前回予告した通り、「桜」の作文を紹介しようと机に向かうと、凛太郎がウーと唸りました。見るとまた、オシッコです。カーペットの上でやってくれました。またまた喧嘩です。ケージの中へ放りこんで、落ちついてこれを書いています。


凛冽の汗
君たちの作文から シリーズ終 ②

   おじいちゃんと桜  五条校中二 山崎竜◯

 僕は桜と聞くと、おじいちゃんを思い出します。おじいちゃんは、ちょうど今頃、僕を近くの大きな桜の木の下へ誘い、

「桜の木は大きいやろ。根元がしっかりしてこそ、こんなに大きくなったんやで。竜もこんな大きな桜の木みたいになりや、絶対なりや。」

と、僕に毎日のように言っていました。

 ある日、おじいちゃんが双ケ丘の病院に入院し、家族全員でお見舞いに行った時、僕はおじいちゃんに、

「絶対、中学受かってみせるから、心配しんといてや。」

と言いました。それから二、三か月後、おじいちゃんは死んでしまいました。あんなにやさしかったおじいちゃんが死んでしまいました。

「コーヒーつくって。」

と言われて、インスタントコーヒーを作って渡すと、いつも、いつも、

「おいしい、おいしい。」

と言って飲んでくれました。わがままを言うと、何でも聞いてくれたあのおじいちゃんが死んでしまいました。火葬場へ向かう車の中で、僕は無言。火葬場に着いて椅子に座っているときも無言。でも、おじいちゃんとのお別れのときに、僕は一言、

「おじいちゃん、ありがとう。」

と言いました。

 でも、それから約一年後、僕は嘘をついたことになりました。中学入試不合格という嘘をつきました。不合格を知らされたとき僕は、おじいちゃんから僕への愛情、信頼などすべてを、ゴミ箱に捨ててしまった気持ちになりました。

「おじいちゃん、嘘ついてごめん。」

としか言えなかったけど、その償いは高校入試や人生の上での努力と結果で返していこうと思いました。そして、そのとき僕は初めて、おじいちゃんの言っていた言葉の意味がわかりました。「桜の木みたいになりや。」とは、雨が降っても風が吹いても桜の木みたいにどしんと構え、何の障害にも負けず生きていくことなんだと。

 その時、僕はつくづく思いました。これから何年、いや何十年かかるかわからないけれど、大人になっていい結果が出せたら、そのとき、もう一度言います。

「おじいちゃん、ありがとう。」


 私にもそんな時が来るのでしょう。その時、凛太郎は一声「ワン」と鳴いてくれるでしょうか。それとも、「ウー」と悲しげに唸り声をあげてくれるのでしょうか。いや、もしかしたら、凛太郎の方が先に逝くのかも知れませんね。はたまた、息絶えたその腕の中で凛ちゃんも一緒に目を閉じているのかも知れませんね。いやいや、暗い話になりました。