今日はお休みでした。シゲの病院行きで京都市内まで出ました。車の中でも、帰ってからのイズミヤでも、寝てばかりです。凛太郎ではなくて、寝太郎でした。だから育つのですね。ボテッと出してくる手なんか、でかくて太いです。


凛冽の汗
羽ばたけ卒園生 ②

 伏見校特進Aだった野網さんは、発表から三日後、合格報告の手紙を寄越してくれました。頷きながら読んだ箇所を、ここにも紹介します。

 国語の答案の書き方がわからず、取り組んでいたテキストは相当難しくて、やる気が失せてしまうような問題が多々ありました。それを学校の先生に何気なくボヤきますと、先生曰く、「そんな考え方、取り組み方ではあかん。もっと謙虚な気持ちを持ちなさい。そもそもね、問題に出てくる文章は、何もテストに使ってもらうために書かれたものじゃないでしょ。筆者が世間の人に是非とも訴えたいことがあって、それをわかってもらうために書かはったんでしょ。それやったら読者のぼくらがそれをしっかり読み取らなければ、筆者に対して失礼にあたる。難解なのは受験生を困らせるためじゃないんですよ。『私はこの問題を解くにあたって、こんなに格調高い文章に巡り会えました。この幸せに感謝します。』ぐらいの気持ちをもちなさい。そうすれば、自ずから見えてくるはずです。」それまで、ちょっと難しそうな文章を見ると、すぐ嫌気がさして逃げ腰になっていたのですが、その先生の言葉を信じて態度を変え、「理解できなければ筆者に失礼だ。この文章にお目にかかれたことに感謝しよう。」と思うことにしました。もうイヤ、と逃げたくなったときは、先生のおっしゃったことを口に出して言ってみて再挑戦しました。センター試験が終わって一か月間、このようにして勉強に取り組んだ結果が京大医現役合格です。効果はきっとありますから、先生も生徒さんたちに言ってあげてください。本番の国語のときも感謝の気持ちをもって解くことができましたから。

 引用が長くなりましたが、彼女の学校(京教附)の先生の教えのすばらしさ、素直に受け止めて実践した彼女のすばらしさに学んでください。彼女は、手紙の末尾をこう結んでいます。

 ……素敵な女医さんになれるよう、しっかり勉強しますね、常に謙虚な気持ちを持って……。

 小宮山展◯君もまた伏見校特Aでしたが、いつもキャアキャア言って親しげに先生にまとわりついていた野網さんや他の女の子たちとはちがって、それほどじっくりと話したこともありませんでした。分刻みの時間管理、受験間近にこそ次々と短編小説を読みこなしていた姿勢、同じクラスの北村克◯君と二人で初回から十五回最終まで、日進全園一、二位を独占していた実績、そして灘高合格。整いすぎた顔立ちもその一因だったかもしれませんが、受け持ちの生徒でありながら、何かしら近寄り難い、凄い生徒という感がありました。その彼が、発表の二日後電話をくれて、会いたいと言ってくれました。

 丹波橋の近鉄改札で待ち合わせをし、京都駅へ。京阪ホテルのコーヒーラウンジで一時間あまれ久闊を叙し、三条へ出てロイヤルホテルのラウンジでまた一時間。そして、彼の合格を祝って、ちょっぴりビールもすすめながら、夕食に一時間。実によく話しました。話すうち、食べるうちに、彼が、飾りっけのない、素直で初心な、ごくふつうの青年であることを知りました。それが先生にはとても嬉しくて、「受験」というものに携わるうちに、君たちをいつか特別視してしまっていた自分に気づかせてもらったことを、この上なくありがたく思いました。ほんとうにありがとう、小宮山君。二日後の東大入学前の身体検査に、旅費が四万円もかかるとボヤいていた彼と、先生はニコニコ上機嫌で再開を約して別れました。

 さあ、もう一週間もすれば、同窓会が目白押しです。お金がかかってしょうがないと先生もボヤきながら、九つも十もある同窓会で、高校生、大学生になった卒園生と年一回会えるこのシーズン。むしろ先生は嬉しい悲鳴の連続です。


 かつて、塾の機関誌にシリーズで掲載していた私の文章では、この後、その同窓会の模様が詳報されていますが、内輪話ですので省略します。次回からは、うたに寄せてと題したシリーズをお送りします。

 凛太郎は、今日はテキパキと事件もなく過ごして、はやケージの中でスヤスヤと寝てしまいました。また、明日の朝は大変です。それでは、おやすみなさい。