東中野のポレポレ座で、映画「作兵衛さんと日本を掘る」を見て来ました。
尊敬するピアニストの黒田京子さん、そしてバイオリニストの喜多直毅さんが音楽を担当されているということで、ぜひ見に行こうと思っていたのですが、なかなか行くことが出来なくて・・・。
ありがたいことに、ロングラン上映となって、無事見ることが出来ました。
最初に映画の予告編を見たとき、作兵衛さんの絵のインパクトがあまりにも強烈でした。
作兵衛さんの記録画と日記は、2011年、日本初のユネスコ世界記憶遺産に認定されたそうです。
名もない一人の元炭鉱夫が残したものが、世界遺産として認定される。
これは、すごい出来事ですよね。
絵画をきちんと学んだことのある人から見たら、稚拙な絵なのです。
だけど、どんなに上手いデッサンが描けたとしても、作兵衛さんの絵に宿る・・・可笑しみと言ったらいいのか、それには叶わない気がします。
描かれているのは、貧しい時代の、その中でも、過酷な労働を強いられた、本当に貧しい人々の暮らし。
「負の遺産」というべき記録。
けれどそこに描かれている絵を見て私が感じたのは、辛さや貧しさよりも、人間が生きて行くことのたくましさ、強さでした。
狭くて暗い炭鉱の中で、石炭を掘って運ぶ作業は、想像を絶する過酷さだったと思います。
けれど、そこに描かれている人たちは、その人生を恨むのではなく、受け入れて、ただ淡々と、己の仕事に誇りを持って生きている。
そんな風に感じました。
作兵衛さんは、60歳半ばにして、炭鉱の絵を描き始めたそうです。
「片言まじりで恥ずかしいのもかえりみず、絵や文にしたのは、数百年後の子孫のため明治、大正、昭和のヤマはこうだったといっておきたかったからです」
作兵衛さんの穏やかで優しげな写真を見ていると、自らの手で描いて、記録に残していくことは、決して恨み節ではなかったのだと思います。
ただ、自分の体験を残しておきたい、伝えたいという無垢な思い、それだけだったのだと思います。
だから・・・それがピュアであるがゆえに、見る人の心に、不思議なインパクトと共に、すーっと入っていく。
かつて、炭鉱で働いている、というだけで侮蔑の対象になった時代があった。
酷使される、貧しい生活の人々がいた。
「表面上は変わったように見えて、今の時代も、その構造は変わらないのではないか?」
これが、作兵衛さんの問いかけでもあり、熊谷監督の問いかけでもありました。
ここ最近の活動を通して、ハッキリと感じたのですが、
私がやりたいことはつまり、
音楽を通して、愛と豊かさの循環を広めていきたい
ということ。
人間にとって、本当の豊かさとは、お金持ちになることではなくて、究極的には
お金の価値観がいらなくなる社会ではないか、と思っています。
すべての人が、自分を愛するように他人を愛し、わかちあう心を持っていたら、お金は必要がなくなりますよね。
いつかそんな社会がやってくるといいなと思っているのです。
自分が生きているうちには無理だとしても・・・。
自分の意識が変われば、世界は違った目で見えてくる。
映画の上映後、熊谷監督と、ジャーナリストの江川紹子さんのトークショーがありました。
最後に、一緒に写真を撮っていただきました。
たくさんの方に、この映画を見て欲しいという監督の想いが、どうか伝わりますように!