私はお酒が好きである。
色々なことがあった日も、そうでない日も美味しく飲めてしまう。

飲んでもそれほど豹変するわけでもなく、淡々と酔っ払うのみである。

だが、実のところ以前は下戸であったのだ。

夏の暑い日や、お風呂あがりに飲むビールはとても美味しく感じてはいたが、コップ一杯で頭の天辺から足の指先まで全身に朱が差し、動けなくなるのが常であり、350mlの缶一本飲むのはきつかった。

そういう体質なので外で飲むことはほぼ皆無であり、友人達と出かける時ももっぱらハンドルを握るのは私の役目であった。

生まれながらにして酒が腹にあるような人間なので、飲まなくても陽気に楽しく会食をすることは出来ていた。

ところがある時、麦焼酎の水割りを口にし、その淡白な味に(これはただの水のようだな。水と思って飲んだら酔わないのでは。)と2杯ほど飲んでみたところ、なんともなかったのだ。

そう思っても水ではないのだから確かに少しほんのりとはするものの、赤くなることもなく、眠くもならず、却って気分も若干高揚し、その後もう2杯飲んでしまった。
今までの私なら確実に赤ら顔のゾンビと化しているはずなのだ。


驚いたのは私自身である。
こんなことがあるのだろうか。

ある種のプラセボだろうか、いや逆プラセボか。

以降、焼酎、ウイスキー、ウォッカ、ジン、ラム、テキーラとその好みは広がり、外で飲むことも厭わず、それどころか好きになり、私を知る知人は呆れるばかりである。
家人など「アナタハダレデスカ」という始末。

そしてそれから時を隔てず花粉症になってしまったのだが、それ以前は症状に苦しむ友人の隣で「どこに花粉が飛んでいるのかな。全く何ともないんだけど」と宣っていたバチが当たったような酷いグシュグシュさである。

また、気がつくと風邪を一切ひかなくなったのもほぼ同じような時期からなのだ。
この頃から平熱が36.6℃ぐらいになったことも関係しているのかもしれない。

体温が上がると免疫力も高まるというし。
人間は一年間に数度風邪をひくらしいが、ここで云う風邪は発熱して寝込んだり、仕事を休まねばならないほどの症状のことである。

1: 酒を飲めるようになる
2: 花粉症へ華々しくデビュー
3: 風邪を知らない鋼鉄の男へ
(花粉症に苦しんでいて鋼鉄の男と言えるのかと思う向きもあろう。だがそれも可愛いではないか。そのギャップにグッとくる女性もいるのだと信じたい。)

この3つの事柄が、ほぼ同時期に重なったのは何か関係があるのだろうか。

ないだろうな。