やられました。噛まれました。病院に行かなければならないほどの傷です。凛太郎を叱っていてガブリとやられたのです。思うに、凛太郎は、その名の如くもうキャンキャンとは鳴きません。一頭の雄々しい柴犬なんですね。


凛冽の汗
進学歳時記 シリーズ④ 結果をつくり出すための汗を、そして涙を。

 アイアンジャパン ,95イン琵琶湖で、田村先生の力走を間近に見た。当日、模擬テストで行けなかった小学生のみんなにかわって、およそ二十人ほどの中学生と一緒に応援し、観戦した。バイク(自転車)からラン(マラソン)に移る部分と、ゴールの瞬間だけしか応援できなかったが、田村先生の力強い走りに胸が熱くなった。

 バイクで戻って来られたときも、ランで走り出して行かれたときも、田村先生は無表情であった。いや、むしろこわい顔をしておられた。当然であろう。三・四キロメートルの水泳、百八十キロメートルの自転車、そして四十二・二キロメートルのフルマラソンである。早朝六時半から約九時間を要して、体力と精神力の限界に挑んでおられるのだ。しかもおよそ八百数十人の出場者との競り合いである。一つの事に賭ける人の、ほんものの表情なのだ。三位になってゴールに戻って来られたとき、田村先生は初めて笑顔を見せてくださった。結果を作り出した人の、爽やかな笑顔だった。

 八百数十人中、第三位。すばらしい成績である。「応援なんてことよりも、ともかく自分の目で田村先生を見てごらん。必死で一つの事に打ち込んでいる人の一生懸命な姿を、自分の事として受け止めてごらん。」と無謀にも勧誘した三年生のクラスから、たった一人、応援団に参加してくれた、素直で感性豊かなM君に、「日進で言えば、田村先生は悠々と東大寺に合格出来るね。」と冗談を言った。

 M君にも、一年生の諸君にも言い忘れたことがあった。トライアスロンに人生を賭けるという田村先生は、いつだって走っておられる。電車にも乗らずに自転車で通勤され、毎日何キロも走り込み、坂道をぐいぐい駆け登って行く。田村先生の強さは、汗に濡れたひたむきな練習の積み重ねに、日常の生活そのものがトライアスロンであることに、人生そのものが鉄人レースなのだということにある。こうしてまた結果をつくり出された田村先生が、そのことを証明しておられるのだ。六年生、中三生にとっては天王山の夏、結果をつくり出すまぶしいほどの熱い夏、田村先生に負けないほどの汗を、そして涙を流しただろうか。


 およそ十五年以上も前の記事ですが、事情は今も変わらないと思います。まもなくまた、熱い夏が来ます。みんながぐんと大きくなるときです。逞しくなる季節です。凛太郎もまた、大きくなることでしょう。さあ、凛太郎に負けないように、すばらしい成長を見せてくださいね、と現代の少年たちに呼び掛けます。