先月末に辞めた会社の同じ部署の人に、
10年振りくらいに恋をした。
年齢はわたしよりも3、4歳下だと思う。
顔がとにかくカッコよかった。
物腰もおだやかで、上質なウールのぴったりのサイズのコートを
着たおしゃれな人だった。
会社を辞める前日に、忘年会があって、
まさか会社を辞めると思わなかったので参加した。
彼とは席は遠く離れていて、
でも、近くに座ったおじさんたちは、強烈におもしろかった。
宴もたけなわなころ、席替えでその人の横に座ることができた。
彼はとてもやさしい人で、いろいろ話しかけてくれた。
住んでいる家の話になって、彼は、わたしが夏に短期で働いていた会社の
近所に住んでいるということが分かった。
そして驚いたことに、わたしが週に2、3回、書類を配達していたビルの
となりのマンションに住んでいたのだ。
そのマンションは一度見たら、二度と忘れないような、人目をひくマンションだった。
建物の床も壁も何かも真っ白で、オートロックの中をのぞいても真っ白だった。
わたしは、しばらくそこをなんかのショールームかラブホテルだと思い込んでいた。
マンションと分かった後も、通るたびに、
”どういう人がどういう気持ちでこういうマンションに住むんだろう”
と本気で思っていた。
帰りはわたしがひとりで歩いていると、
話しかけてくれて、家の方向が一緒ということで、
一緒に帰ることになった。
帰りの電車で、
わたしが派遣社員なのを非常に心配してくれて、
彼はわたしに秘密を打ち明けてくれた。
彼は、副業で占いとか人材斡旋のような仕事をしていると言っていた。
その収入があるから、あのマンションに住めるんだよと。
わたしにも仕事を紹介してくれると言った。
わたしは怖くて、職種が聞けなかった。
彼がどんな仕事を紹介してくれるか、最後まで分からないまま、
お別れしてしまった。
占いのことも詳しく聞けなかった。
なんで、わたしに秘密を打ち明けたんだろう。
わたしが、占いにすがりつきそうに見えたのか。
水晶でも買ったら、幸せになったかな。
でも買ってもいいやと思った。
それぐらい、本当にかっこいい人だった。
会社に行くのも楽しかった。
もう、恋しないと思っていたし。
病気のことを考えると、してはいけないと思っていた。
これからまたこうやっていくつの好きという気持ちを、
こらえていくのかなあ。