いつもはティーバッグやインスタントコーヒーで簡単に済ます 気怠い午後のティータイム。



だが、今日は豆から挽いてコーヒーを、否、珈琲を淹れる事にした。


やれば出来るところを私も自覚したいと思ったのだ。



香ばしさと苦味が混じり合ったような魅惑の香りが部屋を満たし、気分はまるで17世紀の貴族である。


カップとソーサーは、、ウェッジウッドにするか。
いや、今日はノリタケの気分だ。



お茶受けには何がいいだろう?
チョコレートならジャンポール・エヴァンかピエール・マルコリーニ、ケーキならヴァルトベーレの木苺ケーキ・・・



迷った挙句 かっぱえびせんと、うまい棒にした。

しかも"1歳からのかっぱえびせん"と"うまい棒ちょい辛パンチ味"である。


21世紀の貴族はモダンなのだ。




珈琲と "1歳からのかっぱえびせん" & "うまい棒ちょい辛パンチ味"が載ったトレイを持ち、テラスに出る。


テーブルにそっと置くと秋の冷んやりした風が頬を撫でてゆく。


夏の獰猛なまでに強烈だった太陽の光はもうそこには無い。




2ページ目に栞が挟まれたまま5年が過ぎたヴィトゲンシュタインを読もうかとも思ったが、今日はそんな気分では無かったので、先程駅まで一輪車に乗って買ってきた早刷りの東スポ(東京スポーツ)を手にとる。


そして真ん中からチョット後ろ辺りを広げ艶っぽい記事を熱心に読み込む。

(ふむ、ふむ・・・おおっ!)



"1歳からのかっぱえびせん"を口に放り込みガリガリと噛み砕く。


1歳児でも分かるであろう海老の風味が口中に漂う。

溢れる程入れた為、カップの淵を越えて溜まってしまった珈琲をソーサーに口をつけて音を立てながら啜る。



「ズズッ・・ズズッ・・ズズ〜ッ ゲフッ」




見上げると、空色のキャンバスに一本の白い線を引いた様な飛行機雲が走っていた。
天も高くなり、馬も肥える季節が始まったのだなと実感する。

そして思う。



「オレって何て違いの分かるオトコなんだろう・・・」

そしてあくびをひとつ。