傍で凛太郎が寝ています。家の中でうろうろガジガジうるさいので、二階に連れてきて無理やり寝かせました。まだ、自分のリードをガジガジしています。とにかく、放っておいてこれを書きましょう。
「なんでKと喋ったんや。」と、クラスでいちばん背の高いT君が言った。突然の言葉に、「えっ?」と私は答えた。「あいつは男子から嫌われてるやろ。」とT君が続けた。知らなかった。K君は人と群れるのが嫌いなんだと思っていた。みんなが無視してそうなっているんだと気付かなかった。
その日から私は妙にK君の事が気になり、何となく存在を意識するようになった。そんな時、私の机の前にあるストーブにみんなが集まっていた。そこへK君がやってきた。「もう一杯やから入れへんで。」と一人の男の子がK君を押し退けた。その言動が私の胸を刺した。椅子から立ち上がって、「そんなん言わんでも、少し寄ったら一人くらい入れるやんか。」と自分でもびっくりするほど大きな声で言った。一瞬しらけた感じになったが、友達のOさんが「K君空いたで。」と言ってくれ、私は「K君、一緒にあたろ。」と誘った。
しばらくして、またT君が「お前、Kのこと好きなんか。」と聞いてきた。今度はすぐに返事した。「うん。好きやで。」「なんでや。あいつ嫌われ者やって言ったやろ。」とT君が言った。「クラスメートやろ。K君、何かしやったん? K君は優しいし、私の知らん事を知ってて、話しててもすごく楽しいで。私、今までT君の事も好きやったけど、K君の事そんなふうに言うT君の方が嫌いやわ。」と言った。T君はちょっときまり悪そうに、私の所から去っていった。
それからまた、しばらくして、家庭科の授業の時だった。作品が仕上がった者はまだの人を手伝うよう、先生から指示があった。K君が袋の紐の通し方に四苦八苦していた。私が「手伝おうか。」と言うと、「うん、ありがとう。」と言った。紐を通しているとき、近くに座っていた人が「紐が足りひん。」と叫んだ。誰も、応えなかった。K君が「僕、長い目の持ってきたからあげるわ。」と私の手もとから紐を切って差し出した。K君はいい子なのに、何で男の子は嫌うんだろうと考えた。それは、K君が優しすぎて、みんなに遠慮してしまうからなんだと思った。それを、みんなは気が弱いからだと解釈し、自分達の弱さをカモフラージュするために、K君に強がっているんだと思った。
私だって、人に嫌な思いをさせていないとは言えない。自分より少し違う人がいれば妬ましいと思うときもある。でも、そんな時、いつも自分に言い聞かせる。自分にないものが人にあっても当然なんだと。反対に人にないものが自分にもあるはずだと。自分の価値観で人を肯定したり否定してはいけないと思った。いろんな個性があるから人と付き合っていけて、発見も多い。一人ひとりの存在を認め合う気持ちがあれば、その人の素晴らしさを発見し、みんな仲良くできるのにと思った。
今日、嬉しい事があった。T君がK君と帰るのを見かけた。人間っていいなと思った。
中学一年生の、十三歳の少女が書いています。私たちは、彼女に恥ずかしくないかと、思いました。彼女の言うように、お互いが一人ひとりの存在を認め合う気持ちを持ちましょう。そして四月、新しい人との出会いを大切にしていきましょう。
こんな作文を書いてくれる生徒がたくさんいたのです。その度にいつも思いました。偉そうに教師でございますと鼻高々の私の、その先生は生徒たちなのだ、子どもたちなのだと。今、「しつけ」などと偉そうにしている私のトレーナーは、他ならぬ凛太郎なのですね。
