大掃除をしていて、引き出しの奥から箱が出てきた。
なんだっけこれと思いながら開けてみる。

すると昔 気に入っていたものや大事にしていたものが幾つか入っているではないか。
「おお、ここに入れてたんだ!」

掃除は好きではないが、このように久しぶりの物との再会を果たすことがあるのは嬉しい。
(こういったものを見始めると掃除は滞る。処分する予定の本も然り。)

その中に、箱の壁にだらしなく、且つ辛うじてへばりついている紙の切れ端のようなものがある。

手に取ってみると黄色く変色しているが、新聞記事だと分かる。
台紙に留めてあるセロテープも経年変化でパリパリになっていた。

そうだ、思い出した。
一般の人からの新聞投稿欄にあったもので、あまりの面白さに忘れてしまうのが惜しいと感じ、ハサミでチョキチョキとその記事を切り抜いたのだった。
〜〜✂︎📰

そこにはこんなことが書かれている。

一☆一☆一☆一

ぼくも電車で変なおじさんを見るのが好きです。
特に印象に残っているおじさんは、突然隣の車両からガラッと戸を開けて入ってきたかと思うと、「鎌倉幕府は1192年に源頼朝により成立し・・・」と、いきなり鎌倉幕府の話を始めたおじさんです。
それを聞いていて、思わずだれかが笑いました。
するとおじさんは「鎌倉幕府を笑うんじゃないっ!」と叫んで、まわりを静かにさせてしまいました。
厳粛な雰囲気の中、鎌倉幕府の衰退まで話し終えたおじさんは、また次の車両へ移っていきました。

一☆一☆一☆一

男子高校生からの投稿であった。

今は電車の乗客8〜9割方がスマホを見ているような気がするが、昔は新聞、或いは本を読むか、音楽を聴くか、若しくは寝るかだったと思う。

そんな中に(ああ、鎌倉幕府のことについて深く知りたい。今すぐ、もの凄く。)と思っている乗客がいたかも知れない。
そんな人にとってはありがたいおじさんなんだろうと思う。

私が現場にいたら次の車両へ移るおじさんの背中に向けて拍手👏をしていたことだろう。
(鎌倉幕府について知りたいと思っている訳ではない)

ただ、少しだけ鎌倉幕府のことに詳しくなった喜びよりも、話のネタをゲットできた喜びが勝るであろう。
もう、色んなところで言いたくなるのは間違いない。

外国、特に欧州の電車内などでは主に楽器演奏や歌を披露して小銭を稼いでいるパフォーマーがよくいる。(所謂"欧米"がどうなのかは未確認)

あれなど、うるさいと思う人もいるだろうが、表現することの日常性、ひいてはそれが根付いた文化の香りみたいなものをそこに感じ、嫌いではない。

鎌倉幕府おじさんは元気でいらっしゃるだろうか。
歴史は進み、どこかの電車で明治維新辺りのことを語っているのだろうか。
いや、既に日本史は終わり、世界史の産業革命辺りまできているかもしれない。
是非遭遇したいものだ。
笑わずに聞くので。