もう何年も前の話。


当時の私は早起きの男として超局所的(友人2〜3人の間)に名を馳せていたのだが、その日もそうだった。




いつものように目覚まし時計が鳴りやがり、前日結びの一番と優勝決定戦の二番取ったせいで疲れていた私はゾンビのように匍匐前進で台所へ向かい、先ずはお弁当を作り始める。


ご飯を詰め、おかずが出来上がったら粗熱を取る為に放置。

そして次に朝食である ”オマール海老のラ・ポワゾンソース・季節のサラダと共に”へ取りかかる。

テーブルを拭き、カトラリーを置き、作った料理を今度は素早いゾンビのような動きで並べ、ほっと一息。



さて、子供を起こさなくては。



私はついさっきまでゾンビであったことなど微塵も感じさせない、凛々しい姿でスックと立ち、寝ている子供を見下ろした。



そしてかがみこみ、「朝だぞ~今日の朝食は舌噛みそうな名前だぞ~」
と布団を捲ろうとした、正にその時!・・



この続きは次回夏の特大号で!

と言いたいところだが、そんな野暮なことはしない。
(と、引っ張ったのはこの後の展開に後ろめたい想いが少しあるからだ。)

布団を捲ろうと手を掛けた瞬間、目が覚めたのだ。
私が。
つまり夢だったのだ。

今までお弁当を作り、"オマール海老のラ・ポワゾンソース・季節のサラダと共に”を作ったつもりでいたが、それらは全て私の脳内での出来事(?)であり、テーブルには何の準備もできてはいないのだった、当然ながら。

感覚的にその朝は、お弁当と朝食を2回作ったような気がして、もの凄く損した気分になったことを覚えている。

勿論、実際の朝食(その日2回目に作ったことになっている朝ご飯) は、そんな舌を噛みそうな名前ではなく、トーストとサラダ、それにソーセージにスクランブルエッグというたわいのないものであった。


※ "Starfish & Coffee"はプリンスの9枚目のアルバム「Sign "☮︎" the Times (サイン オブ ザ タイムズ)」収録の曲名。
「朝食に何を食べたの?」と聞かれた女の子が「Starfish & Coffeeよ」と答える不思議な、しかしとても可愛らしい歌である。