母性って何だろう。

親心って何だろう。

 

私には子供がいないから、

それについて発言する資格はないのかもしれない。

 

でも、それが愛情の一つだというのなら

私も一人の人間として、わかるよ、と言いたい。

 

母性や親心が愛情なら

それは与えるもの、注ぐものであって

欲しがるもの、見返りを求めるものではないように思う。

 

無償の愛、という言葉を使うのは大げさかもしれないけど

でも、母性とか親心って、そういうものではないのだろうか。

 

けれど私の母は違った。

母は幼い頃から与えられること、守られること、

助けられることが当たり前すぎて

母の中の天秤は、ギブがテイクを超えることをよしとしなかった。

 

私の母は、昔からことあるごとに

しょっちゅう娘たちに釘をさしてきた。

 

「あなたたちにはお金がかかったんだから」

「親孝行してもらわないとね」

「あなたたちに使っちゃったせいで貯金はないから、老後はよろしくね」

 

半分は冗談かもしれない。

けれど、いや、うちの母のことだから、ほぼ本気だ。

 

よわい70を過ぎると、そのプレッシャーはいよいよ加速する。

 

まだ実家のそばにいた頃、ちょうど一年くらい前のことだ。

「なんだかあなた(私の名)、

〇〇さん(私の夫の名)や、猫のことばかり大事にして

親のことをないがしろにしてない?」

と、すねるように娘を非難することもあった。

 

お母さん、そりゃないよ。

 

昔から散々、お父さんは私たち娘に対して

「お父さんはお前たちなんかどうだっていいんだ。

親だから親の務めはするけど、大事なのはお母さんだけだ」って言ってたよね。

それをあなたは、うんうんと横で誇らしげに聞いてたよね。

 

自分たちは、夫婦至上主義でやってきておきながら

子供に対しては、夫婦よりも(或いは同等に)親を優先しろって言うの?

 

あなたたち夫婦を見て育った娘が

同じように、自分の伴侶を何より大事にすることの何がいけないのか。

 

ちょっと訳あって母に対する鬱憤がたまっていたのもあり

「大事だよ。今の私にとって一番大切なのは〇〇さん(夫)だもん」

とはっきり告げると、母はびっくりしたような落胆の色を隠さなかった。

 

「冷たい娘だねえ。育てかたを間違えたかしら」

と不愉快そうに言う母を、私はさめた目で見てしまった。

 

数年前までの情にもろい私なら、そんな母に悲哀を感じ

母が喜ぶような言葉を口にしていただろう。

 

けれど、妹のことをきっかけに (←長くなるので後日あらためて)

もう母への想いはどんどん冷めていってしまったのだ。

 

いえ、むしろ、老いてきた両親に対して

積年の恨みをはらしたいような、どす黒い欲求さえ感じ

そんな自分自身に驚いていた。

 

そして、若い頃の母が私に関心を示さなかったのと同じように

母の寂しさの欠片にまったく気づかないフリをして

おちゃらけたように話をそらして

「じゃ、今日は帰るねー」と言って、退散した。

 

それに何も言い返すことのできない母と知っていながら。

 

 

*****

 

さようなら、お母さん。

さようなら、お父さん。

 

そうだ、1年くらい前からだったんだ。

私は、さよならの言葉を吐きたくてたまらなくなっていた。