今日も凛太郎はお留守番でした。それでなくとも歯が抜けて機嫌が悪いのに、ひとりで置いくダマとシゲは何考えとんじゃ、と言いたげな顔で見送りましたが、夕方にはすっかり機嫌が直っていました。放置したままのご飯を捨てて、新しいものを用意してやるとワウワウ言いながら平らげました。贅沢な犬め。


凛冽の汗
君たちの作文から シリーズ5 ①

  無題  枚方校中三 田中謙◯

 先生、とても言いにくいんですけど、実はオレ、地球人じゃないんです。いままで隠しててすみません。オレ、本当は月の裏側の第三クレーターの地下に住んでるんです。母星は、この銀河系のとなりの銀河の中心にあるんです。クレンソゥ星(ぼくの母星の名でーす)は、ブラックホールのように見える特殊な膜で覆われてるんです。その膜は地球にある大気みたいなもんなんですよ。まあクレンソゥ星はその膜以外、地球とそっくりなんです。

 僕が地球に来たワケは、人間を研究してくるようにと上層部からの指令があったからなんです。姿は子供の格好だけど、れっきとした大人なんですよ。今の姿は、生命維持システム搭載型アンドロイドアⅡの外見なんです。本当の姿見せたらみんなビビりますからね。

 さて、実はもう一つ先生に告白しなくてはいけないことがあります。それは僕の人間研究についてですが、なぜ僕が人間を研究しているとお思いですか。実は、人間が存在するに値する生物なのかどうか調べているんです。

 今、僕の星では、生命体破壊レーザー砲を開発中なんです。これは生命体を細胞から潰すという、とんでもない兵器(僕の星には軍隊というものはありませんが)なんです。このレーザー砲は、宇宙統一銀河連盟の指令で開発されているんです。何てたって我が星は、宇宙一の技術を持っているんですから、完成はもう間もなくです。この宇宙にとって害のあるものは消せってことで連盟で決まってしまって、いちばん最初にブラックリストに載ったのが地球の人間なんです。

 せっかく神が創りたもうた地球、宇宙でいちばん美しい地球を無茶苦茶にしてしまう人間なんぞおらん方がええっていう主張と、いや、一部だけでも良いものがおれば消すのはエグいっていう意見が連盟の総会で対立し、こりゃ困ったもんだということで僕が調査に派遣されたわけなんです。

 僕としては消したくないんですよねぇ。だけど海は汚す、陸は汚す、空まで汚す、そしていよいよ宇宙まで汚し始めてるんですよねぇ。こりゃ消されてもしゃあないワ、なんて思ったりもするんですよねぇ。近頃ようやく環境問題も真剣に考え始めたようだし、この先どうやっていくか監視の要ありと、僕は連盟に報告するつもりです。これからが楽しみです。


 こんな言い方はしたくありませんが、成績優秀な中学生ほどこのように諧謔に充ちた作文を書いてくれます。そして、溌溂とした聡明な少年です。と言うことは、溌溂としたイチビリの凛太郎も優秀な犬なのでしょうか。……まさか、ねえ。次回は、私が田中君(クレンソゥ星人)の代弁者になります。