擦り切れた磁気テープ

大切な何かを失くした気がして

どこか遠くに忘れた気がして

部屋の隅から埃のかぶったビデオテープを引っ張り出した。

“カタン”と軽い音を立て、それはデッキへと吸い込まれていく


映し出された映像に、僕は少し落胆した。




高校生の頃、文字通り｢擦り切れる程｣観たその映像は

言葉のとうり本当に擦り切れていて

所々ノイズが入り、映像が途切れる


どれだけ憧れただろうか。

初めて買ったエレキギターが“ストラト”だったのはアナタのせいだ

僕のホワイトレディに未だにアームが付いてるのもアナタのせいだ

外国人の友達を作って、必死で英語を覚えたのもアナタのせいだ

なのに

久しぶりに逢いたかったアナタの姿は

ノイズに邪魔されてよく見えない


僕の大部分を形成してくれた憧れの人。

擦り切れた磁気テープは何も映さないけど

スピーカーから流れ出る音はあの頃のままだった


そりゃそうか

ＣＤもＬＩＶＥも

その最高の瞬間を切り取った只の“記録”だと

たしかアナタは言ってたっけ

アナタが好きなんだと

今よりもっと胸をはって言えるように

よっしゃ

いっちょ頑張りますか

僕のヒーロー