大禅師文子の事件簿 第41話「大山の泉の怪」 | 大禅師文子Official Blog Turn Me On~私を熱くさせて~

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 大山はヤマブキが満開で、山全体が染められていた。

大禅師文子は山頂に着いてから、
「お水がない、お水、お水…」
とペットボトルを持ち、湧き水を探してウロウロ歩き回っていた。
すると「お団子はいらんかね?おでんもあるよ。」と峠の茶店から、腰の曲がったおばあさんがニコニコしながら出て来た。
茶店を覗くと、ブーミンとハセクラとチーちゃんが既に、座っておでんを食べていた。大禅師文子は
「ちょっと、あなた達!何をしているの?湧き水を飲めばお肌がスベスベになるのよ!ブーミンのケガだって治るかもしれないのよ!早く一緒に探して頂戴!!」
すると突然、後ろから何かにお尻を突つかれた。
振り向くと、ロープウェイから見た鹿が、大禅師文子のお尻を角で突いている。
「あら、さっきのイケメンの鹿さんじゃない!私のお尻に興味があるの?」
するとまたおばあさんが、
「違う、違う。その鹿はエサを欲しがっているだけだよ。鹿に好かれたいならこのビスケットをあげるといいよ。」と言った。
大禅師文子は「本当?!」と喜んでビスケットを受け取り、鹿にあげた。
鹿は嬉しそうに食べて、大禅師文子に頭を擦り付けて来た。大禅師文子は
「私の魅力が鹿さんに伝わったみたいね!」
と言いながら、そのビスケットを鹿と一緒に食べていた。すると今度はおばあさんが、
「はい、50円頂きます!あなたも珍しい人ね、鹿の餌をそんなに美味しそうに食べている人は初めて見たわぁ。」
鹿のエサ用のビスケットだった。大禅師文子は
「ハセクラ!おばあさんに50円払っといて!このビスケットはダイエットにもいいのよ、でしょ!」
と言いながら鹿と戯れていた。たちまち他の鹿たちもゾロゾロ寄ってきて、大禅師文子の周りを一斉に囲んだ。
「コラ、ちょっと!突つくのはやめなさい!ほらあの人ががエサをくれるから、あっちに行くのよ!」
と言って、ハセクラを指差した。そして茶店から出て来たハセクラにビスケットを全部渡した。ハセクラは動物は苦手で、しかも先端恐怖症だった。鹿の角に突つかれると、気を失い倒れてしまった。大禅師文子は
「あらあら、可愛そうに…」
と言いながら、峠の茶店のおばあさんから貰ったコップの水をハセクラにかけた。
「!?」
一同は驚き、目を疑った。
「何をするの!!」
しかし次の瞬間、ハセクラは何もなかったようにすくっと立ち上がり、
「この水‥‥美味しい。」
と言った。大禅師文子は
「もしかして、そのお水は…」
峠の茶店のおばあさんは
「護摩屋敷の名水じゃよ。」
「ゴマ?!」
「1杯飲めば10年、2杯飲めば20年、3杯飲めば死ぬまで若返るという、神の水じゃよ。あたしゃもこれで長生きし…」
「それ私にください!!その水を探しにここまで来たの!」
大禅師文子は峠の茶店のおばあさんが話を続けようとしているのを無視し、目を輝かせて、「何処にそのゴマの水はあるの?」と聞いている。
「だったら、ご自分でお汲みになりなさい。」
峠の茶店のおばあさんは呆れていたが、笑顔で湧き水のある場所を教えてくれた。

大禅師文子と一行は、神社の脇道を下り湧き水のある泉に辿り着いた。
その泉の所では、さとなか唯さんがミニライブをしていて、200人くらいのファンが集まっていた。
大禅師文子は「何でこんなに大勢の人がここまで来ているの?」
ブーミンは「それは、さとなか唯さんが人気があるからでしょ。」
と言った。
大禅師文子は「でも、全員がこんなに険しい山を登ってきたの?」
と聞いた。コブラのチーちゃんが
「大禅師さん、全員車で来ているんだよ。だって大きなポリバケツをいくつも持っているし、あそこに駐車場があるから。」
「え!何?駐車場?」
さとなか唯さんのファンは、車ですぐ近くまで来ていた。ミニライブが終わると大きなポリタンクを持って、護摩屋敷の名水を汲むため、泉に列を成して並んでいた。
ブーミンはハセクラにこっそり言った。
「山頂まで登らなくてもよかったんだね。」
「…」
ハセクラは無言だった。そしてもっと重要な事に気がついた。
水を汲んで持ち帰る容器を、ペットボトル1本しか持っていない事に。。。

大禅師文子一行は無言のまま帰路に着いた。
麻布のマンションに着くと、大禅師文子は何事もなかったように、Facebookでさとなか唯さん宛にメッセージを送った。
「大山のミニライブは最高でした。それと大山の泉を教えてくれてありがとう!」
するとすぐに返事が返って来た。
「私が書いていたのは、神奈川県の大山(おおやま)じゃなくて、鳥取県の大山(だいせん)のことだよ。鳥取県の大山は美味しい水なので、お豆腐が最高です!」
「…」
大禅師文子は汲んで来たペットボトルの水を一気に飲み干し、リビングにいる皆に
「次は鳥取県に行くよ!」
と叫んでベッドに飛び込んだ。
「死ぬまで若返る…」
こうして今日も、麻布の夜は更けていくのであった。

来週に続く…