(つづき)
父は自称・愛妻家である。
そんなに好きならずっと傍で守っていればいいものを
出かけるのも大好き、人に会いに行くのも大好き、遊びも仕事も好き、
そしてその欲求をときに母より優先するので歪みができる。
「お父さんばっかりあっちこっち出かけてえ、ずるいわよね」
と母はしょっちゅうこぼす。
そしてその鬱憤を晴らすように買い物に出かけ
また家に必要のない新しい服が増える。
父が家を留守にしているときの、母の安否確認。
一度や二度ではない。
もう10年以上も前、私が現在の夫と結婚したばかりの頃。
実家からは遠く離れた県外に住んでいた。
夜、父から電話が来てワーワー早口で指示してくる。
内容は、ゴルフのときとほぼ同じ。
いま東京に来ている。明日まで帰れないが
さっきお母さんと電話で話したら
途中で切られてしまった。
何度かけても出ない。
お母さんは血圧が高いから心配だ。
と言って、興奮している。
母は基本的に面倒くさがりである。
父とは違う短気で、父はクドクドと怒り続けるが
母は「もう嫌」「もういい」「うるさい」などとだけ言って
あとはピシャリとシャッターを下ろす。
だから、私はまたか、という感じだった。
おおかた遊びで出かけている父とささいなことで
軽い口喧嘩になり、イラっときた母が
面倒くさいのと父をこらしめてやろうという思いで
ガシャンと電話を切っただけだろう、と。
そう伝えても、自称愛妻家の父は許してくれない。
心配だ。倒れているのではないか。
お前、ちょっと今から見に行ってきてくれないか。
そう言ってきかない。
はああああああ????
時計はもう19時を過ぎていた。
私たち新婚夫婦のそのときの赴任地は
実家から約200キロほど離れた県外にあった。
高速をとばしたって3時間はかかる。
倒れてる可能性が高いなら今すぐ救急車を
呼ぶほうが先じゃない?というと、
いや、それはちょっと・・と言う。
父だって薄々わかっているのだ。
あの母がヒステリーで電話を切ったことくらい。
しかし近所のひとに頼むわけに行かないし
自分よりもお前のほうが近いからとにかく行ってくれと
いつもの押しの強さで引かなかった。
翌日は土曜日で、夫が運よく帰宅していたのも
父にとっては”得たり”との気分だったのだろう。
その日は夕方から雪が降っていた。
高速で行くとしても、仕事で疲れて帰宅した夫に
ここから3時間の雪道高速ドライブをさせるのはつらい。
でも、父にとっては
母が心配>娘夫婦の休息や安全
だった。
一旦父との電話を切り
私と夫は、先ず実家に電話したが、
母はやはり電話には出なかった。
仕方なく身の回りのものだけバッグにまとめ
高速にのって約200km先の実家まで車を飛ばした。
窓には雪ががんがん降り注ぎ、前はほとんど見えなかった。
3時間後、夜も22時をすぎ深夜になりかけた時間、
まだ実家の明かりはついており、
呼び鈴を鳴らすと、パジャマ姿の母が出てきた。
テレビドラマでも見終えてこれから寝ようとしていたような
すっかりリラックスした風情だった。
「あら、どうしたの?」と驚いている。
こっちが聞きたい。
父から電話で依頼があった旨、
私たちも何度か電話したけどでなかったので来た旨を伝えた。
母は嘘をつくときの独特のいつもの表情で
「お風呂入っていたからかしら」と悪びれずに言う。
ンなわけないだろ。時間をおいて何度かけたと思ってるんだ。
とにかく、もう遅かったので、
その日は実家に泊まることになった。
口やかましい父のいない自由な時間を
たっぷり謳歌し、父に一矢報いってやった満足感で
すっかり血圧もさがったらしい母は、顔色もよく元気だった。
「悪かったわねえ。もうお父さんたら」と言って笑い、
私の夫の手前、少しだけ申し訳なさそうにした。
あのうるさい父に電話を入れ、
父と母を直接話させたら、父も母もご機嫌がなおり
私たち夫婦は二階でやれやれと休んだ。
夫は優しいひとなので
あの頃も今も何も言わない。
でも私は、
夫の両親のあたたかみを知れば知るほど
どうして私の両親はあんななんだろうと思う。
実の親二人のことが、心の底から恥ずかしくなる。
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