シゲの股の間に挟まれて大人しくしている凛太郎の変な顔、初公開です。この後、頭をペチペチ叩かれてワンワン鳴きます。そして、懲りずにシゲに跳びかかっていきます。そう、跳びかかるから挟まれて変な顔になるのです。


凛冽の汗
君たちの作文から シリーズ2の①

 灰谷健次郎に『砂場の少年』という近著がある。テーマの未完了感はあるが、突きつけてくる問題提起はこれまでと変わらぬ鋭さを持っている。テレビ局に勤めていた臨時採用の教師の目を通して、中学校という現場を凝視する。言わばそれは第三者の目であり、無防備な側面に当てられたスポットライトである。組織に毒されない初心の人間の目は、小気味よいほどに真実を白日のもとに曝していく。担当した「札付きクラス」の前任者の授業を、録音したテープで聴くくだりがある。地の文を削除させていただいて、会話文だけを並べてみる。


生徒「起立」

先生「加地。何してんだ。さっさと立ちなさいよ。」「そういうことはさっさとやった方がお互い気持ちがいいでしょう

 が。なんでも、はじめが大事でしょ。気持ちよくやりましょう、気持ちよく……」

生徒「礼!」

先生「きょうは教科書で授業はやらない」「もう何回かこのクラスで授業をしているけど、一度としてまともに授業

 ができない」「君たちとぼくの気持ちは、ぴったりといっていないように思う……」「……君たちが反抗期だという

 ことくらいぼくは知っているつもりだが……」「きょうは、君たちと、このテーマでよく話し合ってみよう」「不満があ

 るらしいから、どうしたんだ、いってみろというと、おまえたちは別にィと答える。意見があるのなら堂々といえ、と

 いっても別にィだ。男らしくないぞ、あれは」「話し合いの材料に中学生ー現場からの報告という新聞の切り抜き

 を持ってきた。読んでみます……おい、こら! 加地、静かにせんか」

 こんな調子でテープは始まって、教師がアンケートの集計結果を披露し、生徒が反論したり、騒いだりする形で展開していく。生徒の反論や質問は痛快なほどに鋭い。やがて、一人の女子生徒が言う。

生徒「不満を書けと言われれば、そりゃ、先生が嫌いだとか、ひいきはやめてほしいとか書くでしょうけど、それは

 表に現れた不満の一部でしょう。清水さんが表に現れている悲しみより、もっと深いつらさといっていましたが、

 不満というのは、わたしたちのことを、学校や先生方が、ほんとうに理解してくれていないという、ま、言ったら体

 ごとの悲しみや悔しさなんでしょ。それをモルモットかなんかのように、アンケートの集約で、これこれこうだと中

 学生の実態を決めつけてしまうのは、とても哀しい。そういう大人は怠け者だと思います。」「他人の苦しみや悲

 しみに近づくことって、そんなかんたんなことじゃないでしょ。」

 生徒たちの方が冷静で、教師は半ば激昂寸前である。この作品の真の主人公というべき男子生徒が、挙手をして発言する。

生徒「……資料を用意したから、よくなかったんじゃないですか」

先生「おまえ、何いってんだ」

生徒「おまえ、何いってんだはないでしょ」

先生「おまえたちのためを思って、ぼくはやってんだ」

生徒「先生は、ぼくたちとの授業がうまくいかない原因を……」「……ぼくたちの不平不満にあるのじゃないかと思

 って、それをきこうとなさったんでしょう?」

先生「そうだ」

生徒「そうだったら、なぜ、ぼくたちの言い分を先にきいてくれなかったんですか」「先生とぼくたちのことなのに、

 どこか別の中学生の不平不満を持ってきて話をはじめるのは、ものごとをなんでもハウツー式にとらえている

 からじゃないのですか」



 続きは次回にしましょう。シゲにもそういうところがあります。凛太郎の育て方を、インターネットやハウツー本で調べては、ああでもないこうでもないと言うようなところがあります。でも、結局、ブリーダーのおじさんの指摘に痛く納得しているのです。凛太郎は生きものです。それ以前に、私たちの愛する家族なのです。