(つづき)

 

私と妹は子供の頃、2段ベッドを使っていた。

上の段に妹、下の段に私が寝ていた。

 

はじめて、父のキスに気づいたのは

小学校の5、6年生のときだった。

 

豆電球だけをつけて寝ていたら

唇に生暖かいねっちょりとしたものを感じ

思わず目を開けたら、父がいた。

 

父は一瞬、驚いた顔をしたが

電気をつけたままじゃ眠れないだろう、早く寝なさい。

というようなことを言って、何事もなかったかのように出て行った。

 

かなり昔の記憶も鮮明に覚えている私だが

この瞬間のことは、ショックが大きくて

実はそのときの父の言動については

これ以上のことは憶えていない。

父のはいた言葉も正確には少し違っていたかもしれない。

 

私の身体はかなしばりにあったように凍り付き

しばらく動けなかった。

息もちゃんとできていただろうか。

 

布団に入ったまま、少し冷静になると

吐き気と震えがきた。

 

すぐに口をゆすぎたかったが、

いま洗面所に行ったら父を傷つけるのではないか

という思いが先に立ち、

気持ちの悪いまま、唾をのみこまないよう

しばらくじっと息をひそめていた。

 

狭い社宅なので、部屋は違っても

少しの気配は伝わる。

 

父が自分たちの寝室に戻り

家の中がシーンと静まりかえるのを待って

私はトイレにたち、トイレットペーパーで口をぬぐい

トイレタンクの上の蛇口から水をすくって何度も口をゆすいだ。

 

惨めだった。

 

翌朝の父はいつもと同じだった。

母も。妹も。

いつもと同じ朝だった。

誰にも言えるはずもなかった。

 

私は忘れようと思った。

夢だったと思うことにした。

 

次の日の夜から

私は布団を頭までかぶって眠るようにした。

母は私のその寝姿に気づいたとき

「あなた、あんな寝方していたら窒息するわよ」

と言ったが、私は頑なに変えなかった。

 

その理由をおもんぱかる想像力は、私の母には無かった。

 

 

しばらくして、私は喘息になった。

 

最初に、小学5年か6年の頃と書いたのは

はじめての喘息発作とセットで記憶されているからだ。

 

 

(つづく)

 

 

 

 

 

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