今、再びの大山と山岳信仰と(その3) | 役者・吉田ケツのツケ帳

役者・吉田ケツのツケ帳

ついにアラカンの範疇に達してしまった舞台役者、吉田潔の、仕事でのアレコレ、日常感じたアレコレ……あと、公演情報なども……

奥社脇は、ちょっとした展望台兼休憩所
のようになっており、山を登って来た人達は
銘々そこで茶を飲んだり弁当を広げたりして
くつろいでいる。
伊勢原の街が一望出来る。


見えてるのは伊勢原だけではないだろうが、
案内が無いので、詳しい事は分からない。
この奥社の展望スペースから、本当の
展望台へと道が繋がっているのだが、
1.7km(だったかな?)とか書いてあるので、
ふざけるな、と思って行く事を早々に断念。
代わりにという訳でもないが、この奥社裏
から前社裏へ抜け、鳥居の手前に出る
御中道という道があるので、そこを通って
下山する事にする。
歩き始めて程なく、信仰の対象である山の山頂に
似つかわしくない、現代風の厳つい建物が
現れた。どうやらFM横浜の電波塔らしい。
現代の技術を持ってしても、こんな山頂に
これだけの設備を建てるのは、スゲェな
とは思うが、強力が石碑を担ぎ上げて
登った事に想いを致すに引き替え、
何とも風情の無い事である。

富士山から丹沢、秩父連山の山々までが
一望出来る。
霞んでいて、南アルプスまでは、流石に
判別出来なかったが、十分な景色である。

「道」と呼ぶにはなかなかアレなルート
だったが、無事に鳥居前に戻り、下山。
行きで筋力を使い果たした足には、下りの
衝撃がかなりキツイ。大きな段差では
一度毎に覚悟を決めてからでないと一歩を
踏み出せない。普通に膝に来る。
その内、踏ん張りが効かせられずに
着地と同時に膝が抜けてコケるのでは?
と言う恐怖に苛まれながら歩く。
そして、その時は突然やって来た。
登りの登山者とすれ違う為に、道のやや端
を慎重に下っていた。足元は急傾斜の岩だ。
一歩踏み出し、着地した瞬間、足元の
砂礫がズルッと滑り、当然私も後ろに
バランスを崩す。咄嗟に手を着いたので、
どこも打ったりはしなかったが、着いた手が
岩と岩の隙間に挟まるような形になり、指が
逆方向にサバ折りされるような形になった。
その時、耳に「パキッ」というような音が
響いて来たような気もする。解らない。
気のせいかも知れないが、その瞬間、当然
指は痛かった。しかしそうは言っても
曲げられるし、大丈夫だろうと思っていた。
暫くすると痛みもやや引いたし。
帰ってから湿布したが、今改めて見てみると
ほんのり内出血してるし、やや腫れている。
動きも昨日に比べてよくない。
うぅうんんん???これはヤバイ奴?
近々に一度病院で診て貰った方が良さそうだ。

と、まぁそんな事は有ったが、何とか無事に
下社まで降りて来た。時間は11:20頃。
以前、参集殿で飲んだゆず香るエールは、
こんな時に飲んだらさぞ美味かろう。
と期待に胸踊らせて近寄ってみると、
どうやらやっていないらしい。
時間か?早いのか?え?11:30で?
まあでもやっていない物は仕方ない。
更に下って、下の茶屋(「おでん」「うどん」
等と書かれたタペストリーで屋号が隠れて
見えないのだが、多分さくらやだと思う)で
缶ビールを買う。
席に座って飲んでいると、
「これおつまみにどうぞ」と、サービスで
大山名物(らしい)のきゃらぶきを出してくれた。
しょっぱくて、汗をかいた身体に最高だ!
さて、何とか汗も引いたので、昼食を
予約した店に向かおう。
ケーブルカーで下る。
前は気付かなかったが職員はチロリアンハット
みたいなのを被ってるのね。可愛い。
新緑の景色も、紅葉の時とはまた違った、
いい風情があるもんだね。
 
大山ケーブル駅まで戻って来た。
ここで(その1)で書いた通り、再び女坂を
少し登り、七不思議その1「弘法の水」を
探して、しばしウロウロ。
やっと見付けてケーブルカーの駅まで戻り、
そこからコマ参道を下って行く。

山頂からの下りで、せっかく箱根のダメージ
から回復していた膝とふくらはぎが、また
大ダメージを喰らっている。コマ参道の
なだらかな階段ですら、降りるのがしんどい。
時々ストレッチして、縮んで固まろうとする
ふくらはぎを伸ばしながら下る。
大山ケーブルバス停から、更に少し
坂道を下った所に、昼飯の店、そして
大山豆腐の店が二軒密集して建っている。
手の込んだ料理だけではなく、帰ってから
豆腐その物を堪能しようと、豆腐を買い漁る。
この話は後程。
取り敢えず昼飯だ。
予約した東學坊さんへ。
所謂、宿坊だ。江戸の頃、お山に来た人達は
こういった宿坊に泊まったのであろう。
食堂の一番奥、窓際の一番いい席に通された。
山の木々と、川を渡る橋の景色がいい。
実はコチラ、食事をすると、本来1000円
掛かる入浴がタダになるサービスがある。
到着した段階で既にまた汗みどろなので、
勿論、風呂も頂くが、先ずは食事を。
料理4品とご飯、デザートが付く小町膳なる
お手頃な方の会席コースを予約してあった。
ここでもう一杯ビール。
先付はグリンピースとごまの二色豆腐。
八寸は左上から時計回りに杏の白和え、
カルパッチョ(帆立、トマト、キウィ)、
 山吹豆腐(豆腐と野菜を固めた物に卵黄そぼろを
まぶした一品)、おからのサラダ、中央が
豆腐の味噌漬。
季節鉢の冷奴、揚物(オクラと獅子唐の天麩羅、
海老しんじょアラレ衣)、アサリご飯とみそ汁、
デザートは杏仁豆腐。
どれも品が良く、しっかり美味い。
何なら食後のほうじ茶まで美味い。
流石にいいお値段するだけの事はある。
山吹豆腐と、とろけるような冷奴は特に
美味かったし、杏の白和えも面白い。
食べ終わったのが13:30位だったか。
内湯ならいつでも入れるが露天は男女一時間
交代だそうで、次は2時から男湯になる。
せっかくなので、待たせて貰おう。
2時、タオルを借りて湯に案内してもらう。
食堂から見えた橋を渡る。山の木々の中に
埋もれるようにして露天風呂の建屋が有った。
実に気持ちがいい。入浴と森林浴が同時に
出来る贅沢が堪らない。
ゆったりと30分近くも湯を堪能して上がった。

後は帰るだけ。
食事の前に豆腐を買った店と、帰ってから
それを食った感想を述べておこう。

小出とうふ店
パック詰めではなく、湧水に泳がせてある
でっかい豆腐を、その場で切り分けてパックに
入れてくれる。絹と厚揚げを買ってみた。
絹は割りとしっかりめ。木綿かと思うような
しっかりした弾力がある。パックに詰めて
夜までそのままの状態にすると、豆腐に
パックの形がしっかりと付く。それ程の弾力と
柔軟な柔らかさを併せ持っている。
豆の味がめちゃめちゃ濃く、豆腐から染み出た
水を飲むだけで豆乳かと思う程、豆の味が濃い。
厚揚げは酒のアテに、焼いて薬味タップリ乗せ
醤油で頂いたので、正直そこまで他との違いは
分からなかったが、美味しい厚揚げであった
事だけは間違いない。焼いた皮目の芳ばしさが
とても良かった。

湧水工房
恐らく、東學坊さんで冷奴に使っていたのは、
真正面に位置する、コチラの豆腐。
絹の他は汲み上げ豆腐的なのしかないよう
なので、絹を買う。
こちらは対照的にとろける程柔らかい。
箸で摘まむ事すら困難だろうと思われる。
クリームのような滑らかな舌触りと豆の甘さを
堪能できる。これは他では味わった事の無い味。

山の上のこの二軒の他、大山豆腐を代表する
と言っていい店が街中にもう二軒あるらしい。
ところがその内一軒、駅向こうにある
米谷豆腐店は今年4月から実質閉店と言って
いい程、経営を縮小してしまい、土曜日しか
営業していないらしい。
この日は金曜日。諦めるしかない。
もう一軒小宮豆腐店は、バスを途中下車
すれば、ほぼ道すがらだ。これは立ち寄る
しかない。市光前というバス停で降りて
15分程歩くと、住宅街のような一角に、
それらしき建物が見えて来た。
が、何か様子がおかしい。周りに足場が
組まれ、防音シートが張られている。
改修工事の真っ只中のようだ。
それでも店舗は営業しているのは良くある事。
引戸に手を掛け、グッと引くも戸は無情に
グッと押し返して来る。
どうやらやっていないようだ。
改修工事のせいなのか、売り切れ閉店なのか
今一つ定かではないが、この時確か15時過ぎ頃。
閉店時間は17時となっているので、売り切れ
閉店にはいささか早過ぎる気がする。
まあ、分からんが………
そんな訳で、残念ながら大山豆腐は、
名店四軒中、二軒しか試す事が叶わなかった。

かくして、大山山頂アタック兼、七不思議
全部見付けろクエスト兼、大山豆腐堪能ツアーは
何とか終える事が出来た。

いつまでもサボって遊んでないで、
そろそろ社会生活に戻らなければな………