ブリティッシュインベイジョンと呼ばれる、英国から米国へ渡った文化の余波はここ日本にまでも届き、ブルースに根差したロック、所謂ブルースロックにはまり込んでいく一方で、当然米国のバンドの音も届いては来る。
アメリカ南部の熱気や西海岸辺りの風に乗ってこりゃカッコいい!と思わせるバンドも多数存在した。

「英国人のブルース好き」とはよく言われる言葉だが、(私の中では)そもそもブルースは米国南部発祥の音楽であり、その地にブルースに影響を受けたミュージシャンがいない訳がない。


The Allman Brothers Band



ロックと言われるジャンルにおいて、その筆頭とも言えるのがデュアンオールマン率いる "The Allman Brothers Band"だろう。
コリシディンという風邪薬の空き瓶を左手の薬指に嵌め、(薬の瓶だけに) 弦の上を縦横無尽にスライドさせるプレイは正にその異名" Sky-dog"に相応しい。



彼らの「The Allman Brothers at Fillmore East 」が、ロックにおけるライブアルバムの最高峰であることは疑いようがない。
淀むことのない即興演奏のうねりは聴く者の耳朶を打ち、感覚を叩き、何処かへの扉を開けてくれる。
何度擬似トリップしたことか。

しかし10分、いや20分を超える楽曲などあまりウケないのだろうなとも思う。

特に現代では。
気持ちは分からなくもないが聴かないのは本当に勿体ないことである。



Grateful Dead


ブルースの香りをそれほど纏う訳ではないが、オールマンブラザーズと同じように即興演奏のライブバンドといえばグレイトフルデッドがいる。

60年代後半からのフラワームーブメントやヒッピー文化、カウンターカルチャーを具現化したバンドのイメージで、まぁ、それはもう見るからに「そう」てある。

しかし世界で最もライブを行った回数の多い(2300回以上)バンドである彼らも、やはり長尺の即興演奏が話題となった。
また、ライブの撮影・録音を聴衆に許可していたというのも素晴らしい。

即興演奏がメインで2度と同じフレーズは出ないだろうから寧ろ録っておいておいて!ぐらいのことだったのだろうか。


このバンドもジェリーガルシアというギタリストのカリスマが炸裂している。




当時日本でそれほど人気があった訳ではなく、私自身殆ど未聴であったが、後年その演奏に触れてその素晴らしさを再認識したのであった。


 

Lettle Feat



そして西海岸ロスアンジェルスを拠点に活動を始めたリトルフィートも忘れられない。
というかワタクシはめちゃくちゃ好きなバンドである。

ニューオリンズジャズ、ブルース、カントリーなどアメリカンルーツミュージックと呼ばれるものを上手く取り込み、作品に落とし込んで行くプロダクトは当時、新鮮であったし、フロントマンのローウェルジョージ(G. Vo)の弾くスライドギターもブルースに於けるそれとはかなり違うもので大変興味深く、またそこがこのバンド最大の特徴と言えるだろう。
アルバム"Dixie Chicken "の輸入盤を手に入れた時は小躍りしたことを思い出す。
(アメリカ本国で話題になっていたことは情報で知っていて、当時は日本盤が出るまでに相当のタイムラグがあったと記憶している。だが、本当に小躍った訳ではない 💃🕺🏼)

彼らの出す楽曲はヒットチャートを大股で駆け上がるようなことはなかったし、それどころかそこの常連ではない。
しかし音作りに拘るリトルフィートの音楽は大いなる魅力に溢れ、事実、多くのプロ有名ミュージシャンが彼らのファンであることを公言していて「ミュージシャンズミュージシャン」とも言われていた。
売れている音楽が優れている訳ではないと心底教えてくれたバンドである。

その後フロントマンのローウェルジョージは滞在先のホテルで心不全により34歳の時に亡くなってしまう。

しかし色気のある人だった。




リトルフィートはアルバムジャケットが秀逸で、ネオンパーク氏というアーティストの作品を多く採用していた。
幾つか紹介しておこう。

私がアルバムは中身とジャケット合わせて作品と思う所以である。

"Sailin' Shoes"



"Dixie Chicken"



"Feats Don't Fail Me Now" (通称 : アメイジング)



"Waiting For Columbus"



"Down On The Farm"



そしてローウェルジョージのソロ作
"I'll Eat It Here"



「世に出るのが早過ぎた」という言葉がある。
彼らもそう言われて然るべき音楽集団であったと思う。

以上の3バンド共に通ずるものはギタリストのカリスマ性であり、また彼らなりにジャズを解釈し、その薄衣を纏っているところではないか。
しかし、そう感じるのは現在の、ジャズを好むようになった私だからだと思う。

けれども私自身がジャズの門を押し開けるのはもう少し後のことだ。