世界には多くの文化があり、風習がある。

アラブと呼ばれる、アラビア半島やヨーロッパ側ではない地中海沿岸部に住む人々に共通した、又は多くが口にする言葉がある。

それはアラブのIBMといわれるものだ。

断っておくが、全てのアラブ人がそうするというわけではない。
あくまでもそういった傾向があり、一定期間その社会にいた感覚と経験から(と言っても旅の途中に滞在しただけである)「ああ、なるほどな」と私が感じたのもまた事実である。

勿論、諸外国の人々が日本に対して「○○の傾向がある」と感じることもあるだろう。
それを前提の上で書いている。
つまり悪口ではないというエクスキューズだ。

"IBM"の意味は其々その頭文字をとっている。

I は "インシャアッラー"
意味は「神の思し召しがあれば」。

「○○しといてね。」
「インシャアッラー」

物事ができるか否かは私の責任ではなく、神がそうお望みならできるのです。

なるほど。
神さま、どうかお願い致します。


B は "ボクラ"
意味は「明日」

何かを頼む。
いつ出来るの?

「ボクラ」

翌日行っても未だできていない。
いつ出来るの?

「ボクラ」

そのまた翌日も

「ボクラ」

明日は永遠にやってこないのかと。

M は "マーレーシュ"
意味は「気にするな」

これは被害を受けた側が、した方に言うのではなく、その逆である。
他人の足を踏んづけてしまったような時、踏んだ側が踏まれた人に対して

「マーレーシュ」(気にするな)

はぁ、気にしないようにしよう。

ある時、歩いていて急に曲がってきた車とぶつかりそうになったことがある。
急ブレーキがかかり、飛び退いたのでことなきを得たのだが、運転手は窓を開けてちょっと済まなそうな顔をしてこちらを見ている。

お?
気にしてるな?
なんか申し訳ないと思ってる?

私はスタタっと駆け寄り運転手の肩に手を乗せ、微笑みと共にこう言った。

「マーレーシュ」