よく、自分を好きになりなさいとか、自分を愛しなさいって言うけれど・・・。

私は長い間、どうやったら自分を好きになれるのか、愛せるのか、わからなかった。

 

 

思春期の頃は、自分が大嫌いだった。

自分という人間が、この世からいなくなればいいと思っていた。

 

20代から30代の頃も、そんな感じだった。

自分が嫌いで嫌いで、たまらなかった。

 

肥大してゆく自意識を持て余して、何者かになろうとして、もがいていた。

 

 

そんな自分大嫌いの時代から、ここ10年くらいは脱していたけれど、それでもまだ「自分を好き」というところまではいかなかった。

 

「好きでも嫌いでもない」という感覚。

 

自分は自分なのだから、好きも嫌いもないじゃないか、という感覚。

 

自分では自分の顔が見えないように。

 

思うに、「自分を好き」という感覚は、ある程度自分を客観視できた時に思えることなんじゃないだろうか。

 

 

ところが最近、ああ、自分を好きってこういう感じなんだ・・・ということがわかってきた。

 

そのきっかけをくれたのは、歌だった。

 

 

私はずっと、歌を歌いながら、自分の歌に納得がいかなかった。

 

自分に自信が持てなくて、人から散々、もっと自信を持てばいいのにと言われ続けて来たけれど、どうしたらいいのかわからなかった。

 

だけど、自分の曲を作って、それを歌っているうちに、ゆっくりと何かが解けていくように、気がついたら、自分のことが好きになっていた。

 

 

私は、いつもいつも、歌うことを通して人生を学んでいる。

 

そして、歌を通して、自分の人生を生きている。

 

 

 

ずっと引け目に感じていたことがある。

 

ある天才的なピアニストの方の言葉。

「音楽を自己表現の道具にしない」

 

音楽に対する、純粋な畏れと深い敬意。

人生をかけて、音楽と向き合って来た厳しさ。

 

「音楽を自己表現の道具にしない」という言葉の奥にある重さに、圧倒された。

 

 

それに比べて、自分はなんてチャライんだろう。

 

生きることの全てを、音楽に注いで、音楽と向き合っていくような真摯さが、私にはない。

何も考えてない。

ただ歌いたいから歌う、能天気な自分に、引け目を感じた。

 

 

だけど最近、人にはそれぞれ、音楽に対する向き合い方があってよいのだと思えるようになった。

 

どれが正しいとか、どれがいいとかではなく、それでいいのだ。

 


 

そんな風に思えるようになったのも、やっぱり、自分で自分の歌を歌うようになってからかもしれない。

 

自分の内側から湧き出て来た言葉とメロディー。

 

それを聴いてくれた人が、「よかったよ」と言ってくれる喜び。

 

そういう経験が、何よりも自分に自信を持たせてくれたんだと思う。

 

 

そして気がついたら、いつの間にか私は、自分のことが好きだと思えるようになっていた。

 

好きっていうと、ちょっと照れくさいな。

 

好きっていうより、自分で自分のことを受け入れられるようになったってことかな。

 

ダメな自分に、OKが出せるようになった。

 

 

失敗したり、自分を責めることもあるけれど、人は欠点があるからこそ愛おしいと思えるようになった。

 

完璧な人間なんていない。

 

誰にだって欠点はある。

 

欠点は個性だ。

 

そう思えば、すべての人は愛おしい存在になる。