赤ちゃんが生まれると、数か月の間は母体を通して、また母乳からもらった免疫で、まだ未熟な小さな命を守ってくれます。

その免疫も徐々になくなり、また成長発達にともない活動や行動範囲も増えることで、外から新たにウイルスや細菌に感染して発熱することが多くなります。個人差はあるものの、半年を過ぎると子どもの発熱も急に増えてきます。このころから、お母さんたちもお仕事に復帰することで保育所に預け始めるのも増えてきますよね。

 

沢山の人に接触する機会が増えるということは、当然感染の機会も増えてきます。

 

保育所に行くようになった途端に発熱を繰り返すようになるのを「保育所の洗礼」と表現するメディアがあって愕然としました。発熱することが害悪のようにも受け取られかねない。

電話相談の時にも、お母さんたちに説明するのですが、乳幼児期の発熱は身体を蝕むものではなく、体に入ってきたウイルスをやっつけようと頑張って体が一生懸命活動するために起こるものです。それによって体力をつけたり、入ってきたウィルスに対しての免疫をつけたりするためのもの。なのでやたらと解熱剤を使用して熱を下げると、その免疫を作る働きを一時期お休みすることになるので、どんどん長引いてしまう。更に解熱剤の効果が切れてまた熱が上昇、薬を使ってまた下がっての、この上がり下がりが逆に体力を奪うことにもなってきます。

 

体に影響を及ぼす熱の高さは42度と言われています。さすがに体を構成しているタンパク質の変性を招く温度。ここに近くなってくるくらいだったり、余力がなくぐったりしていたりする場合は熱を下げる必要が出てくる。

熱を下げるというのはこの場合、病気を治すためのものでなく、一生懸命頑張っている体を少し休ませて体力の温存を図る目的で解熱させるんです。

 

数十年前までは熱は必ず下げないといけないみたいな考えがあったのですが、最近の小児科の先生たちは積極的に熱を下げようとはしないはず。医学の進歩というよりは、体のメカニズムもわかってくることによりこれまでの概念を覆されるようなことも多くなってきているんです。ただ、あまりに辛く食事も水分も取れない場合は解熱剤を使用し、一時的に下がって楽な状態の隙にごはんを食べたり睡眠をとったりします。

 

成長とともに迎える試練のはずの発熱、中には重症化して命にも関わるようなことにもなりかねないのですが、それを全て保育所が悪いような印象を持ってしまう見出しで、残念でした。