますので、待っていてください。
それでは、「滅びゆく少年」の第一回、プロローグです。
市立陶風中学校教諭の岩城和子は、今朝も、午前6時に家を出た。赴任以来の習慣だった。他の誰よりも真っ先に登校する。自らの教育熱心の表れだと想い込んでいた。昨夜来の雪で校庭は一面の銀世界であった。校門に近い方から順に、三つの校舎が並んでいる。今は、その校舎の側壁も、吹きつけられた雪で白く覆われている。未だ辺りは森閑としていた。職員室のある奥まった一号館に近くなって、岩城教諭の上機嫌は吹き飛んでしまった。自分より先に来た者が居るのだ。いくつもの足跡が雪を掻き乱している。彼女は小さく舌打ちして、職員室への階段を駆け上がった。
既に大扉は開けられていた。ストーブももう燃えている筈だ。しかし、部屋へ入り込んだ彼女は、一瞬、怪訝に思った。いつもなら、ふんわりと躰を包み込む筈の暖気がないのだ。用務員が寝坊をしたのだろうか。それにしては、大扉が開いていたではないか。しきりに首を傾げながら、出勤簿に判を捺そうと教頭の机に近づいた。机に片手をかけた時、ふっと目の端に触れたものがあった。彼女は後ずさりした。棒杭を打ち込まれたように全身が硬直した。凄まじい悲鳴を上げて、用務員室へ駆け込んだ。がんじがらめに縛られた用務員に再びぎくっとさせられながらも、彼女は気丈に受話器を取った。
次々と登校して来る職員や生徒の列を割って、パトカーや黒塗りの車が走り込む。校内は蜂の巣をつついたような騒ぎになった。殺されていたのは、生徒指導を担当している数学の教師、金子猛であった。捜査は怨恨一本に絞られた。死体の状況がそれを物語っていた。下半身は素っ裸であった。清掃用の竹箒の柄が、金子の下腹を斜めに深々と刺し貫いていた。腸壁を突き破り、心臓近くまで達している。それが致命傷であった。躰のあらゆる箇所に、殴る蹴るの陵辱の限りを尽くした痕跡が認められた。
私生活に乱れはなかったが、学校での金子は確かに少々乱暴だった。見境なく生徒を殴った。何人かの生徒が、食ってかかって、逆に打ち据えられていた。同じ数学教師の沖田宗一でさえ、そうした金子の所行に、多少の反感をいだいていた。
いかがでしたでしょうか。こんな感じで、サスペンス調で進んでいきます。10数回ありますから、ゆっくりお楽しみください。