とにかく歯が抜けたのに懲りずに、暇さえあればガリガリ、ガジガジとやっています。そして、いつの間にかゴロンと横になって寝てしまいます。凛太郎のお決まりパターンです。


凛冽の汗
うたに寄せて シリーズ4の①

  夢追い人とだまされ屋

この世で一番 馬鹿な者達 夢追い人とだまされ屋

人の行列があればいつでも 

先頭に立って死ぬ 夢追い人 おきざりにされる だまされ屋

実は一番大事な人だと 気づくものもない

たとえ 気づいたとしても 君になれるか 君にできるか

君にだって眠られぬ真夜中 彼らが訪ね来る時があるだろう

(小椋 佳「夢追い人」より)


 電話の向うの、声だけは真面目である。八月九日夜、同窓会総会参加の申し込み期限は十日も前に過ぎている。

「ぼくらも出たいんですけど、もう無理ですか。ぼくと、Hと、Yと、Fと……」

懐かしい名前を並べ始めたが、先生はもう聞いてはいなかった。殊勝らしく喋っている声の背後で、へらへら馬鹿笑いをして騒いでいる連中の無礼さに、怒りがこみ上げてくる。

 期限が過ぎていようと、丁寧に心こめて、徒党など組まず一人で電話してくれた卒園生には、先生は快く応じた。申し込みの葉書を使って、手順を踏まないのはいけないなんて、野暮なことも言わない。ただ、へらへらと笑い騒ぎ、徒党を組まないと行動できないその没主体と無礼が、先生には不愉快なだけだった。

「Kに電話して、行く奴、まとめて言うとけや。」

と、総会の企画から準備まで、熱心にやってくれている京大生の名を告げて、突慳貪に電話を切った。その無礼な電話の主たちもまた京大生であった。


  落書Ⅰ

波をなくした海のように 年老いていて 舞いそびれの雪のように まだ何も知らずに

旅立てば すぐ つまずくか あるいは 疲れ果てたりするくせに


 明治の名将と讃えられ、烈婦といわれた、乃木希典、静子夫妻の素顔を描いた小説を読んでいる。日露戦争で旅順要塞を陥落させた猛将として知られる乃木は、ほんとうは軍人には向かない優柔不断な人で、そのやさしい気質を謹厳実直な軍人として振る舞い演じることで自制していた人、そして封建遺制の色濃い時代の中で実に不自由に、しかし誠実に生きた人という印象を受ける。この乃木が、明治四十年から学習院院長であったことは、別の書物で既に知っていたが、この小説でさらにその詳細を知ることができた。


  落書Ⅱ

まわりはすべて 汚く見えて ふと 少女に憧れては

汚れきった心の中の 泥沼に気づく

仲間とはしゃぎながら 一方では 雑踏の中の孤独を愛するなんて


 ドイツ留学までは放蕩の限りを尽くし、家庭を省みなかったことのある乃木が、老いて就任した学習院院長として初等科生徒におこなった訓示には、感慨深いものがある。

(抜粋)

一、口を結べ、口を開いて居るような人間は心にもしまりがない。

二、眼のつけ方に注意せよ。始終きょろきょろして居るのは心の定まらない証拠である。

三、敬礼の時は先方をよく注視すること。

六、決して贅沢をするな。贅沢ほど人を馬鹿にするものはない。

七、人力車には成るべく乗るな。家で人力車をよこしても、乗らないで帰るくらいにせよ。

八、寒中、水で顔を洗っておるか。湯で洗ってはいかん。

九、寒いときは暑いと思い、暑いときは寒いと思え。

十、破れた着物をそのまま着ているのは恥だが、つぎはぎして縫って着るのは恥ではない。むしろ誇るべきこと

 である。

十一、恥を知れ。道にはずれたことをして恥を知らないものは、禽獣に劣る。

十二、洋服や靴は大きく作れ。恰好などはかまうな。

 現代の事情には合わない項目もあり、紹介を避けたが、ここに並べたものは、現にうちの塾の園生としても充分に新鮮で、耳に痛いことばかりではなかろうか。


 前回に続いて怪獣凛太郎の写真で恐縮です。が、乃木の訓示を聞いて、しかめっ面をしている学習院初等科の生徒たちを彷彿とする写真にしたつもりです。果たして乃木の言うことが本当か、生徒たちの心情が優るか、次回をお楽しみに。