美月星夜の香水物語~第12夜・ティーフォートゥー(ラルチザン・パルファム) | 熱帯性恋気圧 by 美月星夜 aka ケンケン

美月星夜の香水物語~第12夜・ティーフォートゥー(ラルチザン・パルファム)

 香水売り場などで、好きな系統の香りは?と聞かれて、
まっさきに答えるのが「スパイス系」か「オリエンタル系」。
特にぼくが好きなのがシナモンの香り。
とにかく、シナモンを体中にふりかけたいくらいシナモンが好き。
あのピリッとした辛さと甘さを感じるすっきりとした香りは子どもの頃から大好きだった。
香水の中にも、そういうシナモン系のものは確かにあることはある。
でも、今まで、かすかにそういう香りを感じることはあっても、
実はシナモンって、個性的でありながら、他の香りと混ざると、
少し香りが奥に引っ込んでしまうような印象。
単体だとあんなに際だつ香りなのに…。

そんな中、とある7月のある日。
ふと目に留まったのが以前どこかでもらったラルチザン・パルファムでもらったカタログ。
そこに書かれていたある香水の文章に惹かれた。

「スモークティーにシナモン、ハチミツ、バニラがまろやかにとけていく薫り高きティータイム。スパイシーなアクセントが大人だけの贅沢な時間へと誘います」

もう、これは、ケンケン、買いなさい!あんたのための香水よ!
と呼びかけているようなものではないですか!
その紹介文を読んだとたん、ぼくの鼻は一気に妄想状態に突入。
シナモンティーだとかチャイだとかの香りを体にまとったらどんな感じなんだろうとか。
スパイシーな香りをいつも感じられたら素敵だろうなとか。
そして、その翌日、まずはいつも行く阪急Mens館の香水売り場へ。
鼻息あらく、「ラルチザンのTea For Twoをください!」
それに対する店員さんのひとことがぼくを失意のどん底に。
「今年のあたまに廃盤になってしまって、在庫がないんです」
目の前まっくら。
ぼくの妄想が暴走していただけに、その行き場がなくなり、その場にへたり込みそうになった。
しかも、廃盤だっつうのに、
なぜかその店員さんは「お試しになりますか?」なんていう甘い禁断の言葉を投げかけてくる。
もうこうなったら、やけっぱち。
「ふりかけてちょうだい!!!!!」と言わんばかりの勢いで試させてもらった。
両腕にツープッシュ。
ふんわりとスパイシーで、スモーキーな香りが漂う。
ぼくが妄想していた香りよりも、実は甘さは控えめではあったけれども。
でも、ぼくが愛する香りに非常に近しい感じ。
「そのサンプルでも良いからちょうだい!」と言いたかったくらい。
で、不憫に思ったのか、店員さんがいろいろと調べてくれたけど、
やはりラルチザンの日本の本社にも取り扱いはないとのこと。
ぼくは、仕方なく、売り場を後にしたんだけれども、
それでもどうしてもあきらめきれず、
わざわざ自分でラルチザンの日本の会社に自分で電話をして
(どうしても自分の耳で確かめずにはいられなかった!)
やはり、もう日本中どこを探しても在庫はないということが判明。

それからの一週間、失意の中を漂ってました。
これ、本当に比喩表現ではなく。
自分でチャイを入れて、その中に顔を突っ込んで窒息死したいくらいの気持ち。
(なんだか、今回の香水物語はだいぶ過激ですね…汗)

でも、転んでもタダじゃ起きないケンケン。
ネットでとにかく調べまくった。
確かに、どのサイトを見ても「Tea For Two」は廃盤という情報しかない。
フランス本国のサイトにも載っていないぐらいだし。

でもね、ひとつだけあるお店に在庫をみつけてしまったのです。
これはひょっとしたらあんまり公にしてはいけない、裏技的な方法なのかもしれませんが、
香水の量り売りをしているところをみつけたのです。
そこでどうやら在庫がある模様。
で、問い合わせてみたら、45mlぐらいなら量り売りOKとのこと。
もう、これは本当にラストのチャンスだと思って、思わず購入しちゃったよ。
正規に100mlを買うよりも高くついてしまったけれども。
背に腹は代えられない。
でもねぇ。
たったの45mlでラストだと思うと、全然使うことができず。
たまぁに、気が向いた時に寝る前にふりかけるぐらいだった。
なんとか、それで自分の妄想に歯止めをかけることはできたのだけれども。
それでも、何となく、この香りだけはあきらめきれなかった。
仲良くなったラルチザンのショップの店長さんにも何度も何度もしつこいぐらいに
「Tea For Two入荷したら教えてくださいね!!!!!!」と念を押し、
彼女はぼくの顔を見るたびに「Tea For Twoですね…」と言ってくれるほど(笑)。

そして、11月のとある日、
何気なくフランス本国のラルチザンのHPを見ていたぼくの目に飛び込んできたのが「Tea For Two」の文字。
びっくり。
何度も何度も確認してしまったぐらい。
あれ?再販されたの?
もう嬉しくて嬉しくて、これはひょっとしたら日本でも再販されるかもしれないと思った。
そうしたら、2013年の暮れも押し迫ったある日、店頭入荷のお知らせが飛び込んできた。
もう、これはね、ぼくの強い念が呼び寄せたとしか思えない。
妄想も思い続けりゃリアルと化す(by ケンケン)
という一句を作ってしまった!
さっそく、仕事帰りに表参道のお店へ。
すでに、「Tea For Two」コーナーができていて、
ぼくは店長さんへの挨拶もそこそこに
そのコーナーへ突進。
ほれぼれと、その瓶と箱を眺めたのであります。
ぼくが購入した「Tea For Two」は、量り売りだったために、
味気のないアトマイザーに入っていたけれども、
やっぱり香水というのは、瓶と箱のデザインも重要。
特にぼくはラルチザンのシンプルなボトルデザインが大好き。
シンプルなのに、七角形のボトルにはちゃんと意味があるところも魅力的。
(なんでも、ヨーロッパでは7というのは縁起の良い数字なんですって!)
でね、ラルチザンはさらにラベルの色などにもこだわりが。
この「Tea For Two」もチャイをイメージした薄茶色のラベル。
これも調香師が考えるのだとか。

さて、この「Tea For Two」の調香師はぼくの大好きなオリビエ・ジャコベッティ。
彼女はこの他に、「サフラントゥルブラン」とかラルチザンのアイコンでもある「プルミエフィグエ(青いイチジク)」などを生み出した天才調香師。
そして、店長さんにうかがったら、
今でこそ、他のブランドでも茶葉から抽出した香りが出て有名になったけれども、
実は、彼女が世界で始めて茶葉に着目をして作ったのがこの「Tea For Two」なのだとか。
もう、そんなこと聞いちゃうと、ますます興味を持ってしまうではないですか!
で、余談ではあるけれども、
イチジクを香水の世界に持ち込んだのもオリビエ・ジャコベッティ。
こういう発想ができるのは、さすがフランス人。

閑話休題。
さっそく、「Tea For Two」をムエットでお試し。
もう知っている香りではあったけれども、表参道のブティックで改めてかぐと新鮮。
一瞬にしてそこはティーサロン。
でもね、高級なティーサロンというのではなく、もっと陰のある、
なんていうのかなぁ。アジアの片隅にあるような小さなサロン。
ラプサンスーチョンという紅茶があって、
この紅茶はとても独特。
ぼくはいつも「正露丸の香り」言っていて、好き嫌いが別れる香りではあるんだけれども、
それを彷彿とさせる。
といっても、もちろん、「Tea For Two」は正露丸の香りはしないからご安心を(笑)。
むしろね、キーマン紅茶とか、チャイに似てるかな。
まず香ってくるのはシナモンの香り。
これは、本当に素晴らしいトップの香りです。
甘くて、スパイシーという、ぼくが愛する香り。
この最初の衝撃はどうかみなさんに体験していただきたい。
「わ!これおいしそう!」って思うはず。
それから少しずつスモーキーな香りに変化していく。
そして、それが非常に優しくてあたたかみがある。
日本語でどうやって表現すれば良いのかと考えると、
「ほっこり」という言葉がぴったりなんじゃないかと。
寒い日に家に帰り、あたたかい紅茶を飲むとほっとするじゃないですか。
まさにその感覚を身にまとっているような、そんな感じ。
で、ここがラルチザンのすごいところなのだけど、とにかく香りの変化が楽しい。
この「Tea For Two」にしても、最初はシナモンスパイスの香りで楽しませてくれるんだけど、
その後、だんだんとあたたかみのある香りに変化してくる。
で、そういった変化のベースにあるものは、非常に繊細だけど斬新なもの。
さらに、、どの香水にも共通しているのは、どこか東洋的なお香の香りを残しているところ。
以前会社の人に「ケンケンさん、いつもお香を焚きしめているの?」と言われたほど。
全然香水っぽくないのです。
普通の日本人がイメージする香水というのは、
シャネルだとか、CKだとか、ディオールといった、
いわゆるブランド香水。
それらの香水の中にももちろん、たくさんの名香と呼ばれるものがあるけれども、
えてして、香りが強い。
これはそのほとんどが人口香料で作られているから。
ところが、ラルチザンの場合は、その大半が高級な天然香料からなっている。
もちろん、中には人工的に作り出さなくてはならないものもあるけれども、
ほとんどが天然成分。
だから、押しつけがましく感じないのである。
ただ、ひとつだけ問題があって、すぐに香りが飛ぶ。
だいたいぼくは(ものにもよるけれども)朝、体に10プッシュぐらいするのですが、
たいてい昼にはほとんど香らない。
だから、昼休みの間にもう一度付け直し、夕方にもう一度つける。
逆に言えば、付け直しをしても、強くないので、付け直しをしやすいブランドなのかもしれない。
この「Tea For Two」もだいたい持続時間は3時間ぐらい。
しかも、ぼくはあまりにも好きだから、20プッシュぐらいしてしまう。
なので、今回日本には200本限定で入ってきて、おそらくこれがラストになるというので、
ストック用としても数本ゲット。
これはどうしてもぼくにとっては欠かせない香りだから。
季節的には秋~冬にかけてかなという感じがする。
期間限定でこの香りを楽しむっていうのも良いかも。
残念なのは、今回の発売、100mlがなくて50mlのみというところ。
どうしてもそっちの方が割高になってしまうから。
ま、それでもぼくは好きだから購入してしまうのだけれども…(汗)+(涙)。

ところで、この日、ぼくはもう一本香水を買い、さらにアロマキャンドルも購入したのですが、
このことについてはまたじっくりとまとめたいと思います。

ともあれ、ラルチザン・パルファムの「Tea For Two」50mlは現在表参道店とオンラインで販売中です。
興味のある方はぜひおためしください!





ラルチザン・パルファム公式サイト
http://www.artisanparfumeur.jp/index.html