なんとなくだけど嫌な雰囲気は感じてた。
支配人のせいだけじゃなくて、なんとなく全体的に澱んできたなって。
まぁ、根本的な原因は間違いなく支配人なんですけども!
いじめられる姉御、フロントが嫌なキヨ君、清掃が嫌な大将
一つ変わった事で増えた各々の不満が、積もりに積もって爆発する日も近いんじゃないかなって
長年フロントやってきた大将としては、キヨ君にポジションを取られたことが不服だったようだ。
その上自分が清掃に回されたのだから余計だろう。
キヨ君はキヨ君で、大将の気持ちを考えればやりにくくて仕方が無かったようだし・・・
苦手なフロントをやらされてる上に、大将と気まずいなんて余計に嫌だっただろう。
そして、一番大きかったのが給料が減ってしまった事なんだと思う。
一人暮らししてる若い子の3万て結構大金だよね。(今のユイさんからしても3万は大金ですけども!)
キヨ君は田舎から出てきてて、専門学校に行くためのお金を貯めてる最中だった。
がんばれば、年内に目標資金貯まるかもって所で給料ダウン。
痛手だったんだろうなって思う。
時たまだけど、「もうムリっすわ」ってこぼしてたし・・・。
普通なら、シフト戻してくれって言えるんだろうけど
うちの支配人の中ではシフトを戻すって選択肢なんてなかった。
キヨ君が専門学校に行くために働いてるなんて事は無かったことになってて
「いずれは俺の右腕としてここの正社員になるんだ」
って、妄想がこびりついてしまってたからね。
本人にそんな気なんて一切ないのに。そうだと信じて疑わないんだ。
ここまで来ると、病気だよね。って思っちゃう。
未来ある若者になんて事を押し付けようとしてるのか!
支配人の右腕になったら破滅しかないんじゃないですかね。
ここからは私は、その場に居合わせなかったのでサクラ達から聞いた話になるが・・・
そんな時に病気で入院していたキヨ君のお父さんが急変した。
今から戻っても死に目に立ち会えるかどうかって感じの連絡が、仕事中のキヨ君にはいったのだ。
動こうとしないキヨ君の背中を、姉御とサクラが押した。
「シフトはいくらでも変わりに出るから、今すぐ実家に帰りな」
姉御がそう言っても、動こうとしない。
「そうだよ!今帰らないとダメだよ!支配人には電話して許可貰うから急ぎなよ!!」
サクラが無理やり帰らせようとして更衣室に押し込み、姉御がすぐに支配人に電話をかけた。
「・・・と言うわけなんで、キヨ君すぐに帰ってもらいたいんですよ。シフトは私とサクラでカバーするんで」
そう電話した時に、支配人はすぐにブチ切れたらしい。
「なんで、シフトをお前たちが決めるんだ!俺の店だぞ!!」
そのセリフを聞いた姉御はポカーンである。
きっとどこから突っ込んでいいのかわからなかったんだろうなって。
私だって、後からその話聞いた時に「え?」って聞き返したもの。
まず一番に思うのが、今の会話で重要なのそこじゃないよね?
まず最初にキヨ君を心配するセリフでてくるよね?
それから、キヨ君を実家に帰っていいって指示出して、そこからシフトについての何かだよね?
それにしたって、変わりに出るって言ってるんだから怒る要素どこにあるんだかわかんないんだけどさ
まぁ、姉御が理不尽に怒鳴られながらも(怒鳴られたおかげ?)キヨ君は帰るお許しが出たので、そのまま実家へと向かった。
お父様の死に目には間に合ったそうで、その後葬儀もすんだとの電話連絡が数日経ってからあった。
「キヨいつ戻ってくるかなー。やっぱアイツがいないとなー」
とか、呟いてる支配人がいたが
自分が嫌われてるなんて微塵も思ってないんだろうな
「しばらくはゆっくりするべきですよ。若い男の子にとっての父親の死って大きいですから・・・」
「俺だってキヨの事息子のように思ってるぞ。だから大丈夫だ」
え・・・?何が??
うん、考えるだけ無駄かな。
「まぁ、気持ちの整理がつくまでは、そっとしておいてあげてください」
私は支配人にそう言った。
時間は稼ぐ!逃げるなら今だよ!!キヨ君。
でも、本当は心のどこかでキヨ君は戻ってきてくれるはずって思ってた。(願ってた)
戻ってくる事は無かったけどな。
短い間だったがありがとうキヨ君。
私が入社してから2ヶ月目のできごとでした。