複数の人間が話をし、笑い合い和やかな時を過ごす。

やがて時間が来て「じゃあ、またね。」の声と共に別れていく。
そして一人になった時に思うことってなんだろう。

「あいつ鼻毛出てたな。でもなんか注意し難いんだよな、鼻毛。」

ということもあろう。
何にせよ余韻を愉しみながら帰路につきたいものである。
 
ところで正義の味方が一仕事終え、自宅へ向かう時、どんな行動をとり、どんな事を考えているのだろう。
 
「これでワルイヒトはやっつけたぞ。もう心配はいらない、少なくとも来週までは。」

「ハッタリ仮面のおじさん、ありがとう‼」

「うむ、気を付けて帰るんだぞ。トォッ!(飛び上がる時の声)」

「ハッタリ仮面〜!」
 
話はここからだ。
少年達の目に触れなくなったところで地上に降りたハッタリ仮面(正体はワタナベユキオ)は私服を入れておいたコインロッカーから荷物を出し、人目に付かないところでハッタリスーツを脱ぎ、着替える。

「ちょっとくたびれてきたな、このスーツ。ココ穴あいてやんの。
新調するかあ!最近ちょっとキツくなってきたし、ワンサイズ上にしよ。4着目だもん少しまけてくんないかな。
あ〜でもサービスポイントがまだ溜まってないか。
それから今の仮面も目の穴の位置が少しズレてんだよな。悪い怪人と闘う時に見にくいんだよな。」

などとワタナベは考えながらヒーロー変身グッズを出来るだけ小さくまとめ、バッグに詰め込む。

そしてスーパーに立ち寄り、いくつか食材を買う。

それから再び歩き始めて暫くすると漂ってきたコロッケの匂いに誘われ、肉屋さんへ。

その見た目とラードの香りに空腹を覚え、思わず購入。


「やっぱ肉屋のコロッケは香りからして違うな」

と知ったような事を言うワタナベ。
片手にハッタリスーツとネギなどの入ったマジソンバックを持ったままコロッケに噛り付く。
ネギの青いところがバッグからハミ出ているのは気にせずに。
 
そして(なんだか家帰ってゴハン作んの面倒だから食べてっちゃおうかな)などと思いながらワタナベは黄昏迫る商店街を歩くのだ。
 
怪人たちを倒した後のワタナベ、いやスーパーヒーローの行動は意外にも地味な気がする。