やってしまいました。叱って叩いていたら、目にあたって負傷してしまいました。翌日すぐ獣医さんへ連れていきました。血の混じった目脂が出ていたので心配しましたが、白目部分が充血しているだけで、傷その他はありませんでした。一安心です。ごめんね、凛ちゃん。


凛冽の汗
君たちの作文から シリーズ8 ③

 ある日、僕らは生まれた。僕らは黒猫ちゃんである。黒猫といってもそう嫌わないでほしい。薄い黒、若さあふれた黒い毛なのだ。飼い主は可愛がってくれた…ように見えた。僕らは大きくなってきた。幸せを感じ、元気に動き回っていた。遊びたい盛りである。

 そんなある日、僕らは、生まれた三匹みんな、飼い主により、段ボール箱に入れられた。僕らは、この先どうなるかなど、知る由もなかった。僕らの入った段ボール箱はどこかへ運ばれ、そしてドスンと地面に置かれた。

「ここは何処?」

僕らには分からなかった。僕は小さな穴から必死で出ようとした。兄貴は上の蓋を開けようとしていた。姉貴はもうぐったりとしてしまっていた。

 どれぐらい経ったろうか。僕の頭が小さな穴から出た。それで、ここが何処か分かった。竹藪、田んぼ、住宅地の間の駐車場の一隅だった。そのことを僕は兄貴に伝えた。兄貴は、

「とにかく出てみよう。」

と言う。僕もその穴から再び出ようと試みた。しかし、頭が出ても、その後がだめだ。

 遠くから少女が二人歩いてきた。一人は自転車を押している。少女たちは僕らのいる所に来ると立ち止まった。話し声が僕の耳に入ってくる。

「いやぁ、捨て猫やん。」

「うん、めっちゃ可愛い。」

「可哀相。私、学校から帰ったら、餌もってくる。貰い手探そう。」

そんなことを言いながら、箱の蓋を開けた。僕は突っ込んだ頭が抜けずにもがいていた。兄貴は外に出たらしい。少女は「そっち行ったら危ないよ。」と兄貴を二度も三度も連れ戻していた。

「そろそろ行かんなんな。」

と少女は言って、兄貴を箱に入れ、「死んだらあかんで。」と言い残して歩き去った。

 再度、僕らはもがいた。しかし、箱から出ることは不可能であった。お腹も減った。僕も疲れ果ててしまった。そのとき、再び、箱の蓋が開かれた。大きくやさしい手によって、僕らは香ばしい鰹節を与えられた。僕にしてみれば、その大きな手の持ち主は神様にちがいなかった。兄貴や姉貴もそう思っただろう。僕らは、やさしいその人の家に連れて行かれた。

 僕は思った。世の中、冷たい人ばかりではない。僕らを捨てた人はきっと、何か事情があったからにちがいない。あの最初の少女にしても、大きくやさしい手の人にしても、みんなとっても親切じゃないか。少女は、学校が終わったら急いで来てくれたのだろう。ありがとう。本当に嬉しい。僕らはきっと幸せに育つよ。きっと、きっと。(長岡校中二・伊丹〇○さんの作文から)


 私は今、思い出している。既に大学二年生になった白土秀樹くんが教えてくれた、やさしい人間信頼の呟きを。目に涙溜めながら中学三年の彼が書き綴った作文の、その一隅に輝いていた微笑みを。

「先生、そうですね。世の中まだまだ捨てたもんやないですね。」


 いかにも、私にはそんな科白が似つかわしい、大阪出身の元暴力学生です。四十年ほど前に釜ヶ崎のおっちゃんに聞いたその科白は、今も私の核なのです。ええか、凛太郎、世の中きだまだ捨てたもんやないでぇ。