それから何日かは変わらぬ日々が続いていた
ルミもこうちゃんの事でなにかを言ってくる事もなかったし、こうちゃんからも何も聞かされなかった
自分から聞くのも嫌だったので、私から触れる事もなかった
毎日好きな仕事場で働いて、その後は毎日飲みに行って楽しく過ごす
家に帰ればそー君と一緒
何も不満などなかった
たまーに思い出したかのように母親から電話が来て
「落ち着いたらでいいから、ちゃんと就職しなさいよ。」
そんな事を言われていた
でも、まだそんな先の事なんて見えない
落ち着いたら・・・いったいいつ落ち着くと言うのだろうか?
この仕事がいつまでもできる物じゃないって事はよくわかっているが
まだ20歳だ・・・まだ時間はある・・・
そんな風に甘く考えてたいた
週末、仕事の休みのはずのそー君が慌しく出かける支度をしていた
「どこか行くの?」
いつもと違うスーツを着て髪の毛をセットしている
「あぁ、ちょっと知り合いの通夜にな。」
「そっか。いってらっしゃい。」
口数少なく、慌しく出かけて行く
よほど大事な人だったのだろう・・・
雰囲気からなんとなく私は察した
女の人だったりして・・・
奥さんとか・・・・?
昔、ユリエに言われた言葉を今更ながら思い出して苦笑する
お通夜から戻ってきたそー君は無言で、何かを考えているのか
思い出にでもふけっているのか・・・
私はただ隣でぼーっとお茶を飲んでいるだけだった
「今日のさ、通夜行ってきた奴ってさ。同い年で昔からの友達なんだけどな。」
「うん。」
ポツリと話し始める
「すげーイケメンでさ。デリバリーホストやってたんだけど、ものすごい売れててさ。」
「うん。」
「自分の店を余裕で持っちゃうくらいだったんだ。」
「うん。」
「デリバリーホストだからってパイプカットもして、いろんな無理難題ふっかけてくる客に全部答えてさ。もちろん、それなりの金とか詰まれてだけどさ・・・。」
「うん・・・。」
デリバリーホストの客の無理難題とは普通のホストの客のワガママとはわけが違う
SMはもちろん、スカトロも・・・なんでもありの世界だ
「結局、23歳くらいの時に体壊して、経営だけにまわってさ。」
「うん。」
「何しても性欲はわかないし、たたないし・・・。酒も肝臓やられてるから飲めないしでさ。楽しみがないって言ってたんだ。金なんて余ってるのに、使い道がないなんて笑えるよなって。」
「うん・・・。」
「ヒマつぶしに、コンビニとかでたむろしてる女子高生に、車から札束投げて・・・乗る?とか聞くと、ホイホイ乗ってくるんだぜって笑いながら言ってたんだ。」
「うん。」
「どうせ、俺は25歳くらいで死ぬから、それまでにやれる事、やりたい事、やって置きたいけど・・・仕事でやり尽くした感があって、特に何もねーんだよなって・・・。毎日どうやってヒマ潰すか考えるくらいだ。その時は、そんな事言って笑ってたのにさ。」
「うん。」
「死ぬちょっと前に会った時に・・・その時はまだ死ぬなんて一言も言ってなかったけど・・・俺は、確かに仕事やり遂げた感あったけど・・・結局、俺に何が残ったんだろうな?金以外になにが得られたんだろうな?って言ってたんだよ。」
「うん。」
「俺は答えられなかったけど・・・。デリバリーホストの頂点のような男がさ・・・。仕事やめてからそんな風に思うってどう言う事なんだろうな・・・。俺が目指してる物の先には何があるのかな・・・。」
「必死にがんばった先に何もなかったら・・・どんな感情になるんだろうな・・・。」
何もなかったら・・・・
「どう思う?」
「俺の目指す先には何があると思う?」
私に聞くな・・・
「わかんないよ。」
「そっか・・・。」
「わからないから・・・目指すんじゃないのかな・・・。わかんないから、目指したくなるんじゃないのかな・・・?」
「そっか・・・。」
こんな事しか言えなけれど・・・私には、本当にわからないんだもの・・・
「もし・・・何もなかったら・・・俺どうしたらいいんだろう・・・。」
珍しく病み気味な発言をする
そりゃ、大事な人が亡くなった後なのだから・・・当然なんだけど・・・
「もし、行き着いた先に何もなくても・・・そこに行くまでに得られる物っていっぱいあるんじゃないのかな・・・。」
私も、まだ進んでる途中だけど・・・
大事な友達いっぱいできたし・・・普通じゃ味わえない経験して来たわけだし
たとえ、それが人に自慢できることじゃないにしても・・・
自分の中ではムダじゃなかったと思いたいから
今の自分を創ってきた・・・大事な過程だったと思うから
でも、ムダじゃなくても・・・
何もなかったら・・・私は次にどう動けばいいのかわからなくなりそうだ・・・
それこそ、ちゃんと就職するのかな・・・?
目標が無くなったら・・・とりあえず、将来生きていくために働くしかないんだから・・・