亜美ちゃんの部屋を出ると小雨が降っていた。
何も考えずにバスに乗って駅前で降りたものの、このまま帰る気になれなくて なんとなくつるのさんに電話をかけていた。
そして3コールしたところで大変な事に気づいて大きな声を出してしまった。
「車がどうした?」
切ろうと思ったのに。
なんて悪いタイミングで出るんだよこの人は。
「あっ、つるのさん?
なんでもないです、じゃあ。」
「ちょっと待て、じゃあって何よ。」
「 ・・・・・ 」
「しかしお前、タイミングいいなぁ。
ちょうど雨でロケが流れて帰るとこだったんだ。
それも近場でさ。」
僕はそうは思わないけど…
送ってやると言われて断りきれない僕も僕だけど、今は根掘り葉掘り聞かれない事を祈りたい。
「そこのコインパーキングだよ。
ありがとう、ここで止めて。」
「あぁ。
でもなんでこんなとこに止めたんだ?」
来た!
「友達んちの近くなんだよ。
じゃあ… 」
「ふーん、友達ねぇ。」
なにをニヤニヤしてるん … だ?
5台分の駐車スペースには僕の車しか停まっておらず、その前にポツンと立っている女の子?
「亜美ちゃん … 」
「亜美ちゃんていうんだ、ふ~ん。」
「 ・・・・・ 」
「行けよほら。」
言われなくても行くけどさ。
車のドアを開けようとした時、腕を掴まれた。
「なに⁈ 」
「泣かすなよ。
そんで、後で報告しろ。」
「わかってます!」
少し乱暴に車のドアを閉めると、その音に驚いた亜美ちゃんが今にも泣き出しそうな顔で僕を見た。
「直樹さん、どこに行ってたの?
急に飛び出して行っちゃうし、車はあるのに…
もしかして怒ってるの?」
僕は亜美ちゃんの肩に手をかけて歩き出そうとした。
一刻も早くこの場を離れたいのに亜美ちゃんは動こうとしない。
「僕が怒る理由なんてないよ。
女の子の部屋に泊まってしまうなんて、僕が悪い。」
「なぜ?
直樹さんは悪くない。
私が大きな声を出して騒いだから?
泣いちゃったから?」
「だからあれは… 」
ノックがお泊りして?
その相手が亜美ちゃんて子で?
大声あげて騒いぐようなことをした…
ノックが?
で、泣いちゃったと。
それでビックリして車を忘れて逃げ出したおバカ…
でも犯罪の匂いは無いな。
あの子、直樹に惚れてるみたいだし。
ふふ~ん。
報告が楽しみだなこりゃ。
窓全開で様子を見ていたつるのは、切れ切れに聞こえてくる2人の会話をつなぎ合わせて勝手な妄想をふくらませていた。
近からずとも遠からずなので良しとしよう。
