9/5、名古屋栄“Roxx”でのイベントで朗読したノンフィクション小説、今日はもう一つの事件について。 



 『その夜、エンパイアステートビルが』 


その夜、真夜中の2時か3時くらいだったと思う。


ホテルの廊下でけたたましいサイレンが鳴り響き館内放送が何やら言っている。 

廊下に出て聞いてみても英語の非常放送なんか何を言っているのか聞き取れない。 

隣の部屋の宿泊客に訊いてみた。 


“逃げろ”って言ってる! 


とりあえずホテルから離れるようにとの事だった。 


ホテルの至近には有名なエンパイアステートビルがあるのだが今度はエンパイアステートビルが爆破されるという情報があったらしい。 

それでその界隈全域に避難勧告が出たというのだ。 

僕達は取るものも取らず、確か部屋は18階だったと思うが非常階段を必死に駆け下りた。 


鳴り響くサイレンと恐怖に泣き叫ぶ女の子達の声。 

またもやパニック映画のワンシーンだ。 

僕達は夢中で階段を駆け下りた。 


ホテルから外に出るとポリスが避難誘導していた。 

“Down town!Down town!” 

ともかく南に走れという事だ。 


僕達は全力で走った。

必死に走った。 

真夜中のマンハッタンを必死に走った。 


1時間くらい経ったのだろうか、騒ぎは収まった。 

エンパイアステートビルも何事も無かった。 

もう大丈夫だという事でホテルに戻る事が出来た。 


あの、ニューヨークで超有名なエンパイアステートビルの爆弾騒ぎも日本では報道されていないようだ。


そんな現地にいた者しか知らない、体験していない出来事があの時のニューヨークでは起きていた。