凛太郎の日常といっても、そう大したものではありません。他所の犬と大差はないのです。ただ、一つ違うところとい言えば……男ばかりの世帯に雄犬が混じって、気が荒いということでしょうか。ダマとシゲは優しいのです。ボクが一人(一匹)気を吐いているだけなのですが……。
凛冽の汗
君たちの作文から シリーズ11 ①


 「近頃は、昼間でも、吐く息が白くにごる。たしか、三、四日前、夜に降った雪が山や野に、街のビルや家々の屋根に、ほんの少しだけ積もった。そんな、わずかに積もった雪を見ると、いつも、僕が幼稚園に行ったときのことを思い出す。その頃は、一日、すごく雪が降ったことがあった。家族で雪の動物をつくったぐらいだった。それは今でも覚えているぐらいだから、とても楽しかったのだと思う。日本人ならば、こんなふうに、雪のことを『冬の日』に思うだろう。

 家の近くにJRの電車が走っている。窓からそれをながめてみる。電車の上には、たくさんの真っ白な雪が覆いかぶさっていた。この雪を、どこから運んできたのだろうか。

 なぜ『雪』というものは、こんなに人を喜ばせることができるのか。

 人間は、どういうふうに雪を見て来たのだろうか。そして、どの様に、冬の日を感じて来たのだろうか。」

                                                  (長岡校 中一 小野◯之)

 最優秀の評価をつけたわけではない、何気なく読み過ごしてしまう作文である。けれども、私もまた、少年のころ多感であったからか、書き手の温かい息づかいは分かる。そう言えば、彼もまたおとなしい、素直な生徒である。そして作文を通してしか分からないが、確かな感受性の持ち主である。短い作文にも、そんな彼の人柄が滲み出ている。派手な装飾も衒いもない、路傍の野菊のような品性を、私は大切に慈しみたい。ここには、彼、小野◯之くんのような少年が大勢いる。一年生は入園してもう十ヶ月になるが、母さんのやさしい面影をその相貌に残していて初々しい。あたかも真っ黒な鼻面の元気な子犬のようだと言えば失礼だろうか。


 ここにも居ますよ。その真っ黒な鼻面の元気すぎる子犬が。ああ、懐かしいですね。そうです。かつて、そんな子犬たちが何十頭も何百頭も、私の前に居たのです。