
日本人とは何か?
この問いに対して、みなさんならどう答えるでしょうか。
日本で生まれた人
日本で暮らしている人
日本語を話す人
広い意味でとらえるならば、
上記はすべて日本人といえるかもしれません。
そうはいっても、
「日本国民(日本国籍を有する者)=日本人」
おそらくこの定義が一番オーソドックスな回答ではないでしょうか。
それでは、
「日本国民(日本国籍を有する者)」の条件とは何か?
このように問われたらいかがでしょうか―。
民進党代表選の有力候補とされる蓮舫代表代行について、
日本国籍と台湾籍の「二重国籍」問題が世間を賑わせています。
ことの顛末は以下のとおりです。
台湾人の父と日本人の母との間に出生した蓮舫氏は、
17歳だった昭和60年(1985年)に日本国籍を取得したものの、
そのとき同時に台湾籍を離脱していなかったため、
日本と台湾の二重国籍状態になっているのではないかという疑念が浮上。
その後、9月13日(火)午前に記者会見を行い、
調査の結果台湾籍が残っていたことを公表し、
それまでの説明不備について陳謝した、というものです。
同会見で、蓮舫氏は自身の国籍についてこのように語っています。
「私は17歳のときに、自分の判断で日本国籍を選択した。日本人です。」
さて、前置きが長くなってしまいましたが、
ここで冒頭の問題提起に戻りましょう。
蓮舫氏が念押しに主張する「日本人」。
そもそも、
この日本人=「日本国民(日本国籍を有する者)」の条件とは何なのでしょうか?
この点について、
『日本国憲法』はこのように規定しています。
「日本国民たる要件は、法律でこれを定める」(第十条)
※要件とは「必要な条件」という意味です。
しかし、これだけでは具体的な条件がわかりません。
そこで、上記規定(憲法の委任といいます)に基づいて、
日本国民となるための条件について詳しく規定した法律が『国籍法』です。
皮肉にも上記疑惑で改めて注目されることとなった日本の国籍問題ですが、
『国籍法』の変遷や条文について紹介するいい機会かとも思うので、
この機会に、『国籍法』を少しでも身近に感じてもらえればと思います。
◆まずは、『国籍法』の変遷(歴史)から見てみましょう。
日本の国籍について一般的な規定がなされたのは、
明治32年(1899年)の「国籍法」(明治32年法律第66号)です。
現在のものとは内容が違うため、旧国籍法と呼ばれています。
(余談ですが、この年は東京―大阪間に初めて電話が開通した年でもあります。
また、幕末の英雄・勝 海舟が77歳で亡くなったのも同年のようです。
それだけ歴史ある法律ということですね。)
その後、旧国籍法を全面的に改め、
戦後の新憲法のもと昭和25年(1950年)に制定されたのが、
現在の国籍法(昭和25年法律第147号)で、新国籍法と呼ばれています。
その後も、
国籍法は時代の推移や国際情勢の変化に伴い進化(改正)を遂げていきます。
まず、大きな改正として挙げられるのが、
「国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律」(昭和59年法律第45号)です。
昭和60年(1985年)に施行(※法令が効力を発生すること)されました。
この昭和59年改正での最も大きな変化(いわば改正の目玉)として挙げられるのが、
「父系血統主義」が「父母両系血統主義」となった点です。
現行法で採用されている「父母両系血統主義」とは、
生まれた時に父または母のいずれかが日本国民であるときは、
その子供は日本国籍を取得するというルールです。
たとえば、生まれた時にお父さんが日本人であれば、
お母さんが外国人であっても、生まれた子供は日本人ということです。
(上記のとおり国籍法は原則として血統主義(⇔生地主義)を採用しているため、
生まれた場所は関係ありません。)
一方「父系血統主義」とは、
生まれた時に母が日本国民であっても、父が日本国籍を有していない場合は、
その子供は日本国籍を取得しないという考え方です。
ではここで、
もう一度蓮舫氏の一件を思い起こしてみましょう。
台湾人の父と日本人の母との間に出生した蓮舫氏は、
17歳だった昭和60年(1985年)に日本国籍を取得したそうです。
外国籍の父と日本国民の母との間に出生した同氏は、
まさに上記改正により、日本国籍を取得したということですね。
(同氏のように改正前までに外国人父と日本人母の間に生まれた子でも、
施行日から3年以内に法務大臣に届け出ることにより、
日本国籍を取得することができたため、同氏もその手続きを行い、
法律上、正式に日本人となったと思われます。)
なお、一部報道に帰化という説明がなされていましたが、
本件は帰化ではなく「出生による国籍の取得」(国籍法3①1)によるものです。
なお、国籍法の変遷については、
さらにその後平成20年(2008年)にも大きな改正(平成21年施行)がなされ、
出生後に日本人に認知されていれば、父母が結婚していない場合であっても、
届出によって日本の国籍を取得することができるようになりました(第三条)。
以上、国籍法の歴史を概観してきましたが、
今なお、無国籍者や二重国籍問題は絶えません。
それにも関わらず、
これまで日本の国籍問題がクローズアップされることは多くはありませんでした。
日本人にとって、
日本国籍という存在があまりに身近にありすぎるために、
いかにピントを合わせづらいものであるかを、
改めて痛感しているところです。
なお、国籍法の変遷に続き、
今回の一件で問題となった二重国籍(国籍選択制度)についても触れたかったのですが、
この点については稿を改めてご紹介したいと考えております。

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